意外と知らない? 日比谷・銀座・有楽町の「境界線」は一体どこなのか

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意外と知らない? 日比谷・銀座・有楽町の「境界線」は一体どこなのか

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橘真一

ライター、ノスタルジー探求者

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東京人にとってなじみ深い銀座・有楽町・日比谷エリア。しかしその明確な区分けを知っている人は少ないでしょう。ライターの橘真一さんが解説します。

銀座・有楽町・日比谷に境界線を引く困難さ

 日本屈指の繁華街であり、徒歩圏内にいくつもの鉄道駅がある、銀座・有楽町・日比谷エリア。この三つの地名に線を引くというのは、実にややこしいテーマです。不可能なミッションかもしれません。

 まず、やっかいなのが日比谷です。日比谷といえば一般的に、

・日比谷駅
・東京ミッドタウン日比谷
・日比谷シャンテ
・東京宝塚劇場
・日生劇場

などがあるエリアをイメージする人が多いのでしょう。しかしあの辺りの住所は、すべて千代田区有楽町1丁目なのです。

 その一帯から道路を挟んで反対側にある帝国ホテルの所在地は千代田区内幸町1丁目と、ここも日比谷という住所ではありません。日比谷シティやNTT日比谷ビルがある場所も内幸町になります。

 皇居外苑(がいえん)を囲む堀の一部は、日比谷濠(ぼり)と呼ばれていますが、そこは千代田区皇居外苑という住所で登録されています。このように、どこにも日比谷が見つかりません。

行政区上、「日比谷」は存在しない?

 残る大物に日比谷公園があります。さすがにその住所は日比谷でしょうか。答えを先に示すと、ノーでもイエスでもありません。

千代田区有楽町にある日比谷駅(画像:写真AC)



 日比谷公園内は、すべて千代田区日比谷公園1丁目です。つまり公園内限定で、日比谷公園という住所は実在します。また、地図上に日比谷通りや日比谷交差点は載っています。しかしながら行政区として日比谷は存在しないのです。

 江戸時代からの名残で、ここに具体例を挙げたような地域の「通称としての日比谷」は今も残っています。ただ正式な地名でないことから、どこからどこまでを日比谷と呼ぶかについては、ぼんやりしがちな傾向があるわけです。

複雑怪奇な有楽町と銀座の境界線

 日比谷と異なり、有楽町という地名は存在します。

 前述のように、地図上でJR有楽町駅から西南に位置する日比谷と呼ばれる地域も、多くが有楽町に含まれます。駅の西側は皇居のお堀手前までが有楽町で、北側の東京国際フォーラム辺りは千代田区丸の内となります。

 一方、地図上でJR有楽町駅の南と東にある銀座とは、東京高速道路がボーダーラインになっているという認識が一般的で、大まかには正解です。確かに、イトシア有楽町、有楽町マリオンは有楽町ですが、マロニエゲート銀座、東急プラザ銀座は中央区銀座です。

黄色い部分が東京高速道路(画像:東京高速道路)



“大まかには”という表現をしたのには理由があります。厳密に突き詰めていくと、ある大きな問題が浮上するからです。

「大きな問題」とは何か

 有楽町と銀座のボーダーラインとなる東京高速道路の下には、銀座インズ、銀座ナインなどの商業施設があります。注目すべきは、その住所です。

 銀座インズ1は中央区銀座西3丁目1番地先、銀座ナインは中央区銀座8丁目10番地先という住所を公表しています。

 どちらも「番地先」という表記を用いていますが、これは、正式な地番がない場合にみられるものです。地方の山林などでは珍しいことではありませんが、東京のど真ん中にもそのような場所があるのだから驚きです。

「銀座西」をグーグルマップで調べた結果(画像:(C)Google)

 また、銀座インズの「銀座西」という住所も不思議です。試しにグーグルマップで検索してみてください。そんな地名が存在しないことが分かります。

謎地名の背景にあるもの

 この怪現象は、東京高速道路がもともと川や堀を埋め立てて造られたことが背景にあります。

 高速道路は極めて公共性の高い施設であることも手伝い、事前にどこからが千代田区で、どこまでが中央区か(または港区か)といった線を引くことがなされず、住所、地番が定められなかったのです。その状態で、長い年月がたってしまったわけです。

 このことから、高速道路の下にあり正式な住所がない店舗、施設はそれぞれ便宜上の住所を使用しています。

銀座インズ周辺の様子(画像:国土交通省)

 そのため、例えば銀座インズ内では、「銀座西」以外にも、同じく実在しない「銀座9丁目」という住所を名乗る店もあります。有楽町とも銀座ともいえない銀座インズのなかで、大多数が銀座を便宜上住所とするなか、有楽町を名乗る施設もあり、建物内でそれが混在する現象も一部でみられます。

新橋なのに銀座、有楽町なのに丸の内を名乗る施設のある怪

 銀座・有楽町・日比谷の線引きを曖昧にしている理由はほかにもあります。

 それは銀座というブランドによるイメージ向上を狙ってか、例えば新橋にあっても、「銀座」を冠する企業や店舗、ビルなどがあることです。

 また、丸の内TOEI、丸の内ピカデリー、丸の内ルーブル(2014年閉館)と、銀座、有楽町にありながら、「丸の内」を冠した映画館の存在もややこしさの一因かもしれません。これは、映画界独自の傾向だといえます。

中央区銀座にある「丸の内TOEI」(画像:(C)Google)



 このように、線引きが実にややこしい銀座・有楽町・日比谷エリアですが、そのことが特にマイナスにはならず、これからも人々を引きつける魅力的なタウンであり続けることは間違いないのでしょう。

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