愛猫への尽きない悩み ずっと仲良く暮らすために必要な「たったひとつの答え」とは

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愛猫への尽きない悩み ずっと仲良く暮らすために必要な「たったひとつの答え」とは

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とあるサイトに並ぶ、お悩み相談の数々。まるで人間関係にまつわる内容のようですが、実は飼い猫に対するものなのです。まるで人間同士と同じように一喜一憂しながら猫との生活を送る飼い主たち。より楽しく過ごすためのヒントを教わりに、サイト開設者である杉並区の動物病院医院長を訪ねました。

人間関係と同じくらい、悩みは切実

「仲良かった姉妹が突然ケンカするようになった」
「夫とふたりきりのときには甘えるのに、私が来るとあわてて離れてしまう」
「全く心を許してくれない」
「深夜、何度も起こしに来る」
「過度に食事を要求してくる」
「心変わりした子と関係を修復したい」
「わざとイタズラをする。こちらの関心を引くため?」……

 ネット上のとあるサイト内ページに並んだ、お悩み相談の数々。

 一見、家庭内の家族同士に関する内容のように思えますが、それは半分ハズレで、半分正解。

 これらの悩みが掲載されているのは、高円寺アニマルクリニック(杉並区高円寺南)のウェブサイト。相談はどれも、飼い猫に関するものなのです。

専門医ならではの具体解決案も

 相談内容から垣間見えるのは、まるで人間同士の関係について悩んでいるかのように、飼い主さんたちが真剣かつ切実に猫への思いを巡らせている様子。

飼い猫は家族同然。思いが強いほど、悩みは日々尽きない(画像:写真AC)



 それぞれの問いのページには、具体的な「解答」も記載されています。たとえば上記1番目の「避妊手術が済んで外へ出るようになったとたんケンカするようになってしまった」姉妹猫2匹に関する相談に対しては、

「考えられる理由は、手術したことで男性ホルモン優位なホルモンバランスになってしまった。外出するようになってテリトリー意識が強烈になり、家の奪い合いが生じてしまった。外出先でお互いの関係に深い亀裂を生むような出来事があった……など。2匹が顔を合わさない冷却期間(数か月)を与えて、再び顔を合わせてみましょう」

といったように。

 飼い猫に向ける人間たちの思い、それから人間と猫とが末永く楽しく一緒に暮らすヒントを知るために、相談に答える同クリニックの医院長先生を訪ねてみました。

来院しての“相談”、実は少数?

 高崎一哉医院長。東京メトロ丸ノ内線の新高円寺駅から徒歩約4分の住宅地で1994(平成6)年に開業し、犬・猫・ハムスター・鳥などなど地域のさまざまな動物を診察し続けています。

 医院のサイトに掲載されているお悩み相談は、かつて『猫の手帖』という雑誌(2008年に休刊)に掲載されていた連載コーナーでのやり取りとのこと。編集部を通して寄せられる読者からの悩みに、高崎先生が毎回丁寧に解答してきました。

 それら質問の端々からあふれ出る、ひとたび一緒に住めば人間か猫かという種族の違いを超えて相手の挙動に一喜一憂する飼い主の姿は、どこかおかしみがにじむのと同時に、切なさも感じさせられます。

 こうした悩み相談は、普段の診療でもたびたび寄せられるものなのでしょうか?

愛猫がリラックスしている様子を見るのは、飼い主にとって無上の喜び(画像:写真AC)



「いえ、実はそうでもないのです。というのも、動物病院に猫を連れてくるときというのは、もっと深刻な相談を抱えている場面が多いからです。食欲が無くて体重が落ちてしまった、とか、おしっこの量が明らかに多い、とか、呼吸が荒くてぐったりしている、とか。何か症状が出ているときに、日常的な悩みの相談はあまりしないですよね」(高崎先生)

 高崎先生いわく、猫を飼い始めた1~2年は飼い主の関心も非常に高く、定期的に病院へ見せに来ることがある一方で、3年以上が経過すると人間もだんだん慣れてきて「1年に1回程度」と推奨されているワクチン接種をつい忘れてしまう、なんてこともあるのだとか。

いつでも気軽に相談できる距離感を

 飼い猫の一生は、言うまでもなく飼い主の判断により大きく左右されます。例えば猫が年を取って重い病気を抱えたとき、どのような治療を選ぶのか、それをいつまで続けるのか、猫自身が選べない以上、判断するのは人間になります。

「家族同士の間でも意見が分かれることはありますから。後になって、なぜ死んでしまったのか? もっと何かできたのではないか? と悲しみに暮れることが極力少なくて済むように、相談しながら治療を進めるのも私たち獣医師の大切な役割です。猫を診(み)ているのと同時に、人間のことも見ているのですね」

 人間も猫もなるべくつらい思いをしないように。そのためにも高崎先生は「定期健診」の重要性を話します。

「たとえば人間の場合でも、周りの人にも明らかに具合が悪く見えるとしたら、それは症状が相当に悪化しているとき。猫も同じです。まして猫は人間の言葉をしゃべりません。そうなる前に病院で見てもらうというのが理想です」

「何か少しでも気になるときには動物病院に連れて行く、という選択肢を頭に入れておいていただけたら、病気の早期発見につながってより長く猫と一緒に暮らせるようになることもあります。飼い主さんの勘はとても鋭い。なにせ毎日その猫を見ているわけですから」

何か気になるときには動物病院を頼って、と話す高崎医院長(2020年12月、遠藤綾乃撮影)



 重大な症状を抱えているわけではないときの来院だからこそ、獣医師の先生に聞きたくなる日常のお悩みもあるでしょう。

「最近うちの子、舌が肥えたのかドライフードを食べなくなっちゃったんですけど」
「お母さんばかりになついて、ほかの家族はちょっと寂しいんですが」
「大人しい猫で、粗相も夜鳴きもしない。いい子過ぎて逆に不安です」――

 そんな他愛ないぼやきまで気軽に話せる距離感が、猫にも飼い主にも幸せなのかもしれません。

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