東京生まれ東京育ちは、本当に「うらやましい」のか?【連載】記憶の路上を歩く(4)
2021年1月18日
ライフ東京に生まれて東京に育つとは、一体どういうことなのか。変わり続ける「故郷」への思いは、寂寥感と心地よさとが表裏一体のようだと、編集者の影山裕樹さんは語ります。
背中合わせの「寂寥感」と「心地よさ」
赤提灯やスナックの雰囲気が流行(はや)っている、ということで、それ風のお店を再開発で建ててみせながらも、ホームレスや反対派の声は届かないデベロッパー主導のまちづくりによって、都市の寛容さが失われることは大きな問題だと僕は感じています。
一方で、由緒正しき、いや、先祖とのつながりが追えるような、土地に根差した家で育った人もいれば、そこからこぼれる根無し草の都民もいる。何より僕自身がそうだから。
東京生まれ東京育ちってうらやましい! 中野出身って、大都会じゃん! シティボーイだね! って言ってくれる人もいるんですが、なんか的外れというか、妙な寂寥(せきりょう)感を感じますね。
心落ち着ける「故郷」を持たず、誰とも共有できない私的な記憶を携えて、亡霊のように彷徨(さまよ)うことしかできない。それが生まれ育った街なのだという、どこか実存の落とし所のない感覚。
もう中野区に家もないので、サンプラザ無くすの反対! と叫んでも、「お前、別に住んでないじゃん」と言われれば反論ができない歯がゆさというか虚しさをどう解決してやろうか、と悩みます。
でも一方で、激しい新陳代謝によって街並みは移り変わり、記憶の中にしか存在しない風景は色あせていくし、そのことで「自分がそこにいたという証拠」を流し去ってくれるかのような「時間の寛容さ」に、匿名の街で匿名に暮らし誰にも知られずに老いさらばえることに、どこか心地よさを感じてしまう自分もまた存在するのです。
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