東京生まれ東京育ちは、本当に「うらやましい」のか?【連載】記憶の路上を歩く(4)

東京に生まれて東京に育つとは、一体どういうことなのか。変わり続ける「故郷」への思いは、寂寥感と心地よさとが表裏一体のようだと、編集者の影山裕樹さんは語ります。


おでん屋台には、きっともう出会えない

 スタジオジブリの『コクリコ坂から』という映画がありましたが、戦後復興の喧騒(けんそう)の中で、僕のように血のつながりを感じることのできない、あるいは血縁があいまいな出自でも前を向いて生きていかないといけない人は昭和生まれの人には多いと思います。

 特にうちみたいな母子家庭出身者は社会階層も低いので、とてもじゃないが東京で持ち家なんて持てないので実家が漂流したり無くなったりしている場合も多い。

 そういえば、祖父の家の近くで「ガチャガチャ」を買ってもらいました。勾配のある坂の途中で、カプセルを開けては閉めるあの感触をなぜか忘れることができません。なんでそんな些末(さまつ)なことを覚えているんだろう。

 ガチャガチャといえば、住んでいた江古田の家からすぐのところにある食料品店の前にガチャガチャがあって、20円で買えるドラゴンボールのカードダスをなんども買っていました。

 キラが出るとうれしいんですよね。ちなみにそこの店員さんもきれいに禿げていました。うちでは「となりのお兄さん」と呼んでいて、夕飯時になると「となりのお兄さんのところ行ってきて」と言われ、おつかいついでにガチャガチャを回していたのでした。

おでん屋台が来ていた、あの角(画像:影山裕樹)

 その先の角には夕方おでんの屋台がやってきて、そこで買うはんぺんがとてもおいしかった。先日、25年ぶりくらいに訪れてみました。僕が住んでいたアパートも、となりのお兄さんのお店もありませんでした。

 おでん屋台があの角に来ることはもうないでしょう。江古田の森公園で遊ぶ子ども、その親御さんたちの中に、僕の知っている人はいないでしょう。長い煙突のある銭湯が残っていたのが唯一の救いでした。

生まれても育っても、皆よそものの街


【画像】懐かしい「東京」の原風景(3枚)

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