庶民的で親しみが湧く! 都内にある「ミニミニ大使館」の数々

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庶民的で親しみが湧く! 都内にある「ミニミニ大使館」の数々

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大居候

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豪華な洋館からマンションの一室まで、東京都内にはさまざまな大使館が存在しています。フリーライターの大居候さんが解説します。

おしゃれで広い大使館はごく一部

 大使館にはどこか華やかなイメージがあります。実際、建築の美しさで知られる大使館は東京都内に多数あります。半蔵門駅の近くにある英国大使館(千代田区一番町)はおしゃれな洋館で、まさにザ・大使館というべき建物です。

 また、アメリカ合衆国大使館(港区赤坂)は近代的な建築で、オランダ王国大使館(同区芝公園)は季節になると敷地内にチューリップが咲き誇ることで知られています。さらにクウェート国大使館(同区三田)は、戦後日本を代表する建築家・丹下健三が設計しており、個性的な美しさを持っています。

 しかし、日本国内には現在140余りの国が大使館を置いているものの、敷地面積を誇れるのはごく一部です。

 言うまでもなく東京は土地が高額であるため、明治時代に国交を結び広い敷地を確保できた国か、石油が産出するなど資金に余裕ある国の大使館に限られます。多くの国では土地や建物を借りて、大使館として使用しているのが実情なのです。

マンションの一室を借りるケースも

 財政状況の厳しい国の規模はどんどん小さくなります。

 インフレが一時期激化して話題となったジンバブエ共和国大使館(港区白金台)は白金台にあります。住所を聞けば一等地ですが、実際の建物は年季の入ったマンションです。中に入ったことのある人によれば、もとのマンションをそのまま使用しているため、台所などもそのままで、極めて庶民的な内装だといいます。

港区白金台にあるジンバブエ共和国大使館(画像:(C)Google)



 しかし、まだ建物を持っているからよいと言えるかもしれません。同じく白金台にあるエリトリア国大使館(同)は、なんとマンションの一室です。モルディブ共和国大使館(同区麻布台)もまた、ビルの一角に入居しています。

 大使館は通例、外交官特権の存在を示すために国旗を掲げていますが、マンションの一室などを借りている場合は、ベランダや窓から国旗を掲げて工夫しながら存在感を示しています。

 こうした手狭な物件しか借りられないのは、やはり家賃の高い港区に物件を求めるからでしょう。そんななか、思い切ってよその地域に大使館を置いている国もあります。

小さな大使館に感じる親しみ

 中でも、びっくりする場所にあるのがモルドバ共和国大使館(新宿区榎町)です。

新宿区榎町にあるモルドバ共和国大使館(画像:(C)Google)



 モルドバは旧ソ連から独立したルーマニアとウクライナに挟まれた小国で、その中に旧ソ連からの独立に反対した人々による沿ドニエストル共和国という国があることでも知られています。

 大使館のある新宿区榎町は、東西線の早稲田駅と神楽坂駅の間の庶民的な住宅地エリア。並びには庶民の味方として支持を集める「業務スーパー」もあります。業務スーパーのすぐそばに、国旗が翻っており、なかなか味のある風景です。

 モルドバフェアというイベントが2018年、日暮里駅前で開催されたことがあります。モルドバのワインや食べ物が一堂に会するという興味深いイベントで、足を運んだ人は皆モルドバのファンになったといいます。なにしろ、大使館後援のイベントにもかかわらず、その看板は模造紙に手書きと、手作り感がすごかったからです。

 立派な建物を誇る大使館も確かに素敵ですが、個人的には小さな建物や一室で細々と運営しているような国に親しみを感じます。

もし自分が大使館の大家になったら……

 もし自分の所有する物件が大使館に借りられたら、少々誇らしげな気分になりますが、覚悟も同等に必要となります。その理由は、大使館の特殊性です。

港区麻布台にあるモルディブ共和国大使館が入るビル(画像:(C)Google)

 外交官は赴任国で逮捕されないなど、外交官特権を持っていることはよく知られていますが、館内の敷地でも同様です。国際法上、大使館や公館は絶対的に不可侵であるとされており、大使館の設置されている国の警察も立ち入ることはできません(車の中なども同様です)。

 つまり大使館が借主となった場合、なにか問題があっても大家が立ち入ることが困難になってしまうわけです。

 さらに政情不安な国の場合、家賃が払われない可能性もあります。かつてソ連軍の侵攻を受けたアフガニスタンでは、ソ連軍が撤退した後に内戦が激化したことから、政府が海外の大使館へ経費を送ることができなくなった歴史があります。

 当初はスタッフ削減などでやりくりしていましたが、それでも家賃や経費が賄えなくなり、大使館員がアルバイトをして経費を賄っていたこともあったといいます。

不動産業界で大使館は上客

 それでも、不動産業界では大使館相手の賃貸というのはうまみが多いといいます。というのも、たとえ家賃の支払いがストップしても取りはぐれることはまずない上客だからです。

 例えば、日本の民間企業に不動産を貸したとします。その会社が上場企業でも、家賃を滞納して倒産すれば回収できません。対して、相手が国であれば政情不安や経済の混乱が原因で本国からの送金がストップしても、国まで崩壊することはあまりないため、遅れてもいつかは払ってもらえるという安心感があるわけです。

電卓のイメージ(画像:写真AC)



 また、貧しい発展途上国であっても関係の深い企業のひとつやふたつは存在するため、肩代わりをする場合もあるのです。

 というわけで、コロナ禍が落ち着いたときには、皆さんもぜひ都内ミニ大使館巡りをしてみましょう。

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