銀座から熱く発信! 老舗「王子サーモン」に聞く、知れば知るほど深いサーモンの世界!

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銀座から熱く発信! 老舗「王子サーモン」に聞く、知れば知るほど深いサーモンの世界!

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サーモンの楽しみ方や、種類によって何が違うかなど、その世界の深いところを、老舗「王子サーモン」に聞きました。意外な果物と合うといいます。

知っているようで知らなかった。広大なサーモンの世界

「愛され魚類」という分類があるならば、間違いなく名を連ねるだろう食べ物、サーモン。回転寿司に、サンドイッチに、おつまみに。欠かせない食材のひとつです。

赤オレンジ色がまぶしい「王子サーモン」のサーモン(2018年、高橋亜矢子撮影)



 そんなサーモン、トリビアが多い魚でもあります。日本語に訳すと「鮭」だけど「マス」も含まれていて、赤いけれど、白身魚の仲間なのだといいます。

 さらによくよく考えてみると、即答しづらい疑問も多い魚です。

 種類ごと、産地ごとの違いとは、具体的に何なのでしょうか。高いサーモンと安いサーモン、「高いサーモンの方が美味しそう」と漠然と感じますが、値段の理由は味だけなのでしょうか……? 良質なサーモンを知る老舗に話を聞きました。

 向かったのは、銀座松屋の裏側にある「王子サーモン」銀座店。1967年、王子製紙のグループ会社として始まった、50年以上の歴史を持つ、サーモンの専門店です。

 発足のきっかけは、王子製紙のかつての副社長が、イギリス出張の際、ロンドンのレストランで、美味しいスモークサーモンに出会ったこと。原材料を尋ねたところ、北海道・日高沖産の鮭だと判明し、その感動から、サーモンへの探求が始まったといいます。

「王子サーモン」銀座店の外観。2階には、ジェラートのお店「リビスコ」がある(2018年、高橋亜矢子撮影)
窓をのぞくと、サーモン型のディスプレイがちらり(2018年、高橋亜矢子撮影)

 店内を見回すと、世界各国から集結した、生、スモーク、フレーク、チップス、加工品など、さまざまな姿のサーモンたちがぎっしりと並んでいます。

スラッとした銀色の箱に収まる、スライスサーモン5種(2018年、高橋亜矢子撮影)
鮭むすびも販売(2018年、高橋亜矢子撮影)

食べながら確かめてみよう! サーモンそれぞれの違い

 迎えてくれたのは店長の間世田さん。開口一番「まずは、食べてみた方が早いと思いまして!」と、張りのある声を響かせ、出してくれたのは3種類のサーモンです。

3種類のサーモン。手前にあるのはイクラ(2018年、高橋亜矢子撮影)

 最初に言ってしまうとこの3種類、「美味しい!」という率直な感想以外は、噛んだときの感触、味、口の中での広がり方、全部が全部、まったく異なるものでした。

 まずは「沖獲り紅鮭」。紅鮭は、鮭の中でもっとも身が赤い種類です。見た目からしてかなり肉厚ですが、口にすると、その厚みをさらに実感。味も濃厚です。(なお、王子サーモンの紅鮭は、徹底した管理のもと、冷凍処理等を行っているため、寄生虫の心配がないとのこと)

 2つめは、フィヨルドサーモン。クセのないさっぱりとした味わいながら、噛めば噛むほど、旨みが口の中に広がります。

 フィヨルドとは、氷河の浸食作用によって形成された複雑な地形の湾や入江のこと。フィヨルドサーモンとは、そのフィヨルドの中でも選りすぐりの養殖地で育ったサーモンのブランド名です。

 そしてその正体は「ニジマス」。別名サーモントラウトとも呼ばれる、養殖育ちの「マス」です。ですが「マス」はサケ科の生物なため、生物学的には同じ魚に分類されます。呼び名の違いは、国や地域によるもの。ちょっとややこしいですが、「仲間」なのだといいます。

 3つめは、キングサーモン。噛むと脂分がぎゅっと口の中に広がり、身は、口の中でほろほろとほどけていきます。とろけます。脂のノリがダントツです。

 キングサーモンは直訳すると「王様鮭」。王様と呼ばれるゆえんは、この脂のノリと大きさといいます。通常は50cm~1m以内に収まることが多い鮭のなかで、キングサーモンは1.5m前後におよぶことも。

「赤ワインが飲みたくなる味ですよね!」と間世田さん。たしかに、白ワインよりも、赤ワインが合いそうな豊潤な味わいです。

サーモンに合うという意外な果物とは?

 そのまま食べても美味しいサーモンですが、他の食材と掛け合わせる場合、何かおすすめはあるのでしょうか。

「フィヨルドサーモンは、柿とめちゃくちゃ合いますね。フィヨルドサーモンのスライス(30g)と柿(2分の1個)、白バルサミコ(小さじ1)、塩こしょう(少々)とディルの葉(少々。なくても可)でマリネするんです。

 あと(先ほど出したサーモンの中にはないんですが)時鮭は、新生姜とマリネするのが合います。時鮭のスモークサーモン、薄くスライスした新生姜(もしくは谷中生姜)を、白ワインビネガー、砂糖、塩少々を混ぜて作った液で和えます」

王子サーモンでは「沖獲り時鮭」も販売されている(2018年、高橋亜矢子撮影)



なお、ふだんスーパーで流通している鮭の多くは「白鮭」。そのなかでも、春から夏にかけて出回るものを「時鮭」、秋に出回るものを「秋鮭」と呼ぶ(イラストACの画像をULM編集部で加工)

「生のサーモンは、酒、醤油、みりんでシンプルに『漬け(づけ)』にして食べるのも美味しいです。漬けはバルサミコでもつくることができます。白バルサミコ、オリーブオイル、薄口醤油を混ぜて。30分くらいで浸かります。お刺身を漬けにするときのバルサミコは、赤よりも白の方が適しています。

 漬けにしたサーモンを酢飯の上に載せて、ラップできゅっと丸めて、手まり寿司にするのも、女子会とか、おもてなしの席におすすめです」

手まり寿司のイメージ(画像:写真AC)

「ちなみにバルサミコでも、酢飯がつくれます。赤バルサミコは、色が付いて可愛いんですよ。通常の酢飯のレシピを参照しながら、お酢のかわりに赤バルサミコを入れて、砂糖は少し減らします。サーモンと関係なくなっちゃうんですが……こっちは白味魚を載せると色のコントラストがついてかわいいです!」(間世田さん)

王子サーモンの店内には、サーモンに合うバルサミコも販売されている(2018年、高橋亜矢子撮影)

なぜ生じる?サーモンごとの違い

 料理の話が盛り上がったところで、ふたたびサーモンごとの味の違いについて、見ていきたいと思います。味が異なる条件はさまざま。そもそもまず、魚種が違えば味も変わりますが、それ以外にもさまざまな細かい条件が関わっているといいます。

出身国が同じでも千差万別! サーモンの違い

 サーモンが獲れる地域としてよく聞かれるのは、ノルウェー、チリ、カナダ辺りではないでしょうか。ですが「カナダ産」と一口に言ってもカナダは広大。場所によって、品質、味はバラバラなのだと間世田さんは話します。

 たとえば、王子サーモンが扱うカナダの紅鮭は「漁場はJohnstone(ジョンストン)海峡」とかなり局地的。

王子サーモンが扱っているカナダの紅鮭(画像:王子サーモン)



 条件は漁場のほかにもあり、まずは「アダムスラン」。この地域には「アダムスラン」という、4年に1度、フレーザー川の支流アダムス川に紅鮭が遡上する時期があります。その時期、鮭たちは一切エサを取らずに3週間、500キロの道のりを泳ぎ切るのだそう。それによって、栄養を蓄えた状態になり、脂のりがアップ。味わいに大きな変化が起こるといいます。

 もう1つは、4年に1度しかない「アダムスラン」の時期のなかでも、8月中旬に漁獲すること。なぜならその時期の紅鮭は、より早く目的地に到着した活きの良い若い鮭だから。タンパク源は、若いものほど美味しいことが多いですが、鮭もしかり。身に栄養がしっかりと行き渡っていて、より「美味しい鮭」なのだといいます。

「良い鮭は、顔も美しいんです。感動しますよ。すんごい美人! カナダの紅鮭は、超美人なんですよ。で、匂いを嗅ぐと生臭くなくて、すーごくフレッシュないい香りがするんです」(間世田さん)

脂びれという、尻尾の少し手前についている小さなひれが「かわいくて好き」だという間世田さん。細部への愛着に、鮭への確かな愛がにじむ(2018年、高橋亜矢子撮影)

保存、輸送の仕方によって値段が変わる

 さらに、捕獲したあとの保存方法や輸送の仕方も、鮭の品質に影響するといいます。そして、値段にも。

「鮭は、川に戻ってきたところを捕まえるのであれば難しくはないんです。でも、その手前、広い海のどこにいるかわからない状態で捕まえようとするのは難儀です。そのため、流通しづらいんですね。

 さらに、鮮度を保つためには、水揚げしてから比較的早い段階で、一瞬で凍らせる必要があります。魚の細胞を壊さないよう、凍らせるときはパッと。解凍はゆっくりと行うのが大事です。何回も冷解凍を繰り返してしまうと、魚の細胞は壊れやすくなってしまうので、冷凍回数を最低限におさえる必要もあります。

 鮮度がいい時期の魚を捕まえて、それを鮮度を保ちながら加工するには、莫大な費用や、そのための施設が必要です。となると、どうしても原価が上がってしまいます」(間世田さん)

切る作業でも味が大きく変わってしまう

 加えて、お客さんに提供される手前、切る作業でも味に変化が起こるのだとか。

「私の場合、切り始めてまだ3年位なんですけど、納得いくように切るのは難しいです。身がダメージを受けると味にも影響するので、極力ダメージを与えないようにしながら、美しく均一に切るには、熟練した力が必要です。

 サーモンによって、どのくらい解凍して切るのが良いかも異なります。たとえばキングサーモンは溶けすぎると脂が出てしまうので半解凍くらいがベストです。秋鮭や時鮭なども、溶けている状態では切れません。がっちがちの状態で、裏返して切るんですが、この作業には無茶苦茶、力がいります」(間世田さん)

サーモンを切る作業は力勝負でもある(2018年、高橋亜矢子撮影)



会社帰りにデパ地下感覚で! 銀座の地で伝えたい楽しみ方

 高付加価値なため、値段もけして安くはない「王子サーモン」のサーモン。一瞬、敷居が高そうに思う人もいるかもしれません。ですが、会社帰りなどにもっと気軽に立ち寄ってもらえたら……と間世田さんは話します。

「お刺身や切り身などの賞味期限の短いものは、閉店間際、残っていれば安くなるんですよ。たとえば、この近辺で働いている方達に会社帰りに、デパ地下やスーパーのような感覚で入ってきていただければ、何かしらありますよ!と思っています。

 あわよくば、いい商品もだいぶ安くなっているので。で、それを『漬け』にして、タイマーで炊いておいた炊きたてのごはんとかに載せて、漬け丼で食べるとかおすすめです。これ、もう最高です!」(間世田さん)

お刺身やスモークサーモン、イクラ、ほぐした焼鮭の荒ほぐしなどが置かれる、要冷コーナー(2018年、高橋亜矢子撮影)



 間世田さんの、サーモンを語る言葉の温度は常に高いです。店長に就任してまだ1年弱とのことですが、その声の隅々から、サーモンを思う気持ちがあふれ出ています。

「仕事は大変な部分もありますが、でも、こんなに美味しいものを適正な価格でこの立地で販売するなんて。夢が膨らみます」(間世田さん)

 そんな間世田さんにも出会える「王子サーモン」銀座店。サーモンの世界を知る糸口として、ぜひのぞいてみてはいかがでしょうか。

●「王子サーモン」銀座店
・住所:東京都中央区銀座3-7-12
・交通アクセス:東京メトロ各線「銀座駅」A12出口から徒歩約3分、日比谷線「東銀座駅」A8出口から徒歩約3分
・営業時間:平日10:30~20:00 土休日10:30~19:00
・定休日:年中無休(年末年始をのぞく)

●店長ブログ
http://www.oji-salmon.co.jp/shop-blog/

●サーモンのレシピ
http://www.oji-salmon.co.jp/smokesalmon-recipe/

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