【データは語る】渦中のGoToキャンペーン、実は「10代」が最も意欲的だったワケ

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【データは語る】渦中のGoToキャンペーン、実は「10代」が最も意欲的だったワケ

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橿村芽久未

TesTeeトレンド分析担当

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新型コロナ禍の支援策として政府が打ち出した「GoToキャンペーン」。新型コロナウイルス第3波の本格的な到来前に行ったアンケート調査では、各年代のうち「利用したい」と答えた割合が最も多かったのは10代でした。一体なぜなのでしょうか。TesTeeトレンド分析担当の橿村芽久未さんが解説します。

「高級プラン」報道ばかりが先行し……

 菅義偉首相は2020年11月21日(土)、7月22日(水)からスタートしていた「GoToトラベル」キャンペーンについて、新規予約を一時停止するなどの措置をとると発表しました。この措置以前に、キャンペーンは国民にどのように受け止められていたのでしょうか。10月に実施したアンケート調査から読み解きます。

※ ※ ※

「GoToトラベル」キャンペーンは、国内旅行者の宿泊料金、移動費、食費や買い物、観光などの費用を割引することによって地方のビジネス活性化を図ろうと創出された政策です。

 キャンペーン当初は東京発着の旅行は対象外で、10月1日(木)から東京もキャンペーン対象となっていました。そして、東京都と東京観光財団は東京都独自の上乗せ支援策「もっとTokyo」を10月9日(金)に公表。そこから参加する旅行事業者や宿泊事業者の公募が開始されていました。

GoToトラベル、GoToイート。年代別の「利用意欲」は、10代が最も高いという結果に。一体なぜ?(画像:写真AC)



 これを受け当時テレビなどもしきりに「お得なプラン」を紹介していましたが、取り上げられるのは、通常1泊数万円から10万円以上もする高級ホテルが半額以下で泊まれる、といった割引幅の大きい、額面の大きい事例が中心。

 そのため「GoToってお金持ちのためのキャンペーンなのかな」「もともと金銭的に余裕がないと利用しようと思わないかも」といった意見もちらほら。

 大人世代が優雅に近場旅行を楽しむもの、というイメージを持った人も少なくなかったようです。

 しかし実際に調査をしてみると、このGoToを最も「利用したい」と考えているのは意外にも10代だということが明らかになりました。一体なぜなのでしょうか。

GoTo認知度、「トラベル」は8割超

 若年層のトレンド調査を行い情報発信している「TesTeeLab」(運営・テスティー、中央区日本橋兜町)では、2020年10月23日(金)~24日(土)、「GoToキャンペーンに関する調査」を実施。全年代の男女3745人(10代688人、20代741人、30代714人、40代794人、50代以上808人)を対象にアンケートを行いました。

(※アンケートは、新型コロナ感染拡大の「第3波」以前に行ったものです。)

 まず、全年代の男女3745人を対象にGoToキャンペーン(トラベルおよびイート)を知っているかどうかを聞いたところ、「知っている」と答えた人はGoToトラベルが82.8%、GoToは59.5%。「知らない」と答えた人は10.9%でした。

【GoToキャンペーン認知率】
・知っている(GoToトラベル):82.8%
・知っている(GoToイート):59.5%
・知らない:10.9%

 特に「トラベル」は8割以上という高い認知度がうかがえます。

 そこで、「GoToキャンペーン(トラベル、イート)を知っている」と回答した人を対象に、GoToキャンペーンを利用したいかどうかを尋ねてみたところ、全年代で約6~7割の人が「利用したい」と回答。

「すでに利用した」と回答した人は約1~2割、「利用したいと思わない」と回答した人は約2~3割という結果になりました。

 ここで注目したいのが10代の意向です。「利用したい」と答えた割合は全世代でトップの69.4%。「すでに利用した」と合わせた利用意欲の高い層(81.4%)は、30代(81.8%)とほぼ同数でトップ水準となっていることが分かるのです。

 なぜ10代はGoToキャンペーンに高い意欲を示すのか。そのヒントが「行き先に関する検索方法」に垣間見えます。

行き先の参考は、予約サイトよりSNS

 GoToキャンペーンを「利用したい」「すでに利用した」と回答した人を対象に行き先の検索方法を聞いたところ、10代の第1位は「SNS」。20~50代以上の第1位はいずれも「予約サイト」となりました。

「行き先の検索方法」を尋ねる問いでは、10代だけが「SNS」が1位、そのほかの世代は「予約サイト」が1位という結果に(画像:TesTee)



 旅行先や目的地を決める主な方法は、以前なら旅行代理店への直接来店、最近ならネット検索経由でのオンライン予約などが主流。

 しかし、前述の通り10代は62.9%が「SNS」を活用し、20代でも48.6%と約半数が挙げています。

 このSNSとGoTo意向との間にある“相関関係”を探ってみたいと思います。

 旅行先の検索方法で「SNS」と回答した人を対象に「利用しているSNS」を尋ねたところ、10~40代の第1位が「Instagram」、50代以上の第1位が「LINE」という結果になりました。

 10~40代で第1位となった「Instagram」の特性を見ていきましょう。

若者に人気Instagramの実力

 ご存じの通り、Instgramは画像を共有することをメインとしたサービスです。

 さまざまなフィルターや色彩・輝度などの調整機能で画像を簡単に加工することができ、若者を中心に人気を博しています。

 調査の結果でも10~20代の利用率が高いことに触れましたが、日本ではInstagramへ投稿する写真として適した見栄えの良さを意味する「インスタ映え」という言葉も生まれ、2017年の新語・流行語大賞年間大賞に選定されたことも記憶にあるのではないでしょうか。

進化するInstagramの検索機能

 さらにサービスの登場から10年ほどが経過した現在では「ハッシュタグ」を利用することで特定のジャンルや写真を検索する「タグ検索」、2016年に登場した「Stories(ストーリーズ)」では24時間で投稿が消える機能で若者の心をつかみました。

 他にもショッピング機能「ShopNow」、ライブ配信や長尺動画を投稿することのできる「IGTV」など、ファッション・ビューティーやグルメの分野との親和性が高く、個人のみならず企業アカウントも続々と参入しています。

 そんなInstagramで、旅行の目的地やグルメを検索するには「ハッシュタグ検索」がとても便利です。実際「GoToキャンペーン」では21.9万件、「GoToトラベル」では12.2万件もの投稿があります(2020年11月18日現在)。

 さらに、Instagramの投稿機能には写真を何枚も同時に投稿ができる「複数投稿」に加えて、新しい機能として投稿をジャンルで分けることができる「まとめ」という機能も登場しました。

ジャンルごとに画像・情報を検索できる「まとめ」など、検索機能が次々と強化されている(画像:むにぐるめ、muni_gurume_japan)



 気に入った投稿は「保存」という機能を利用することで、自分だけが見れる保存リストで情報をまとめておくことができるので、食べ物や旅行先の目的を探して必要になったときに見返すことも容易です。

 また、自分のアクション「いいね」や「コメント」に含まれるキーワードを学習し、検索のタブでは好みに近いものをリコメンドとして優先的に表示されるので、偶発的な発見もInstagramでは可能となります。

旅行・グルメと、SNSが好相性の理由

 このように、GoToキャンペーンについて10代の利用意欲が高い背景には、Instagramの絵映えの良さや検索機能の便利さが密接に関係しているものと思われます。

 2020年の春から初夏は、絶好の行楽シーズンにも関わらず新型コロナの影響で外出自粛を余儀なくされました。

 当時、自宅でスイーツ作りを楽しむ「#おうちカフェ」「#おうち時間」などのハッシュタグがトレンド入りしたものの、どこかへお出掛けしたい、それをシェアしたいという気持ちは依然としてあり、ようやくその思いがかなえられる時期が来たというのも、10代の意欲を高める背景にはあるのかもしれません。

おいしいものを食べたりキレイなものを写真に撮る楽しみがある旅行は、SNSとも好相性(画像:写真AC)



 特に旅行先では、普段の生活で目にしない珍しいもの、美しいものに出合い、多くの人はそれを写真に撮りたくなるもの。画像をアップすれば、それを見た別のユーザーが同じ観光先へ行ってみたいと思うきっかけにもなり得ます。

 旅行とSNS(特にInstagram)は好相性の関係なのだと、あらためて感じさせられる調査結果となりました。

※ ※ ※

 2020年11月21日(土)現在、東京などでは新型コロナウイルスの新規感染者数が増え、第3波への警戒感が高まっています。GoToを利用する際も、政府や自治体の発表などに留意したうえで感染対策を十分に行うことが重要です。

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