まんまるおめめに鋭い歯 伊豆諸島で密かに人気上昇中、謎の美味魚「シャビ」とは

黒い見た目が悪かったり、小骨が多かったりで伊豆諸島の地元民すら敬遠していた謎の魚「シャビ」。実は大変美味でした。その魅力について、伊豆諸島紀行作家の斎藤潤さんが解説します。


しょうゆをはじくほどの脂が乗った身

 澄んだつぶらな目は、ギロリ。牙のように長く突き出した歯が、恐ろしげです。刺し身定食には、刺し身6種類のほかに、小皿8品とシャビのあら汁まで並び大満足。

シャビの肝煮(画像:斎藤潤)

 シャビの刺し身は少し小骨が気になりましたが、しょうゆをはじくほど脂がよく乗っています。小骨ごとたたいたたたきは、とろりと口の中でとろけそう。これを、汁に入れてツミレのようにするとまたうまいと聞き、間違いなくそうだろうと確信しました。

 島唐辛子が効いたしょうゆに漬け込んだべっこうは、ねっとりしたうまみが口に広がります。この味を知ってしまった人たちの間で、人気が高まるのは当たり前でしょう。

 シャビのことが気になって、他の島でも機会があると話題にしました。三宅島の阿古で、釣りが好きだという宿の主人にたずねたところ、

「ツリッキリのことだろう。時々桟橋で釣りをしていると懸かるけど、誰も食わない。歯が鋭くて、釣り糸をかみ切ってしまうから、ツリッキリっていうだじ」

 夜になると浅いところまで揚がってくるが、基本的には深場の魚だそうです。そして、東京都水産試験場が2004(平成16)年に発行した『魚名について―伊豆・小笠原諸島の魚たち』という資料を見せてくれました。

 それによれば、シャビの標準和名はクロシビカマス。それ以外に、伊豆諸島では

・オキサワラ
・オキザワラ
・キキ
・ゲドウ
・サビ
・スミヤキ
・タチウオ
・ナワキリ
・ヒキキリ

などと呼ばれていると書かれていました。しかし、ツリッキリは載っていません。恐らく、微妙に違う呼び方がもっとたくさんあるのでしょう。

神津島でも密かに愛されていた魚

 別の機会に訪れた大島でも、またシャビが話題にのぼりました。

 1泊2食ひとり2万円ほど、地元食材にこだわる「ホテル&リゾート・マシオ」(大島町元町大洞)という宿で、どんな地魚を出すのか、何か珍しい魚は並ぶのか聞いたところ、
「サビという魚が、けっこう人気があるんですよ。今日は残念ながら揚がりませんでしたが。カルパッチョや刺し身、つみれ汁のようにしてお出ししています」

 岡田地区の人に言わせると、

「シャビは岡田の魚だったのに、最近よその村の者まで食べるようになったので、迷惑している。昔はタダでもらえることも多かったし、買うにしてもほとんどタダだった。それが今では、一人前の値段で地元スーパーに売られるようになってしまった」

 神津島で島生まれ島育ちの友人と話題にしたら、さっきSさんがそれをさかなにしながら晩酌をしていたという。

「えーっと、それに間違いないが、名前はなんだったけかな。昔から漁師のSはうまいと言っていたけれど、見た目が気持ち悪いし、小骨も多いから手を出さなかった。でも料理してもらいだまされたと思って食べてみたら、これがうまいのなんのって。名前は……」
「もしかして、ナワキリ?」
「そうそう、ナワキリ。ナワキリだよ」

 結局、まだ一杯やっていたSさん宅に押しかけて、ナワキリ(シャビ)の塩焼きを食べさせてもらいました。

神津島で食べた脂がにじむナワキリ(シャビ)の塩焼き(画像:斎藤潤)

 すっかり冷えていたけれど、それでも思いの外おいしい。脂が強い魚にちょうどよい、ややきつめの塩加減だからでしょうか。

旬は11月から2月頃まで


【画像】謎の美味魚「シャビ」を見る

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