人気の「飴」柄は7年がかり 創業91年の伝統工芸「文庫革」が続く論理と技術と感性
2018年12月22日
知る!TOKYO昭和の初めより、墨田区向島の工房でつくられる「文庫革」。白革に型押しされる絵柄の多彩さ、鮮やかかつ味わい深い色味が魅力的な伝統工芸です。伝統工芸の後継者が減少しているともいわれる今、持続可能な組織をつくり、技術を守り続ける、文庫屋「大関」にその舞台裏を聞きました。
伝統工芸を50年、100年と存続するための仕組みづくりとは
一方、もう1人のデザイナーであり、代表取締役の田中威さんは、過去の売り上げを検証しながら、論理的に柄を考案しています。
全体の2割の製品が、全体の8割の売上を占めるという「2:8の法則(パレートの法則)」。その法則に基づき、「8割の売上を生み出すヒット柄」を考え、収入の主軸を固める一方、ヒットせずとも、少人数に愛される柄を幅広くラインナップしていると話します。


柄が完成するまでの時間は、柄によって大きく異なり、すんなりと商品化されるものもあれば、10年くらい温めている柄もあるといいます。

「常に、ひとつの柄に固執せず、10柄くらいを並行して進めています。寝かせておくことで、ある時ふと、進めることができるようになったりするので」(威さん)
デザイン業務以外にも、代表取締役として、多岐に渡る業務を精力的に行っている威さんですが、若い頃は、自分が現職に就くとは思っていなかったのだとも話します。

フリーのデザイナーとして20代で独立、家業とは異なるところで身を立てていた威さんへ転機が訪れたのは、約25年前。当時2代目が営んでいた「大関商店」(当時の屋号)、そしてもう1つの家業であった、ライセンスブランドの財布をつくる会社「田中商店」、2つの家業が危機的状況に陥ったのです。結果、田中さんが2社の家業を継ぎ、その再起をはかることに。
そして現在、50年、100年と存続していくため、職人を養成しつづけ、恒久的に人材を確保し、クオリティも担保していく仕組みづくりをしています。

同社では今、彩色を行う職人18人、型押し作業を行う職人6人、販売担当などの計43人と、同社で社員として勤務したのち、独立したフリーランスの彩色職人11人が働いています。1人が全部の工程を行うのではなく、分業する方法を選択したのは、同業間での競争を生まないためでもあるとのこと。

また、材料集めから販売まで、自分たちで行える力を持つことも強みであるといいます。
「問屋を介さずに、ほぼ直販で商品を販売しているため、やればやっただけの利益が生まれます。自分たちでつくり、自分たちで売る。そうすることで、流通のリーダーシップをとることができる」(威さん)
その強みは、アフターフォローの手厚さも生み出しています。文庫屋「大関」の商品は、購入後、半永久的に修理を受け付けているのです。
「自分たちでつくったものなので、何がどうなっているのかを理解しているため、できることです。仮に、修復が難しい場合でも、なぜ修理が難しいのか、細かに説明をすることが可能です」(威さん)

そんな開拓の精神は、かつて、2000年にインターネット販売をスタートさせた頃にも発揮されました。当時はまだECサイトは珍しく、ページ構築は手探りだったといいます。
本を片手に、HTMLタグの書き方を習得。どうやったらアクセスを集められるか、当時、ECサイトを運営していた仲間との意見交換や交流もさかんに行ったと話します。

その精神が実を結び、現在では、都内の一等地に2店舗の直営店を持つまでに成長した文庫革「大関」。ぜひ一度、その多彩な世界を覗いてみることをおすすめします。
●文庫屋「大関」 銀座店
・住所:東京都中央区銀座1-8-7 1階
・アクセス:東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」9番出口からから徒歩約2分、銀座線「銀座駅」A12、13出口から徒歩約5分
・営業時間:11:00~19:00
・定休日:なし
●文庫屋「大関」 浅草店
・住所:東京都台東区浅草2-2-6 1階
・アクセス:東京メトロ銀座線「浅草駅」3番出口から徒歩約6分、都営浅草線「浅草駅」から徒歩約7分
・営業時間:10:00~18:00
・定休日:水曜日
※年末年始は、12月29日から1月2日まで休業
※営業時間は変更になる場合あり
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