人気の「飴」柄は7年がかり 創業91年の伝統工芸「文庫革」が続く論理と技術と感性
2018年12月22日
知る!TOKYO昭和の初めより、墨田区向島の工房でつくられる「文庫革」。白革に型押しされる絵柄の多彩さ、鮮やかかつ味わい深い色味が魅力的な伝統工芸です。伝統工芸の後継者が減少しているともいわれる今、持続可能な組織をつくり、技術を守り続ける、文庫屋「大関」にその舞台裏を聞きました。
人気の「飴」柄、細部に宿るこだわりの数々
萌子さんにとって、デザインを考えるうえで、お客さんと直に触れ合うことは欠かせないといいます。

そんな萌子さんが、文庫革のデザインを初めて試みたのは、入社する前。転職活動中にさかのぼります。その柄は、千歳飴やフルーツドロップ、みかん飴など、鮮やかで懐かしい形状をした飴が一面に描かれた、かわいらしい「飴」柄。面接の際、披露したのだといいます。

飴柄は現在、同店で高い人気を誇ります。ですが、初披露した日から商品化までには、なんと約7年の歳月を要しました。
「文庫革の柄は、革に凹凸をつけることによってつくられます。そのため、通常の線画と異なり、型でどこをどのように凹ませるか、錆をいれる部分はどこにするのかなど、適切な表現方法を考えながら、図版をつくる必要があります」(萌子さん)
7年間、ほかの業務やデザインを並行しながらも、飴の柄が、納得するかたちに帰着するまで、何度も試作を行い、試行錯誤を重ねました。
たとえば、飴を描写する線は、故意に、ランダムにはみ出させているとのこと。はみ出すか、はみ出さないか。その差が、柄の印象を大きく左右することに気づいたのだといいます。
また、ひときわ深い青で描かれる「金平糖」も、青に彩色したことによって、見栄えが大きく変化。金平糖のそばに描かれた、コロッと転がっている様子を表す2本の線も、あるかないかで、印象が全く変わったと話します。

「けして安い商品ではありませんし、お客さんも勇気を出して買ってくれるものですから、丁寧にやらなくてはという思いがあります」(萌子さん)

おすすめ

New Article
新着記事
Weekly Ranking
ランキング
- 知る!
TOKYO - お出かけ
- ライフ
- オリジナル
漫画