吉祥寺・高円寺 魅惑の「アンティーク」を訪ねる中央線トリップへ

  • おでかけ
  • 吉祥寺駅
  • 高円寺駅
吉祥寺・高円寺 魅惑の「アンティーク」を訪ねる中央線トリップへ

\ この記事を書いた人 /

増山かおりのプロフィール画像

増山かおり

フリーライター

ライターページへ

大切に使い込まれたアンティーク、古道具。その魅力を堪能できる名店が、JR中央線沿いにはいくつもあります。フリーライターの増山かおりさんが吉祥寺と高円寺の3店を紹介します。

中央線には古きよき雑貨屋がいっぱい

 アンティーク、古道具、ヴィンテージ、ブロカント……呼び方はさまざまですが、古きよきものには、新品にはない温かみが満ちています。

 アンティークショップが多い街といえば、JR中央線の西荻窪。駅の南北にショップが建ち並び、毎年マップが作られるほどの店舗数を誇りますが、実は中央線にはほかにもアンティークや古道具などをめいっぱい楽しめる街があるのです。

 今回は中でもおすすめの2駅、吉祥寺と高円寺のお店をご紹介します。

西荻窪に次ぐ規模を誇る吉祥寺

 吉祥寺は、行列のできる人気の飲食店やアパレルショップ、公園や動物園までそろった魅力満載な街。雑貨屋めぐりを目的に訪れる人も多いエリアですが、実は中央線沿線では西荻窪に次いでアンティークショップが多い街でもあります。

 しかも、いかにもアンティークという孤高の雰囲気ではなく、さりげなく街になじんでいてふらりと立ち寄りやすい店が多いのが特徴です。そんな中から、今回はふたつのお店をご紹介します。

 駅の西側に伸びる「中道通り」は、雑貨屋が多く集まる商店街。吉祥寺の中でも特にアンティークショップの密集度が高く、この通りを歩くだけで和洋さまざまなジャンルのアンティーク類に触れることができます。

 新品の雑貨を扱うお店が並ぶ中に、アンティークショップがふと顔を出すような店の並びがユニークです。

古い時計が新しく生まれ変わる場所

 1本路地を入ったところに建つ「atelier coin(アトリエコワン)」は、手作り時計と古物のお店。小さな建物の戸を開くと、おとぎ話に出てくる時計職人の工房のような、ワクワクする空間が広がります。

吉祥寺のアンティークショップatelier coin(画像:増山かおり、ミヤジシンゴ)



 奥のスペースは実際にアトリエとして使われています。店内に並ぶのは、ソ連やドイツなどの古い時計のパーツを使い、店主・大護さんの手仕事により仕上げられたオリジナルの時計の数々。

「長く使うことで味わいを深めていく、ジーンズのような時計を作りたい」という言葉のとおり、アクセサリーに使われる素材や古物を組み合わせ、新たな命を吹き込みます。

 生けるアンティークともいえる腕時計や置き時計は、モノというより生き物のような息遣いをたたえています。

 そんな時計の傍らに、東欧やアジア圏などで見つけた古物がさりげなくたたずんでいます。ユニークな形や素材の質感に引き込まれ、写真家やミニチュア作家などのクリエイターが買い求めていくことも多いとか。

 かつてハーモニカ横丁にあった「歌川模型」の歯車パーツで制作したアクセサリーも扱うなど、街の歴史とともに歩みながら愛されているお店です。

 そこから少し足を伸ばして、東急百貨店の裏の「Tsubame Markt(ツバメ・マルクト)」へ。おだやかな光あふれる店内に、フランス、ベルギー、オランダ、ドイツなどヨーロッパ各国から集めた古窯の食器や温かみのある日用品が、心地よさそうに並んでいます。

古道具に宿る、生き生きした生命力

 同店の魅力は、使うシーンが自然と頭に浮かぶアイテムが豊富なこと。ただディスプレーとしてめでるのではなく、実際の生活にすぐ取り入れたくなるような生き生きした生命力を感じます。

 コーヒーミルや時計などは実用品として使用できるようメンテナンスを施していますが、経年変化が生む風合いをできるだけ残すのが店主のポリシー。まっさらにきれいにしてしまうのではなく、道具が生きてきた時間を今に伝えています。

フランスやベルギーなどヨーロッパ各国の日用品が並ぶ(画像:増山かおり、Tsubame Markt)



 店主の竹川さんいわく、同店のアイテムに共通しているキーワードは“チャーミング”。

 その言葉どおり、ひとつ家に置くだけで暮らしに温かな火がともるような愛らしいアイテムばかり。設計やインテリア関連の仕事の経験を持つ店主の知識が、それをいっそう輝かせています。

昭和なムードがお好みなら高円寺へ

 高円寺といえば古着屋、というイメージを持つ人は多いはず。ですが、実は洋服だけでなく、雑貨や家具に関しても古きよきものが愛されている街です。

 近年増えているアンティークショップや古道具屋だけでなく、古着屋のほか、街に何か所もあるリサイクルショップでも個性的なヴィンテージものを扱っていたりします。新しいものをガンガン消費するのではなく、時代を問わずものの魅力を大切にする土地柄なのです。

 そんな高円寺でまず訪れてほしいのが「古道具 権ノ助」。開店から10年を迎えた同店には、ちゃぶ台、古時計、薬箱、木製のビールケースなど、木のぬくもりを感じられるアイテムが豊富にそろっています。

懐かしい時間が流れる店内

 数百円から数千円というリーズナブルな価格帯のアイテムが中心なので、八百屋での買い物の帰りにちょっと立ち寄れてしまうほどの気軽さ。ちょこちょこ通って家を少しずつ昭和なムードに染めていく楽しみが味わえます。

日本ならではの風合いが魅力の古道具が多数(画像:増山かおり、古道具 権ノ助)



 また、小物が頻繁に仕入れられるのも魅力です。

 観光地のペナント、駄菓子屋で使われたケース類、カラフルな紙袋や食器のほか、思わず吹き出してしまうような不思議なアイテムが仕入れられることも。その入れ替わりから目が離せず、足繁く立ち寄ってしまいます。

 また、店主・遠藤さんとののんびりほのぼのとした会話も楽しみのひとつ。

 初めて訪れる人も、開店以来の常連のように迎えてくれます。近隣の飲食店や雑貨屋との付き合いも多く、高円寺の魅力をたくさん聞くのも楽しみ。そんなやり取りが、現代の忙しさを忘れさせてくれるはずです。

※ ※ ※

 アンティークや古道具と聞くと一部の人の趣味と思うかもしれませんが、量販店の家具や雑貨にはない魅力を一度知れば、抜け出せなくなってしまうはず。

 現代ではなかなか難しい手の込んだ装飾や上質な素材を贅沢に使ったアイテムの魅力を探しに、出かけてみませんか。

関連記事