デカ目、白肌、エモかわいい……スマホ時代にも生き残る「プリクラ」のサバイバル力と処世術

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デカ目、白肌、エモかわいい……スマホ時代にも生き残る「プリクラ」のサバイバル力と処世術

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伊藤美咲

フリーランスライター

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プリント倶楽部、通称プリクラが誕生してから25年。携帯電話が普及し、カメラ付き機種やスマホが当たり前になった2020年現在も、いまだ若者を中心に一定の人気を獲得し続けています。デジタル全盛の今、なぜ若者はプリクラを撮るのでしょうか?

国内シェア9割の企業の見解は?

 2020年10月、ゲームメーカー大手のセガ(品川区西品川)から約20年ぶりとなる最新プリ機が登場しました。

 また設置台数で国内シェア90%を誇るフリュー(渋谷区鶯谷町)は、渋谷・原宿をはじめ全国にプリントシール機専門店を構えているほか、10月27日(火)からは新機種も順次設置を開始しています。

※ ※ ※

 プリクラ。正式名称「プリント倶楽部」がアミューズメント施設などに初めて登場したのは1995(平成7)年7月のこと。

 当時は携帯電話やPHSが若者にまで浸透する以前。ましてやカメラ付き携帯電話などこの世に存在しない時代です。

 女子中高生を中心にプリクラ人気は一気に広まり、1997年には売上高1000億円を突破しました(日本アミューズメント産業協会調べ)。

 以降、上がり下がりも経ながら四半世紀が経過。2020年現在、スマホでの写真撮影が普及したことなどから、プリントシール(プリ)市場は200億円規模に落ち着いています。

 それでも前述の通り新機種は登場して続けていて、一定の需要や人気を保ち続けているのは確かなよう。

 デジタル全盛の今、それでも若者がプリを撮るのはなぜなのでしょうか? 現代のプリ事情について、フリュー広報担当の疋田裕貴(ひきた ゆき)さんに聞きました。

スマホとプリの魅力は全く別物

 20代前半の筆者も、学生時代にはよく友達とプリを撮っていましたが(1日に3回撮影なんてことも!)、最近は写真を撮るときもスマホアプリで済ませてしまうことが多くなりました。

 なにせ現代はスマホアプリの種類もたくさんあって、手軽に撮影から加工までできてしまいますから。

 それにも関わらず、なぜ若者はお金を払ってまでプリを撮るのでしょうか。

デジタル全盛時代にも根強い人気。若者がプリクラを撮り続ける理由とは?(画像:フリュー)



 疋田さんによると、今の若者世代はプリとスマホ撮影どちらが好きかと優劣を付けて考えるのではなく、どちらも好きでどちらも人気なのだそう。

 スマホはいつでもどこでも撮影できる手軽さが、プリは撮影時にブースの中で味わえる独特のワイワイした空気が思い出になる点が、それぞれ魅力なんだとか。

 スマホ撮影だと電子データのみですが、プリのシールとして思い出が形に残るのはデジタルネーティブ世代にとってもやはりうれしいことのようです。

今のトレンドは「エモ可愛い」

 最近よく耳にする「エモい」という言葉。「ノスタルジック」「懐かしい」などさまざまな意味で使われていますが、疋田さんは「見ることで背景を想像したりして感情が動くもの」という意味で捉えます。

 今回フリューから登場した新機種「午前0時のタイムリミット(ゼロリミ)」のテーマにも「エモ可愛(かわい)い」が採用されています。

フリューの新プリントシール機「午前0時のタイムリミット」(画像:伊藤美咲)



 同機では、澄んだ空気や明るい日差しを感じさせる「朝」と、静かな夜の街とそこに映える明かりをイメージした「夜」の2パターンでの撮影が可能。ふたつの異なるシチュエーションで「エモ可愛い」を表現しています。

 撮影サンプル画像を見てみると、これまでのプリの特徴だった「盛り」や「派手さ」は抑えめで、シンプルでナチュラルな雰囲気なのが印象的。

「午前0時のタイムリミット」という時間軸を感じるネーミングにも、確かに「エモさ」が込められているのを感じます。

地道な改良をいくつも重ねて

 高性能化するスマホのカメラ機能、多様化するレジャーや娯楽シーンといかに対峙していくか――。時代の変化とともにプリもさまざまな進化を遂げています。

 たとえば従来のプリ機は、撮影ブースの正面にカメラとライトがあり、背景となる壁は平面でした。一方「ゼロリミ」は、左前方に設置されたカメラを使って斜めの角度での撮影スタイルを採用しています。

フリューの新プリントシール機「午前0時のタイムリミット」のブース内(画像:伊藤美咲)



 こうすることによって奥行き感のある写真が撮影可能に。また広々とした空間なので大人数での撮影にも向いていると感じました。

 さらに改良点はこんなところにも。

 従来は撮影と落書きの後にシール印刷を待つ必要がありましたが、「ゼロリミ」は撮影後、

1.プリントアウトするシール専用の落書きをする
2.シールレイアウトを選択する
3.電子データ専用の落書きをする
4.ダウンロード用データを選択する

と、電子データ用の落書きをしている間にシール印刷をするフローに変えることで、シール印刷を待つ時間を解消しています。

 加えて落書きブース内でシールが受け取れる仕様や、プラス料金を払うことでシールの枚数を増やせる追加印刷機能も搭載。今までありそうでなかった便利機能が増えている! というのが筆者の率直な感想です。

時代時代のトレンドに合わせて進化

 フリューでは「ゼロリミ」のほか、理想の顔をかなえる「神比率分析機能」を搭載した「CAOLABO」や、人気キャラクターやアーティストとコラボした機種など、さまざまな機種を展開。女の子を飽きさせずに楽しませる工夫を常に行っているとのこと。

 こうして年々新しい機能が追加されたり、写りが良くなったりと進化しているプリントシール。

 プリの機能と若い世代の女の子のトレンドは連動していると、疋田さんは語ります。

 たとえば、歌手の浜崎あゆみさんに代表される“白ギャル”が圧倒的な支持を集めた2000(平成12)年頃には「美白機能」が流行。

 またデカ目メイクがブームになった2006年頃にはプリにも「デカ目機能」が搭載され、その後のAKB48などのアイドルブーム時には清楚っぽいナチュラルな写りが人気を集めました。

プリでのポーズも時代を反映。最近多いのは「きゅんです」という指ポーズ(画像:フリュー)



 スタンプ機能もその時代ごとのキーワードや流行に合ったデザインを取り入れていますし、言われてみればメイクやトレンドがプリの進化にも反映されていることが分かります。

 実際にフリューでは週に1回程度、女子高生から直接ヒアリングして生の声やトレンドをキャッチ・分析し、「1年後の未来」を予想しながら商品開発をしているそう。

 今後ますますスマホの撮影機能が進化しても、まだまだプリクラの需要が無くなることはないのだろうということを、プリクラの25年史が示唆しているように思われます。

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