「志村けん」だけじゃない 都内でたった2つしかない国宝建造物がある市「東村山」を巡る【連載】多摩は今(2)
2020年11月1日
お出かけ東京都の多摩地域北部に位置する東村山市は、コメディアン・志村けんさんのふるさととして知られていますが、魅力はそればかりではありません。まち探訪家の鳴海侑さんが解説します。
大規模な医療機関が集中するエリアも
新秋津駅を離れたバスは、武蔵野線の横に作られた道を南へ向かいます。車窓右下には掘割(地面を掘ってつくった場所)を走る武蔵野線が見え、ときどき研修用車両や作業用車両が停車しているところが見られます。
武蔵野線から離れていったん少し東へ向かうと車窓左手に森が広がります。ここはハンセン病の国立療養所・国立療養所多磨全生園(たまぜんしょうえん。東村山市青葉町)です。全生園の正門前で再び南へ向かうとまた車窓左手に森が広がり、東京都保健医療公社多摩北部医療センター(同)があります。他にも近辺には病院が多くあります。

このエリアは昔、東京都心に近い療養地として好まれていたため、大規模な医療機関が集中したのです。
医療機関があるエリアを抜けると低層の一軒家が目立つ多摩らしい住宅地の中を走り、久米川駅北口に到着します。
久米川駅から1駅で東村山駅に
久米川駅は西武新宿線の駅で、駅前にはビルが立ち並びます。駅周辺には大型スーパーや商店街もあり、買い物で訪れる人が多く見られます。
また西武新宿線を挟んで南北を結ぶ踏切は多くの人が行き交う姿も見られます。対して駅はホームこそ長いものの大きくはなく、ホームの後ろにビルが迫る風景が独特な駅です。

久米川駅から西武新宿線の所沢方面の電車に乗ると1駅で東村山駅です。東村山駅は西武新宿線と国分寺線、西武沿線が交わる駅です。
西武鉄道は国分寺から川越まで至る鉄道が起こりで、国分寺から東村山を結ぶ国分寺線は、実は西武の中で最初に開通した路線の一部です。
また、新宿線もはじめから西武新宿・高田馬場と川越を結んでいたわけではありません。東村山から川越市駅間は西武でもはじめに開業した路線で、西武新宿から東村山までの区間は開業時「西武村山線」と呼ばれていました。
西口から徒歩10分で現れる国宝建造物
そんな西武鉄道の歴史が感じられる東村山駅を降り、東口へ向かうと「志村けんの木」として3本のケヤキがあります。10月末まで、この木の横に志村けんさんの銅像を建てようというクラウドファンディングが行われていました。
また、駅の東口にはイトーヨーカドー東村山店(東村山市本町)、西口には再開発ビルのワンズプラザがありますが、駅周辺のにぎわいでは久米川の方がにぎわっているように感じます。
ところで、東村山には東京都内でふたつしかない国宝の建造物があります。それが東村山駅西口から10分ほど歩いたところにある正福寺地蔵堂(同市野口町)です。

駅西口から西へ延びる通りを進み、JA東京みらい東村山支店の先を右に曲がった正面にあります。右折するところに東村山市が作った小さな案内看板はありますが、国宝という重要な文化財としてはかなり注目度の低いものといえそうです。東京都にもうひとつある国宝建造物・迎賓館(港区元赤坂)とは対照的です。
しかしながら、実際に建物を見ると、小さいながらも立派な作りです。鎌倉幕府第8代執権の北条時宗にゆかりのあるお寺で、地蔵堂は室町時代に建立された禅宗様(ぜんしゅうよう)建築です。
外観はいつでも見られますが、内部が公開されるのは年3回のみなので、それに合わせて訪れてもいいでしょう。

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