一見、無気力だが実は革命的――70年代を駆け抜けた女優「秋吉久美子」とは何だったのか

1972年のデビュー以来、第一線で活躍を続ける女優・秋吉久美子。そんな彼女の魅力について、9月刊行『秋吉久美子 調書』から作家の中川右介さんが読み解きます。


3部作には70年代の東京が冷凍保存されている

 3部作は、いずれも製作当時の「現在の東京」を舞台にしています。そこで暮らす貧しい男女が主人公なので東京観光をするわけではなく、名所旧跡のシーンはありません。

 最初の『赤ちょうちん』で秋吉久美子が演じるのは、熊本出身の17歳。スーパーのレジ係をして働いていました。

DVD『赤ちょうちん』(画像:日活)

 彼女は青年と出会い、彼の住む古いアパートに一緒に暮らし、妊娠し、結婚します。そしてふたりは、そのたびに引っ越します。少しずつ広い部屋にはなるのですが、引っ越しばかりしているので貯金ができず、貧しいまま。

 何度も引っ越すので、映画には当時の東京各地がフィルムには焼き付けられています。『妹』は地下鉄東西線の早稲田駅から物語が始まります。終電でこの駅に来たのが秋吉久美子で、彼女の実家が早稲田にあり、兄が暮らしているという設定。

 最後の『バージンブルース』の秋吉久美子は岡山出身の予備校生で、寮に暮らしています。3部作のなかでは、一番経済的には恵まれているのですが、ストレス解消のイタズラとして、寮生たちと集団万引をして、それが発覚。そのため寮に帰れなくなり、岡山へ帰ります。

 映画のなかで秋吉久美子が暮らしているのは、どこも近代的・都会的なマンションではありませんし、彼女が出会う人たちも、ほとんどが貧しい人たち。なかには犯罪スレスレのことをしている人もいます。

 藤田監督には「1970年代なかばの、華やかではない東京を記録しよう」という意図はなかったでしょうが、半世紀近くが過ぎたいま、これらの映画を改めて見ると、当時の東京のもうひとつの顔――「貧しさ」「暗さ」「暴力」が冷凍保存されているのです。

 では、福島で暮らしていた秋吉久美子にとって、東京とはどんなものだったのでしょう。叔母が高円寺に住んでいたので、子ども時代から家族と東京へ来ていました。

「数寄屋橋の不二家などで食事したりはしてました。ペコちゃんのカラフルな看板が思い出されます。その頃から、銀座なんかに来るとやっぱり自分の居場所はここかなあとは思っていました」

 しかし彼女自身の思いとは別として、秋吉久美子は華やかな銀座とは対極の下町や郊外で、何を考えているのか分からない、希望も絶望もない、少女なのか大人の女なのかも分からない、とらえどころのないキャラクターとして登場したのです。

 そういう分析不可能な人物が生きていけるのは、他人のことを気にしない大都会しかありません。ですから、3部作の舞台は東京以外には考えられず、その意味において、秋吉久美子は紛れもなく、「1970年代なかばの東京の女」だったのです。

「シラケ世代」「元祖プッツン女優」と呼ばれて


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