居場所が欲しい……27歳フリーター男性が「俺はさびしがり屋なの!」と連呼する理由

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居場所が欲しい……27歳フリーター男性が「俺はさびしがり屋なの!」と連呼する理由

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いしいまき

漫画家、イラストレーター

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約1400万人もの人が住んでいるのに、ほとんど交わることのない東京は「孤独」を感じやすい街といえるでしょう。たったひとり暮らす大都会で、どうすれば自分の居場所を見つけられるのか。漫画家でイラストレーターのいしいまきさんが「脱ひとりぼっち」の方法を模索します。

「人と話したい」ツイキャスにハマる

 ひとりでいるのが嫌ならば、「自分はさみしがり屋なんだとオープンにすること」。その方が居場所が手に入りやすいと、彼は言います。

※ ※ ※

 今回わたし(いしいまき。イラストレーター、漫画家)がお話を聞いたのは、東京近郊に住む27歳フリーターの男性。練馬区内にあるイベントバー(誰でも「1日店長」ができるバー)で知り合いました。

 なぜ彼に話を聞きたかったかというと、知り合いの中でも「ツイキャス」(個人でできるラジオ)の配信を一番多くやっているからです。

 毎回ゲストを読んでトークしたり、仲のいい人とコラボして配信したりしています。その数すでに300回以上。驚異的な数字です。

 彼はイベントバーでときどきイベントを開催しているので、そこで知り合った人やネットで見つけた面白そうな方に声をかけているようです。彼ならリアルでもネット上でも自分の居場所の作り方を知っていると思いました。

 それにしても、どうしてこんなにも多くの回数ツイキャスをしているのでしょうか。

 本人いわく「人と話すのが楽しい。趣味だから」。

 誰かとコラボ配信するときはだいたい60分(ツイキャスは1枠30分なので2枠)。

「だって自分と考え方も生き方も違う人と60分がっつりしゃべるのってなかなかない経験じゃないですか!」

 なるほど、確かに!

良い大学に入ったけれど……

「俺はひとりでしゃべるのは苦手なんですけど、誰かを呼んでしゃべるのは好きなんですよね」

「毎回あまり知らないけど気になる人を呼ぶのは新鮮で楽しい。でも仲のいい友達とのコラボキャスも番組みたいにおなじみのネタができたり、次回に続く話題もあったりして、それぞれ違った楽しさがあります」

「ツイキャスにはコメント機能もあるので、聞いてくれる人がコメントをくれるのも楽しいですね。それで話が盛り上がったりもするし」

とのこと。

「ツイキャス」を通じてさまざまな人と交流を図る男性(いしいまきさん制作)



 わたしもときどき彼のツイキャスを聞いていますが、ことあるごとに「俺はさみしがり屋なの!」と言います。

 男性が自ら「さみしがり屋」というのは珍しいなと思うのですが、

「俺、ひとりでいるのがだめなんですよね。ひとり暮らしなんて絶対無理(現在はお祖母さんとふたり暮らし)。もっと年を取ってひとりになりそうになっても近所のじいさんと仲良くしてひとりにならない自信があります(笑)」

と屈託なく話してくれます。

 彼は現在フリーター。

「もともと勉強は得意で、大学もよいところに入ったんですよ」

 でも、複雑な家庭環境や失恋が原因でうつ病に。その後うつのまま就職活動もしましたが、内定をもらった先が今の家より遠く、入社して働くにはひとり暮らしをする必要がありました。

「想像しただけでパニックになって、辞退してしまいました。家業に関係した仕事をすることも考えましたがうまくいかず、今はフリーターをやっています」

誰かの「さびしい」に寄り添える力

「バイトはお金も人間関係も手に入るので居場所のひとつです」「空いた時間に好きなツイキャスもできますし」と、今の生活に納得している様子。

「ひとりでいるのが無理、さみしがり屋」だとはっきり言いきる彼。今ではその性格を知った人が周りに集まっているように見受けられます。

「さみしいときすぐ人にラインしちゃうんですよ(笑)。いつでもラインできる人を何人か作っています」

 そんな彼の友人からも話を聞くと、

「俺が困っているときにも絶妙なタイミングでラインくれるんですよね~。マジでこんなに分かってくれてる人はいないっす」

 さみしがり屋の人は、ほかの人が困っていたりさみしがっていることもわかるのかもしれません。

彼にならって、筆者もツイキャスに挑戦(いしいまきさん制作)



 そんな彼にならって実はわたしもツイキャスをしていたことがあります。

 最初はひとりでしゃべるなんて恥ずかしいなという壁があったのですが、何回もやっていくとリラックスしてきます。彼が言っていた通り、配信を聞いている人がコメントをくれることもあるので、孤独感は感じません。

 ラジオのパーソナリティーになった気分で好きな漫画の話や今ハマっているものを自由に話すのは、なかなか楽しいもの。彼がハマるのもなるほどなあとうなずけます。

 無料で自宅でできるので、テレビ会議システムのZoomのようにコロナ禍でも楽しめる趣味だと言えるでしょう。

自分を少しだけオープンにすること

 彼はツイキャスの他にも、イベントバーで1日店長を務め、イベントを開催しています。

「ごはんのお供を探すバー」と題して、ご飯のお供(お総菜などのおかず)を持参した人はチャージ0円にする企画や、「就活しんどいバー」で彼自身が相手に100円払って就活のアドバイスをしてみるなど、ユニークな居場所作りをしているようです。

 また、そこからツイキャスのゲストに来てもらって一緒にしゃべり、交友を深めることができるわけですね。

※ ※ ※

「さみしがり屋」というのはネガティブなイメージかもしれませんが、言い換えると「誰かと一緒にいたい」ということです。

 その思いがこうやって行動につながっているのだとしたら「さみしがり屋」だと自覚して気軽に発信することは、居場所を見つけるためにもなかなか有効な手段なのではないでしょうか。

 とかく男性は自分の弱さを吐露するのが苦手だと聞きます。そのような人も少しだけ自分をオープンにすることで、ぐんと居場所が広がるかもしれません。

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