いまや「韓国 = おしゃれ」イメージが定着 平成「ヨン様ブーム」と令和ブームの決定的違いとは

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いまや「韓国 = おしゃれ」イメージが定着 平成「ヨン様ブーム」と令和ブームの決定的違いとは

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伊藤美咲

フリーランスライター

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2000年代以降、定期的に訪れる日本での「韓流ブーム」。しかし2003年の第1次、2010年頃の第2次ブームと2020年現在には決定的な違いがあると、フリーランスライターの伊藤美咲さんは指摘します。その理由を具体的に見ていきましょう。

着実に“領域”を拡大する韓流ブーム

 韓国ドラマや韓国コスメ、韓国発のアイドルグループが流行している2020年現在、日本は「第3次韓流ブーム」真っただ中だと言われています。

 今の韓流ブームについて考察するために、まずはこれまでのブームを振り返ってみたいと思います。

中高年女性を熱狂させた「ヨン様」

 はじめに起こった第1次韓流ブームは2003(平成15)年。ドラマ『冬のソナタ』の主役を務めた俳優ぺ・ヨンジュンが中高年女性に爆発的人気を集め、大流行しました。いわゆる「ヨン様ブーム」です。

 ただこのブームは、今振り返れば限定的なものだったと言えるかもしれません。

 ジャンルは主にドラマや映画。また熱狂したのは中高年層の女性が中心で、当時小学生だった筆者たち世代からすると韓国ドラマは「上の世代がハマるもの」というイメージが一般的でした。

 続いて訪れた第2次韓流ブームは2010(同22)年ごろ。このとき注目を集めたのは少女時代やKARA、東方神起などのK-POPアイドルです。メディアへの露出も格段に増え、年末恒例のNHK紅白歌合戦にも相次いで初出場を果たすほどでした。

 筆者は当時高校生。はやっているという認識はもちろんありましたが、周りの友達がみんな聴いているというほどの広がりはまだなく「韓国好きな子が特にハマっている」という印象にとどまっていました。

 つまり、第1次・第2次ブームにおいては、中高年層といった特定世代の熱狂や限られたファン、マスメディア側の盛り立てが先行し、流行に最も敏感とされる若い女性たちにあまねくリーチするほどには至っていなかったというのが筆者の実感です。

 そして、第3次ブーム真っただ中の2020年現在です。

第1次・2次ブームが成し得なかったこと

 第1次・第2次ブームとの共通点はまず、SeventeenやITZYといったK-POPグループや、TWICEやIZ*ONE(アイズワン)といった日韓アイドルグループが人気を集めていること。最近ではNiziUの話題も毎日のように目にします。

 またドラマ『愛の不時着』は、動画配信サービスNetflixで長期にわたって首位をキープし続け、日本はもちろん世界中で大ヒットしたことも記憶に新しいでしょう。ほかにも『梨泰院クラス』や『サイコだけど大丈夫』など、さまざまな作品が注目を集めています。

 こうして韓流ブームの系譜を振り返ってみると、一見、およそ10年のサイクルで定期的に韓国の芸能人が日本でも人気になっていると捉えられるかもしれません。

 しかし第3次韓流ブーム最大の特徴は、芸能系のエンタメに限らず、グルメやコスメ、ファッションなどのカルチャーまでもが日本で流行していることです。

2003年「ヨン様ブーム」から、2020年「NiziU」ブームまで。定期的に訪れる韓流ブームの特徴とは(画像:BS12 トゥエルビ、レコチョク)



 たとえば、特別韓国好きというわけではなかった筆者や周りの友人たちも、韓国ドラマの話題をたびたび聞くようになっただけでなく「韓国ファッション」「韓国コスメ」といったワードをSNSで頻繁に目にするようになりました。

 これほどの広がりを成功させた背景にはもちろん、韓国カルチャーが第1次・第2次ブームをへる中で日本での素地を着実に耕してきたという実績もあるでしょう。

 しかし成功の理由はほかにもあるようです。

 なぜこんなにも韓国カルチャーが日本に浸透しているのかと言えば、やはりSNSを中心としたネットの隆盛が最大の要因だと筆者は考えます。

写真映えの良さが強みのひとつ

 ご覧いただければ分かるように、韓国カルチャーはコスメ、グルメ、インテリアなど、どのジャンルをとっても写真映えに力を入れたプロダクトが多いのが特徴。カワイイもの好きの若い女性たちの目に留まり、ゆえにSNS投稿数も増えるのは自然な流れです。

 実際にInstagramのハッシュタグ検索をしてみると、「#韓国ファッション」は375万投稿、「#韓国コスメ」は210万投稿あります。さらにメディアでも「東京にある韓国っぽいカフェまとめ」や「韓国っぽいインテリア」といった記事が多数取り上げられています。

 もはや「韓国っぽい」=「おしゃれ」という認識になっているというのが、20代前半の筆者が感じる現状です。

かわいくて華やか。若い女性の人気を集める韓国コスメブランドのひとつ「ETUDE HOUSE」(画像:ETUDE HOUSE)



 先述した通り、第2次ブームまでは「韓国好きのため(だけ)の韓流ブーム」という側面がありました。

 しかし今は、特別韓国が好きという女性でなくても「韓国コスメブランドの〇〇が良いとSNSで見たから買う」という感覚が当たり前になっています。実際、筆者自身や周りの友人たちも、ひとつやふたつは必ず韓国コスメを持っています。

 筆者が小学生の頃に抱いていた「韓国ドラマ好き = 中年女性」という印象もすっかり消え去り、今となっては10代の学生から20~30代の働く女性たち、40代以上の主婦層など、幅広い世代から注目されるコンテンツに変貌を遂げました。

 これは、SNSと並んで拡大し続けているNetflixなどの動画配信サービスの影響によるところが大きいでしょう。

新大久保を飛び出した韓国カルチャー

 日本の中の韓国カルチャー発信地といえば、ご存じ東京・新大久保。

 韓国アイドルグッズや韓国コスメショップ、韓国料理屋などが並ぶコリアンタウンで、いつ訪れても賑わっている印象です。

 新大久保 = 韓国というイメージは昔も今も変わりませんが、最近では韓国カルチャーの人気拡大により、他の街にも広がりを見せています。

 東京ならどの街に行っても1か所くらいは韓国料理屋がありますし、特に若者が集まる渋谷や原宿といった街では、韓国コスメを取り扱っている店も増えてきました。

原宿で人気の韓国カフェ「MUUN SEOUL」のInstagram投稿画像(画像:muun_seoul)



 大型ショッピング施設への入居はもちろん、原宿・竹下通りを歩けば1ブランドが単独で店舗を構える路面店をいくつも見つけることができます。

 これまでは特定の人にだけ人気だった韓国カルチャーは、ジャンルや世代を超えてその“領域”を着実に拡大し、今や「はやっている」というより、ひとつの定番となっているのです。

 まだまだ人気の衰える気配のない韓国カルチャー。日本でも注目を集めるジャンルは、今後ますます増えていくのはないでしょうか。

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