現「AKB48劇場」近くにたった3年だけ存在した秋葉原に似合わない施設の正体
2020年9月19日
知る!TOKYOサブカルの聖地として、国内外の多く人が訪れる秋葉原。そんな秋葉原にかつて同地には一見不釣り合いな施設がありました。ライターの橘真一さんが解説します。
オーナーが集めたダリ作品
ミナミ無線電機の創業一族は、家電量販店以外にもホテル、ゴルフ場、スキー場などのレジャー施設の経営も手掛けていました。
多角経営の成功者だった社長の南学正夫(なんがく まさお)氏はまた、サルバドール・ダリ作品の収集家でもありました。
そして、そのコレクションを一般公開するべく、1986年9月にオープンさせたのが「ミナミ美術館」です。場所は「ミナミ電気館秋葉原本店」の7階。家電量販店の上で「ダリ 愛の宝飾展」なるタイトルでダリ作品が常設展示されていたのです。

メインとして展示されていたのは、「ポルト・リガトの聖母」という1950年の絵画で、ほかはタイトルの通りに、「時間の眼」(1949年)、「宇宙象」(1961年)といった宝飾品がほとんどでした。
ダリは日本でも人気の高い作家であり、「ミナミ美術館」には普段、電気街に縁のない人も足を運ぶことになります。
しかし、電気街のど真ん中に美術館があったのはわずか3年ほどでした。この美術館は、1989(平成元)年に新宿に移転。「ミナミ宝飾美術館」と改称。その後はさらに、「ダリ宝飾美術館」として神奈川県の鎌倉駅前に移っています。
展示場所の真上がアイドルの聖地に
ミナミ無線電機を含む“アキバ系”家電量販店の多くは、現在の秋葉原に存在しません。
これは、バブル崩壊による家電の販売不振、安売り競争激化による疲弊、多角経営化による資金繰りの悪化などが理由として考えられます。1990年代になりと各店がパソコン販売に活路を見いだす傾向もありましたが、それも長く続きませんでした。
そして、秋葉原に世界初の常設型メイド喫茶が誕生した2001(平成13)年あたりから、バタバタと業界の再編が発生。経営破綻、家電販売事業から撤退、他社との吸収合併などが続くのです。
今でも、昔からの法人、スタイルで残っているのは、堅実経営だったオノデンのみといっていいでしょう。
ミナミ電気館秋葉原本店も他社同様に持ちこたえられず2002年に閉店。鎌倉の「ダリ宝飾美術館」もそれ以前に閉館しています。
その後、 同社ビルは「ラオックス」によるゲームやアニメ関連商品を専門で取り扱う店舗「アソビットシティ」の時期を経て、ミナミ無線電機による売却後の2003年の夏から「ドン・キホーテ秋葉原店」が入居。そして、2005年12月よりその最上階(8階)にオープンしたのが「AKB48劇場」でした。

かつてダリの作品が展示されていたフロアの真上が、あの未曽有のアイドルブームの中心地となったのです。
なお、「ミナミ美術館」のメイン展示物だった「ポルト・リガトの聖母」は現在、福岡県の福岡市美術館に所蔵されています。

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