「まずは飲んでみる」のがコツ! 銀座の専門店に聞く、煎茶の個性をもっと楽しむ方法

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「まずは飲んでみる」のがコツ! 銀座の専門店に聞く、煎茶の個性をもっと楽しむ方法

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日本で多く作られ、飲まれている「煎茶」。知っているようで知らなかった、その奥深い世界を楽しむコツを「煎茶堂東京」に聞きました。

煎茶には、生産者ごと、農園ごとに「個性」がある

 食卓で、食堂で、会議のお供に。何気なく飲む機会が多い「煎茶」。

 ペットボトルのお茶がすっかり身近となった一方で、急須で煎茶を淹(い)れたとき、立ち込めてくる穏やかな香りやその味わいに、心癒される人も多いのではないでしょうか。

古くから、日本人に親しまれてきた「煎茶」(画像:写真AC)



 出回っている煎茶の多くは、異なる生産者によって作られた、複数の茶葉を合組(ブレンド)したものだといいます。

合組(ブレンド)は、品質や価格を安定させるために必要な工程だという。画像はイメージ(画像:写真AC)

 ですが実は煎茶は、生産者ごと、農園ごとに個性があり、たとえ同じ地域で作られていても、近くの農園で作られたもの同士でも、同じものにはならないのだとか。

 そんな、煎茶ごとの個性を楽しめる専門店が銀座にあります。名前は「煎茶堂東京」。「シングルオリジン」と呼ばれる、単一農園、単一品種ごとの煎茶を取り扱っています。

「煎茶堂東京」銀座店の内観(2018年9月、高橋亜矢子撮影)
スタイリッシュなパッケージが並ぶ(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

 徹底的に「生産者」をフォーカスする同店。品質にこだわり、その背景にあるストーリーなどを大事にしながら茶葉を選定しています。

茶葉の脇には、茶葉についての説明や味のチャート表が(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

 生産者や背景にこだわる――。極端にいうならば、日本酒やワインを楽しむように、煎茶を楽しむことができるのでしょうか。未知の世界への扉に心が躍ります。

「まずは飲んでみて、自分が好きと感じるものを選べばいい」

 ですがひとつ不安がありました。日本酒やワインの世界は、初心者目線だと、難解に感じることがあります。それと同様に、煎茶も難しいのでしょうか。味の違いや、どれが自分に合うかを感知することは、初心者でも可能なのでしょうか……?

色味豊かなパッケージ。ぱっと目に入るだけでも、かなりの種類がある(2018年9月、高橋亜矢子撮影)



「まず、飲んでみることです」

 ズバッと単刀直入に答えてくれたのは店長の李(り)さん。

「店内の全てのお茶に、味の目安が記されていますが、まずは口に含んでみて、自分がどう感じるかを確認するのが大切です。複数の種類を飲み比べるうちに、どの味わいが好みか、傾向が見えてくるはずです」(李さん)

店内には、日替わりで常時6種類の試飲用水出し煎茶がスタンバイ。飲み比べできるようになっている(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

 煎茶の味わいを形成する主な要素は「渋味」「甘味」「香り」「旨味」。その強弱をしめすフローチャートも作られていますが「感じ方には個人差がある」と李さん。

「渋味」「甘味」「香り」「旨味」の強弱を示すフローチャート(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

「たとえば、激辛の食べ物を、ものともせずにぱくぱく食べる人もいれば、ほんの少し食べただけでも『もう無理だ……』となる人がいます。それと同様に、お茶の『渋味』も、人によって感じ方が異なるものです」(李さん)

 だからこそ、飲まないとわからない。

 まずは、難しく考えずに、体感することから始めるのが良いという回答を聞きながら、「難しく考えずに、気楽に楽しめば良いのかも!」と心が軽くなるのを感じました。

「シャキッと目覚めたい朝には、コーヒーのような煎茶を」

 どんな味が好みかだけでなく、「どういうシチュエーションで飲みたいか」から、考えていくのもアリだといいます。

 たとえば平日の朝、シャキッと目覚めたいのであれば、コーヒーのように飲めるカフェインが強いものがおすすめだと李さん。

「019 いなぐち」(50g 1900円)を淹れてもらった(2018年9月、高橋亜矢子撮影、ULM編集部で加工)



 飲んでみたところ、苦味がキリッ。直球です。その衝撃で心なしか目がバチっと開いたように感じられます。

 ただ、休日の朝には、もうちょっと穏やかなものが飲みたいかもしれません……。そんなわがままなオーダーに対し、「比較的苦味が少なめで、香りがしっかりしているものなどはいかがでしょう」と李さんが差し出してくれたのは、「002 KOUSHUN 香駿」という煎茶。

「002 KOUSHUN 香駿」(50g 2400円)は優しい味わい(2018年9月、高橋亜矢子撮影、ULM編集部で加工)

 飲んでみると確かに。先ほどのような激しい苦味はなく、優しさに溢れています。「喉に香りが抜けていきませんか?」と李さん。えっ、喉に香りが……?

 言われてはじめて「そうか、この喉をスースーと抜けていく『何か』の正体は香りだったのか!」と気が付く筆者。あらためて、喉周辺に意識を集中させながら飲んでみると、すうっと、香りの余韻を実感できました。

煎茶は、洋食や洋菓子と合わせることもできる

 煎茶というと「和」の印象が強いですが、洋食に合わせることも可能といいます。「お茶の味がすっきりし過ぎていると、料理の味に負けてしまうので、コクのあるお茶のほうが合うと思います」と李さん。

「コクがあるお茶」として淹れてもらった「027 CA278 シーエーニーナナハチ」(50g 2200円)。2018年12月現在はソールドアウト(2018年9月、高橋亜矢子撮影、ULM編集部で加工)

「そうか、お茶にもコクが存在するのか……」と思いつつ飲んでみると、煎茶が「わたし、ここにいます!」としっかり主張しているのを感じました。確かに、これならば他の強い風味と混ざっても負けない味わい。

「コクがありながらも、口の中をすっきりさせてくれるので、お肉料理のような、しっかり味のあるものと合わせてもよいと思います。バターの味が強いお菓子と合わせたときも、相性が良かったです」(李さん)

貴腐ワインレーズン(70g 1080円)。このような洋風のお菓子と相性の良い煎茶もある(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

同じ茶葉でも、水出しかお湯かで抽出成分や味が変わる

 ところで、煎茶にはカフェインが含まれますが、寝る前に飲みたい場合にはどうすれば良いでしょうか。そんな難解なオーダーにも「そうですね……。カフェインが抽出されにくい方法を選んで、淹れるのが良いかもしれません」と李さん。

 煎茶は、淹れ方によって「抽出される成分」が異なるといいます。抽出される成分とは「カテキン」「カフェイン」「アミノ酸」の3種類。

 熱いお湯で淹れた時に抽出されやすいのは「カテキン」と「カフェイン」。水出しだと「アミノ酸」です。そのため、カフェインをあまり摂取したくない場合には、水出しで淹れるのがおすすめとのこと。

温かいお茶が飲みたい場合には、一度水出しした煎茶を温めればOK(画像:LUCY ALTER DESIGN)



 水出しは、ボトルに、水、茶葉の順で入れ、冷蔵庫に3時間以上置いておくと出来上がります。抽出にかける時間は、おおよそ3~8時間くらいが良いとのこと。

 なお、大まかにいうと「カテキン」「カフェイン」は渋味と苦味を、「アミノ酸」は旨味と甘味を生成する成分です。つまり同じ茶葉でも、淹れ方を変えれば、異なる味わいが楽しめるというわけです。

温度によって抽出される成分が変わる(画像:ULM編集部作成)

一煎ごと、全部異なる味。煎茶から玄米茶に変貌する新提案も

 さらにお湯で作る場合、一煎目、二煎目……と淹れるごと、味に変化が起こります。

 同店では、美味しく味わうための「基本レシピ」として、一煎目は70度のお湯を入れ、1分20秒待機。茶葉が開いた状態の二煎目は、80度のお湯を入れ、5秒で淹れることを推奨しています。

4gの茶葉当たり120ミリリットルのお湯を注ぐという(2018年9月、高橋亜矢子撮影)



1分20秒、置いておく(2018年9月、高橋亜矢子撮影)
そして淹れる。急須は「煎茶堂東京」を運営するLUCY ALTER DESIGN(渋谷区)がデザインした「透明急須」(3500円)。手間なく、ひとり分が淹れられるという(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

 ひとつ疑問が浮かびました。沸騰したお湯(約100度)は、どうすれば70度になるのでしょうか。「1リットルの沸騰したお湯に、キューブ状の氷3つを入れると、おおよそ10度下がります。つまり70度にしたい場合には、氷を9個入れるかたちですね」と李さん。

 さらに同店では「三煎目の淹れ方」として、茶葉の上に玄米を「あとのせ」して、玄米茶にする方法を提案しています。

同店で販売している、三煎目用の玄米「にこまる玄米」(50g 380円)(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

 一、二煎目までで、煎茶の味わいをしっかりと感じ取ったところで、別の角度から迫ってくる玄米の香ばしさ。ひとつの茶葉から、新しい出会いが何度も起こります。

玄米の量はティースプーン2杯くらいが目安という(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

 興味深い見解もありました。

「煎茶は、淹れるまでに時間を要します。この時間を『待つ時間』と考えるのではなく、『お茶を味わう時間の一部』として、楽しめると良いと思うのです」(李さん)

 煎茶を楽しむことと、穏やかに生活を楽しむことは、強靭に結びついているのかもしれません。

お茶の生産量、1位は静岡。……2位は?

 ところで、日本で1番お茶の生産量が多いのは静岡県ですが、2番目はどこだかご存知でしょうか。

茶畑。画像はイメージ(画像:写真AC)

 鹿児島県なんだそうです。意外に感じた人もいるかもしれません。

同店には、少量が入ったお試し用の茶葉も販売されている(20g×5袋 2100円)(2018年9月、高橋亜矢子撮影)

 身近でありながら、まだまだ知らないことも盛りだくさんな煎茶の世界。その味わい深く広大な道のりをあともう一歩、進めてみるのはいかがでしょうか。

●「煎茶堂東京」銀座店
・住所:東京都中央区銀座5-10-10
・アクセス:各線「銀座駅」A5出口から徒歩2分
・営業時間:11:00~19:00
・定休日:なし(年末年始・お盆を除く)

●「煎茶堂東京」エストネーション銀座店(2018年8月24日から1年限定でオープン)
・住所:東京都中央区銀座2-3-6 銀座並木通りビル2階
・アクセス:各線「銀座駅」A13、B10出口から徒歩約3分、有楽町線「銀座一丁目駅」4番出口から徒歩約2分
・営業時間:11:00~20:00
・定休日:不定休

●煎茶の美味しい淹れ方・レシピ
・URL:https://greenbrewing.jp/recipe

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