オーナーもスタッフも、誰も「猫の出自」を知らない猫カフェが目黒にオープン いったいなぜ?【連載】猫カフェを訪ねて(2)
2020年8月28日
お出かけ愛くるしい猫、やんちゃな猫、怖がりの猫、泰然自若として仙人のような猫。どんな猫にも、生まれ育ちの物語がある――。猫好きによる、猫好きのための連載「猫カフェを訪ねて」。第2回は真っ白な空間で暮らす猫と人間の物語です。
ほかの猫カフェと何かがちょっとだけ違う店
言われてみるとnecomaは少し、ほかの猫カフェとは違います。
まず一番の特徴である真っ白な内装。これは、デザイナーとして経験を積んだ夫婦ふたりが「猫自身の魅力が際立つように」と考えたアイデアなのだそう。
それから、最寄り駅から徒歩12分という立地。
東京では駅前の雑居ビルなどに店を構える猫カフェも増え、「ちょっと時間が余っちゃったし猫カフェでも寄っていこっか?」なんて利用のされ方も広まる中で、ここに来る客は皆、この店を真っすぐ目指して住宅街を歩きます。
「とはいえ周りにはバス停がいくつもありますし、シェア自転車も置いていますから、どうぞ気軽にお越しいただけたら」とふたり。
そしてもうひとつ、猫たちがここに来る以前、つまりリトルキャッツに保護される以前に、どこでどんな風に過ごしてきたのかを、運営者たちも誰も「知らない」という点です。
猫がなぜここへ来たのかは知らなくてもいい
猫たちの出自についてふたりは、あえてリトルキャッツから聞き出すことはしません。
冷たい路上に生まれたのか、ペットショップで売れ残ったのか、元の飼い主が手放したのか――。どんな事情があったかは「その猫の価値を何ひとつ左右しない」(小栗さん)からです。
飼い猫も野良猫も捨て猫も保護猫も、人間が勝手にそう呼んでいるだけで、みんな同じ猫。
「かわいそう」でも「けなげ」でもない、ただ猫として魅力的な猫たちが、この場所で丸くなったり長く伸びたりふんぞり返ったりしながら、それぞれ自由に過ごしています。

近年、消費者の購買行動にすっかり定着した「ストーリー消費」という考え方があります。
例えば、本来捨てるはずだった廃材から作られた環境配慮型のアクセサリーや、地方のお年寄りたちが丹精込めて育てた農産物で作る数量限定のお菓子。
背景に物語性や社会的意義を感じさせてくれる商品はもちろん魅力的だし、受け取り手の満足度や使命感を高めてもくれます。けれど、こと生き物の命に限っては、どんな付加価値も付加情報も要らないのではないか――。
necomaの真っ白な空間は、小栗さんとスズキさんのそんな思いもまた体現しているように思えます。
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