もはや都会派アイテム? 人気アニメとも近年コラボ「スーパーカブ」の魅力とは

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もはや都会派アイテム? 人気アニメとも近年コラボ「スーパーカブ」の魅力とは

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大居候

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出前や新聞配達のオートバイとしておなじみのホンダ「スーパーカブ」。そんなスーパーカブについて、フリーライターの大居候さんが解説します。

シェアサイクルの落とし穴

 自転車が「都心の移動手段」として目立つようになったのは、2011年に発生した東日本大震災の頃からです。その背景には「帰宅難民」の存在がありました。

 そこで現在注目されているのが、シェアサイクルです。格安で借りられる電動自転車として人気が高まり、都内のサイクルポート(自転車置き場)も増えています。

 ただ、シェアサイクルに難点がないわけではありません。というのも、利用者の急増で車体のケアが追いついていないのです。

 利用者が多いエリアではバッテリー切れの車体がよく放置されていますし、筆者(大居候。フリーライター)が実際に利用して調べたときは、ブレーキが利かなくなっている車体も多数ありました。

 もちろんシェアサイクルの貸出時間内には対人・対物の賠償保険が付いていますが、一抹の不安は残ります。

 また不特定多数の人たちが使うことから、現在はウイルスの感染リスクもゼロとは言えません。

新型コロナで原付の人気再燃

 そんななか、新型コロナによって売り上げが上昇しているのがオートバイです。

 近年、国内のオートバイ市場は縮小傾向にありましたが、2020年の3月は前年同月比7.3%増の3万6800台になるなど、人気が再燃しています。売れ筋は51~125ccまでの「原付(原動機付自転車)二種」のようです。

 そんな原付の世界でさんぜんと輝いているのが、ホンダの「スーパーカブ」です。

スーパーカブ110(画像:本田技研工業)



 スーパーカブは、日本人にとって単なるロングセラー商品を超えた製品と言えるでしょう。

燃費は「4lで500km以上」

 1958(昭和33)年の発売以来、スーパーカブは白いプラスチックの泥よけと武骨な荷台で、流行に左右されない定番商品として知られてきました。

 戦後復興期だった日本において実用的で安く、燃費も掛からずに、女性が未舗装の道を手軽に運転できることなどを目標に開発されました。

 単純化された構造は、「いじるところがほとんどない」と言われるほど洗練されており、それゆえ消耗パーツだけを交換していれば40年持つとされています。

 なにより燃費が「4lで500km以上」と財布にとても優しいこともあり、デビュー以来、移動が多い職種の定番アイテムとなってきました。

出前用のスーパーカブ(画像:写真AC)

 岡持ちを積んだそば屋の出前、荷台を金属製ラックに改造した金融機関の営業マン、それに新聞配達員などが、特に愛用しているイメージでしょうか。

1990年代前半にブーム

 ある意味「ガテン系な乗り物」として見られてきたスーパーカブですが、一方、都会の暮らしに便利な原付として、若者から何度も注目を集めてきました。

 というのも、スタンダードなラインアップ以外にも、時代に併せた派生モデルに果敢に挑戦してきたからです。

近年では「少女×バイク」がテーマの青春物語ライトノベル『スーパーカブ』も登場(画像:KADOKAWA)



 例えば、1990年代前半のブームもそうでした。

 バブル景気の時代には、若者たちの間ではクルマを持つのがひとつのステータスでした。

 しかしバブル景気がはじけて不況の時代に突入すると、この流れは変わります。見栄でクルマを持つよりも、実用性の高い原付の需要が高まったのです。

 これを受けて1996(平成8)年には「カブラシリーズ」がリリースされています。

 これは、サイドカバーなどスーパーカブの外装をカスタムできるもので、武骨なスーパーカブとは同じとは思えない「変身」ができることで話題を呼びました。

アニメ映画『天気の子』ともコラボ

 こうした挑戦は、スーパーカブの販売当初から続いています。

 例えば、1962(昭和37)年に登場した「ポートカブC240」は、ヨーロッパ輸出向けに開発されたものですが、そのコンセプトは

「世界のどの港(ポート)にもあるように……」

という、とてもオシャレなものでした。

 廉価版として開発された車体はパワーも抑えられ、時速50km以上のスピードは出なくなり、主に女性ユーザーを狙って販売されています。

スーパーカブ50・『天気の子』ver.(画像:本田技研工業)

 最近では、2019年ヒットしたアニメ映画『天気の子』の劇中に登場したカラーリングを再現した『スーパーカブ50/110 天気の子ver.』も登場しており、武骨な一方、極めて時代に敏感な商品だと言えます。

世界一周旅行にうってつけ?

 そんなスーパーカブの最大の利点は、世界中で普及していることでしょう。

 最初は、アメリカ市場への挑戦から始まったスーパーカブの海外進出ですが、故障しない信頼性の高さで広く普及しました。

 実際、世界のどこにいっても修理できる店があるため、世界一周旅行を計画するなら「スーパーカブ1択」とも言われています。

2018年にスーパーカブ誕生60周年を記念して作られた、スーパーカブの描き下ろしイラスト(画像:本田技研工業)



 現在では、近場の市街地へ出掛ける用途で購入する人が多いかも知れませんが、いざとなれば「このまま世界へ旅立つのも悪くない」、そんな野望を実現できるのもスーパーカブの魅力なのです。

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