大学共通テスト導入で高まる現役志向 でも本年度は「浪人有利」なワケ

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大学共通テスト導入で高まる現役志向 でも本年度は「浪人有利」なワケ

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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浪人を避けて、現役合格を狙う受験生が増加した2019年度の受験ですが、本年度は浪人が有利になるかもしれません。いったいなぜでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

当初は「現役生有利」だった大学入試

 入学試験として、国公立大学や多くの私立大学が利用していたセンター試験は、2020年度から「大学入学共通テスト」として生まれ変わります。

 テストの刷新にあたり、2019年度は浪人を嫌い現役合格を狙う受験生が増加。都内の私大定員厳格化も相まって、「安全志向」が強まりました。

 その結果、早稲田大学や慶応義塾大学、上智大学、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)といった有名私立大学の多くで、前年より志願者数が減る事態が発生。

 くしくも浪人を決めた学生は、大学入学共通テストを一から対策しなければならないため、現役生に比べて苦難の道を歩むと考えられていました。

浪人生のイメージ(画像:写真AC)



 当初予定されていた民間による英語試験活用や、国語と数学の一部問題での記述式解答実施が立て続けに見送られ、混乱が続いていた大学入学共通テスト。

 しかし方向性が二転三転したものの、2019年中に方針が固まったこともあり、落ち着いて受験対策できると考えた学生や教職員は多かったことでしょう。

 書店には新テストの問題集も並んだこともあり、現役生有利は変わらないと思われていました。

 しかし、現役生と浪人生を取り巻く状況が急激に変わり、不利と思われていた浪人生にとって追い風が吹き始めたのです。

 理由は、新型コロナウイルスの感染拡大です。

臨時休校が決定打に

 2020年の2月末、政府が全国の公立学校に臨時休校の要請を行い、多くの学校が3月から休校に突入しました。

 4月7日(火)に発令された緊急事態宣言は、5月25日(月)に解除。東京都も6月以降から学校再開となりましたが、以前と同じ状態には戻っていません。

 休校中は単元(授業で計画された学習活動のひとまとまり)を授業で学べず、オンラインやプリントを使って生徒自身が理解を深めていくしかありませんでした。

 先取り学習が当たり前のように行われている私立の中高一貫校でも、臨時休校により、大学入試に向けた演習に対して例年並みの時間を割くことが難しくなっています。加えて公立高校を中心に、授業時間確保のため夏休みを短縮することが決まっています。

「受験の天王山」ともいえる夏休みが短くなり、受験勉強の時間が不足することも現役生を悩ましているのです。

浪人生のイメージ(画像:写真AC)



 こうした勉強時間の不足を考慮し、文部科学省は異例ともいえる対応を行いました。

 大学入学共通テストの実施日を2021年1月16,17日と、2週間後の1月30日と31日、そして体調不良により受験できなかった場合の予備日程として2月13日、14日という計三つの日程としたのです。

 こうした配慮は受験生にとって喜ばしいものの、やはり数週間で空白期間を埋めるのは厳しいといえるでしょう。

既習の強みがある浪人生

 しかし、浪人生も全く影響がなかったわけではありません。コロナ禍の影響で大手予備校も休校措置をとったためです。

浪人生のイメージ(画像:写真AC)



 ただ現役生と異なり、浪人生は「学習済み」であることに加えて、自身の弱点を重点的に勉強できる強みがあります。

「浪人を決めたからには、あとは勉強をやるだけ」と割り切れる浪人生と比べて、学校や部活の再開も考えなければならない現役生は、精神面に不利な状況にあるのです。

新たな出題傾向に対応できるか

 前述の通り、記述式や民間英語試験の活用の実施は見送られた大学入学共通テストは、マーク式の問題となることが決まっているため、「センター試験と同じ内容なのでは」と受け止められがちです。

 しかし、文部科学省が推進する思考力や判断力、表現力を問う問題が新たに組み込まれます。

浪人生のイメージ(画像:写真AC)

 2018年に行われたプレテスト(当時は記述形式を含む)は、国語だけでなく数学も資料や会話文形式の問題が出題されるなど、従来のセンター試験と大きく異なり、話題となりました。

 精神面で優位、かつこれまでの入試問題に慣れている浪人生にとって、新しい問題に慣れるかどうかが、合格をつかむ大きなカギとなっています。

 新型コロナウイルスは第2波、第3波も危惧されており、今後大学入試に関する日程や方式が変わることが十分考えられます。

 文部科学省や大学側から発信される情報を例年以上に収集し、本番に備えましょう。

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