【受験生の夏2020】夏休み大幅短縮とオープンキャンパス中止で、実感できない「志望校のリアル」

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【受験生の夏2020】夏休み大幅短縮とオープンキャンパス中止で、実感できない「志望校のリアル」

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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コロナ禍の影響で受験生の周辺環境が激変しています。そんな現状について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

夏休みの短縮とオープンキャンパスの中止

 東京都教育委員会は2020年5月28日(木)に発表した「感染症対策と学校運営に関するガイドライン」内で、都立学校の2020年度の夏休みについて、当初予定されていた半分以下となる、16日間「8月8日から23日」と明記しました。

 3月から5月までの3か月に及ぶ休校措置で実施できなかった授業を補うため、多くの学校で夏休みの短縮という形で対応することになりました。

大学受験を控えた高校生のイメージ(画像:写真AC)



 例年は夏休み期間中、多くの大学で説明会やオープンキャンパスが開催されます。受験生にとって志望大学の雰囲気や気になる大学を見学できる絶好の機会であるとともに、大学にとっても多くの受験生にアピールできる一大イベントです。

 しかし新型コロナウイルスによって、オープンキャンパスは軒並み中止となっています。

混迷を極める全国模試

 受験生にとって、2020年の志望校選びはどれだけ難しくなるのでしょうか。

全国模試のイメージ(画像:写真AC)

 河合塾の全統模試といった全国規模の模試は通常5月から行われ、2020年度は新型コロナウイルスの影響で混乱の中、スタートしました。

 一般会場は中止となり、自宅受験対応や学校単位の実施が延期となり、受験生にとって志望校を決める大切な材料である模試の実施まで時間を有している状況です。

「当たり前」のことができない2020年夏

 自分の「立ち位置」を知ることは進路選択の上でとても重要で、成績次第では志望校を考え直す必要もあります。しかし現状は「受験生のゴール」となる大学入試の日程変更は変わらず、スタートからゴールまでの期間が短くなっています。

 例年、5月下旬までに年度初となる全国模試の結果が出るため、立ち位置がある程度分かり、夏休みのオープンキャンパス選びもさほど難しくはありませんでした。

オープンキャンパスのイメージ(画像:写真AC)



 また、成績を踏まえて「もう少し他の大学も見ておこう」と新たに申し込んだり、夏休み期間中に大学案内を読んだりして複数の大学を比較し、志望校を絞り込むことができます。

 補講や塾の授業があっても、夏休みは普段に比べれば時間に余裕があり、志望校選びをするのに最適でした。

 2020年の夏休みは例年の半分以上短縮となり、真夏でも授業があります。熱帯夜に受験生が自分の進路をあれこれ考えることもなくなるでしょう。

都内大学はウェブに切り替え

 多くの大学ではいまだ大学構内への立ち入りを規制しており、夏休みにオープンキャンパスを大々的に行うことは不可能な状態です。

 早稲田大学(新宿区戸塚)は予定していたオープンキャンパスを全て中止にし、その代わりとして、8月下旬に大学案内や学部紹介の特設ページを公開する予定です。

 青山学院大学(渋谷区渋谷)はウェブで予約制のオープンキャンパスを実施し、参加者とビデオ会議サービス「ズーム」で質疑応答を行います。

ビデオ会議サービスを使ったオープンキャンパスのイメージ(画像:写真AC)



 国内有数のマンモス大学である日本大学(千代田区九段南)は、学部ごとに異なる対応を行っています。医学部は中止、法学部や文理学部など多くはウェブ開催ですが、看板学部の法学部はウェブ開催かどうかは6月27日(土)時点で未定ですが、9月以降のオープンキャンパスを予定しています。

 インターネットを介することは足を運ばずにすむ反面、じかに学校の雰囲気を感じることができず、本当に自分に合うのかどうかを判断しにくい面があります。

 オンライン上に映し出された動画や画像、パンフレットのほかにインターネットで口コミを探して志望校を決めるしかありません。

 高校の卒業生の人脈を駆使すれば在学生のリアルな声を聞くことができますが、それも限度があります。

志望校選びは受験生の想像力も必要に

 オープンキャンパスや説明会に参加して自分に合う大学を見つけていくことが、これまで王道の手段でした。

 しかし新型コロナウイルスの影響で全てが覆され、高校2年時までにオープンキャンパスに参加していなかった生徒は、大学の雰囲気が分からないまま志望校を絞っていくしかありません。

これまでの夏のイメージ(画像:写真AC)



 ウェブでのオープンキャンパスは自宅から参加できる手軽さはありますが、気軽さゆえに「なんとなく良さよう」と深く考えず志望校を決めてしまう可能性もあります。

 しっかりと「自分と合うかどうか」「自分が好きな分野を学べるか」と自問自答しながら考えることが、いつも以上に大切となってきます。

 大学に足を運べない状況下での志望校選びは、これまで以上に個人の判断力が重要になります。冷静さと想像力を持たなければ、自分に合う大学を選べないのです。

安全志向の加速は避けられないか

 私立大学の定員厳格化もあり、「受験生の安全志向」という受験ワードがここ数年、注目を浴びています。また、2020年度は大学入学共通テストも新しく始まります。

 受験生が不安を感じる要素があまりにも大きく、「確実に合格する大学」「家から通える大学」「就職に強い学校へ」という流れが加速すると考えられます。

大学受験を控えた高校生のイメージ(画像:写真AC)



 年明けから本格化する大学入試は、もう半年を切ろうとしています。年度末から新年度の混乱期は去ったものの、やはり2020年の受験生にとって受難続きな状況は変わりません。

 受験生が「適当に選ぼう」とやけになったり、悩みをひとりで抱え込んだりしていないか、周囲の大人はこれまで以上に気を配る必要があります。

 担任や進路指導担当の教師、友人や先輩に相談したり、励ましあったりして、納得できる進路選択をして、この難局を乗り越えてほしいと切に願っています。

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