ウィズコロナ時代の東京散歩は「気配り」「お泊まり」がキーワードになる

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ウィズコロナ時代の東京散歩は「気配り」「お泊まり」がキーワードになる

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カベルナリア吉田

紀行ライター、ビジネスホテル朝食評論家

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6月19日に政府の移動自粛要請が全面解除されましたが、用心はまだまだ必要。そんな状況下でのスマートな散歩方法について、紀行ライターのカベルナリア吉田さんが解説します。

しばらくの間は近場の東京散歩で充足

 ヒヌマイトトンボは体長3cmほどの小さなトンボで、河口などの汽水域(水気を帯びた水域)のヨシ原(ヨシの群生地)などに生息しています。生息地が減少し、絶滅危惧種に指定され、保護活動も行われているそうです。都内では荒川河川敷で生息しているといわれますが、生息確認数は年々減っている模様です。

 え、何の話かって? 実はこれも東京散歩のお話なんです。よければもう少し読んでください。

 都道府県境をまたぐ移動自粛要請が全面解除されて、6月20日(土)には東京でも多くの人でにぎわいを見せました。しかし、引き続き用心は必要です。

東京散歩のイメージ(画像:写真AC)



 遠くへ旅行に行きづらい間は、都内の散歩で旅気分を味わおうという人が、増えるんじゃないでしょうか。

 そもそも遠くへ出掛けるだけが「旅」じゃありません。近場の日帰り散歩でも、そこに「発見」「出会い」「驚き・ハプニング」「感動」「絶景」などがあれば、それは「旅」です。もろもろの状況が改善するまでは、東京の「散歩旅」を楽しんで、旅行の欲求を満たしてみるといいと思います。

 とは言っても新型コロナが終息していない中で、どこに出掛けようか「行き先選び」に迷いますよね。そこで提案。まずは自分が住んでいる街の散歩から、始めてみませんか?

自宅の近所でさりげない「旅情」に触れよう

 詳しい町名は言えませんが「東京下町某所」と言っておきましょう。僕(カベルナリア吉田。紀行ライター)はそこでマンションに住み、15年になります。

 マンションから徒歩5分で、荒川の河川敷に出ます。毎朝この河川敷を歩き、途中で見える白髭神社の鳥居に向かって手を合わせ、その日1日の無病息災を願っています。最近は一緒に東京、日本そして世界中のコロナ終息もお願いしていますね。

河川敷から白髭神社の鳥居を拝む。その向こうにスカイツリー(画像:カベルナリア吉田)



 普段はそんな風に、散歩しても神社に手を合わせるだけです。でも実は、いつも歩いている河川敷は冒頭で書いた、都内でも貴重なヒヌマイトトンボの生息地なんです。

 数年前までは最寄りの駅に「ヒヌマイトトンボが生息しているので、むやみに河川敷のヨシ原に入らないように」と注意を促す大看板が立っていました。最近はその看板を見ないので、もしかして生息確認がないのかも……と思いつつ、いつもの神社参拝に加えトンボのことを考えながら歩いてみました。

 河川敷の大半は、今は野球やサッカーのグラウンドになっていて、ヨシ原はごく一部しか残っていません。でもヨシ原の前で足を止め、生い茂る葉と葉の隙間に目を凝らすと――さすがにヒヌマイトトンボはいませんが、大型の普通のトンボが飛んでいます。ほかに小さなチョウも舞い、小鳥のさえずりも聞こえてきます。

 青空が広がり、川から吹いてくる風も爽やかで――東京にいることも、自宅から徒歩5分の場所にいることも、しばし忘れてしまいました。

 今回の自粛期間中、自宅で仕事をするのに飽きると、ノートパソコンを持って近くの公園によく行きました。小さな公園で、遊具はブランコと滑り台があるだけ。木が数本そびえ、木のベンチがいくつか置かれていて、人もあまりいません。

「3密」とは無縁のこの公園でベンチに腰掛け、パソコンを開いて作業をするのが日課になりました。そんなある日、たまたま公園に来た初老の男性が、敷地の片隅にある何かに向かい手を合わせています。何だろうと思い、行ってみると――。

木の下にあった慰霊碑

 1本の木の下に、戦没者慰霊碑が立っていました。

近所の公園に慰霊碑が(画像:カベルナリア吉田)



 東京下町は第2次大戦の東京大空襲で大きな被害を受け、この一帯でも多くの被害者が出たのでしょう。慰霊碑には千羽鶴が供えられ、お地蔵さまが立ち、その足元に花やお茶も供えてあります。この日見かけた男性のように、日常的にここに通い、供養を欠かさない人が今もいるようです。

「戦跡めぐり」というと、沖縄ほか遠方の地を思い浮かべますが、まさか自宅から徒歩数分の場所に慰霊碑があるとは、15年住んでいるのに気づきませんでした。

近場の旅情を発見するチャンス

 ほかにもわが家から徒歩10分の場所に、三輪里稲荷という神社があり「こんにゃく稲荷」の別名で親しまれています。

「こんにゃく稲荷」こと三輪里稲荷神社(画像:カベルナリア吉田)

 まだ一帯が「村」だったころの1614(慶長19)年に鎮守として勧請(かんじょう。神仏の分霊をほかの場所に移し祭ること)されたそうです。初午(はつうま)の日に「こんにゃくの護符」の授与があり、これを煎じて服用し、のどや風邪の病に備えたことから「こんにゃく稲荷」と呼ばれるようになったとか。

 そこに神社があるのは知っていたのですが、実はお参りしたことがなかったんです。境内の説明書きを読むのも今回が初めてで「へえ、わが家の近くにこんな場所があるとは」と感心しました。

 以上、わが家の近所を1時間程度サラッと歩いただけでも、いろいろありました。どうですか。これも立派な「旅」だと思いませんか? まずはこんな風に自宅の近所の散歩から、徐々に「旅」の感覚を慣らすことを、おすすめします。

 遠出しづらい今は、近場に潜む旅情を見つけるチャンスだと、発想を転換してみましょう。

ウィズコロナ時代の東京散歩は「気配り」

 というわけで近場から徐々に、東京散歩という「旅」を楽しんでほしいのですが、ウィズコロナ時代の散歩はいくつかの「気配り」が必要です。

 当面の間は、マスクをつけて散歩するのが望ましいでしょう。あと大人数で行かない。2~3人くらいの少人数で行くか、またはひとりで行くことを推奨します。

 そして少人数で行く場合も、会話は小声で。基本的に商店街や繁華街を中心に歩き、目的もなく住宅街をうろつくことは控えましょう。

河川敷でこんな「川の駅」に遭遇(画像:カベルナリア吉田)



 これらは全て、地元の人に「恐怖心」を抱かせないための気配りです。

 コロナ以前と違い、今はどの街でも「よそから大勢で来た人が、大声でしゃべって歩く」状態に、恐怖を感じるようになってしまいました。東京散歩に限らず、旅は地元の人に不快感を与えないのが基本です。解放感からくれぐれも、奔放になりすぎないよう注意しましょう。

 あと写真撮影も注意が必要です。とにかくここ数年は、旅先であらゆるものに、スマートフォンを向けて撮影する人が増えました。これも現状では地元の人に嫌悪感を抱かせます。「これだけはどうしても撮っておきたい」ものだけに被写体を限定し、撮影量を今までの3分の1前後に抑える気持ちで行いましょう。

 とにかく「ああ、この人は気を配って歩いている」という雰囲気が伝わると、地元の人も安心します。ちょっとした気配りで、散策旅がより快適になることを、覚えておきたいですね。

「お泊まり付き」で旅気分アップ

 最後にもうひとつ、東京散歩が「旅」になる裏技を教えましょう。それは「お泊まり」です。

 東京にはたくさんのホテルがあり、安く泊まれるビジネスホテルも数多くあります。コロナ以前は外国人旅行者で満杯のことが多かったのですが、今は泊まりやすくなっています。1泊すると旅らしさが急に増すので、試してみてはいかがでしょうか。

 その場合は午後遅めの時間に散策を始めて、夜は適当な店で飲んで宿へ。ただし今の状況では夜更かしと、遅くまでの夜遊びはおすすめできません。早めに切り上げて宿に戻って休みましょう。

 お泊まり旅で楽しんでほしいのは、夜よりもむしろ朝です。日の出とともにシャキーンと目覚めて、早朝の街を散歩してみませんか? 河原や公園があれば、きっとすがすがしい朝の散歩を楽しめるはず。見知らぬ街の早朝の風景を見ると、東京にいることを忘れて、どこか遠い場所に来たような錯覚に陥ると思いますよ。

 散歩のあとは朝食です。ホテルに朝食がついていれば食べて、または朝から開いているカフェなどで、モーニングを楽しんでもいいですね。ちなみに「ビジネスホテル研究家」でもある僕は、ここはぜひ朝食付きホテルに泊まり「ビジホ朝メシ」を楽しみたいところです。

東京でホテルに泊まり、ビジホ朝食を食べて旅気分アップ!(画像:カベルナリア吉田)



 午前も少し散歩して、どこかでお昼を食べて、旅は終了。こんな感じで動くと自宅と旅先の間を、電車がすいている時間に移動できるので、ウィズコロナの現状ではその点も安心です。

 まだまだ何かと落ち着かない状況ですが、やはり外出も旅行もしたいですよね。まずはこんな形から「旅」に出掛けてみてはいかがでしょうか。

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