2020年初夏、僕たちは立ち止まらざるを得なかった【連載】散歩下手の東京散歩(3)

散歩とは、目的を持たずに歩くことも、寄り道しながら目的地を目指すことも、迷子になってしまうことも、迷子になりたくなくて右往左往することも、すべて包み込む懐深い言葉。出版レーベル「代わりに読む人」代表で編集者の友田とんさんが、日常の風景が一変した2020年初夏の日の自分を回顧します。


お手本など要らなかった

 いとこが画用紙にクレヨンで落書きをしていました。絵というよりは、とにかくぐるぐるぐしゃぐしゃと線を描いているだけで、そこで私はそのぐるぐるぐしゃぐしゃと曲線の手本を描き、この通り描いてみてはどうかと言ったのです。ところが、そんな手本は不要である、自由に描けば良いと叔母にたしなめられてしまったのです。

 私が先輩ぶってそんなバカな手本というものを押し付けて見せたのは、きっとその頃書道教室に通っていたからに他なりません。書道は手本の通りに書き写してみるところから練習がはじまります。では、散歩についてはどうでしょうか?

 もちろん、道順を指示する手本の通り歩くなんて窮屈なことはまっぴらごめんです。ですが、テーマはあってもよいかもしれません。草木を見よう、空を見よう、街ゆく人々を見よう、建物を見よう。そういうテーマを持って歩いてみると、いつもの街からもハッとするような発見があるのかもしれません。

 こんなもっともらしいことなど言う気は無かったのですが。

消されてしまった2行目

 さて、そんなことを思いながらいつもの住み慣れた街を右へ曲がり左へ曲がりして、やがて碑文谷公園(ひもんやこうえん、目黒区碑文谷)に着きました。

 ここには割と大きな池があり、多くの人が散歩に来ています。しかし、ここでもコロナの感染予防のため、遊具にはビニールテープが張られ立ち入れません。そして、ぼんやり歩いているとそこに看板が立てられていたのでした。

碑文谷公園で見つけた看板。2行目には何が書かれていたのか(画像:友田とん)

「芝生広場に犬を入れないでください。
 □□□□□□□□□□□
 犬を怖がるお子さんもいます。」

と書かれており、気になったのが上からテープで覆われて隠された2行目にかつて何が書かれていたのかということでした。

 私はここで決して大喜利がしたいのではありません。ただ、その1度は看板に書かれた一文が、後にテープで消されたということに特別な興味をかき立てられたのです。例えば、2行目に

「犬を怖がらないお子さんもいます。」

と書いてあったらどうでしょうか。これは言っていることはただしい。怖がる子もいれば、怖がらない子もいます。しかし、それでは何を言ったことにもなりません。

「猫を怖がるお子さんはいません」

ではどうでしょうか。あるいは、

「芝生が傷みます」

ではどうでしょうか。

人混みを離れグルグルと


【画像】立ち入り禁止……遊ぶことを禁じられた公園遊具

画像ギャラリー

/wp-content/uploads/2020/06/200619_sampo_06-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2020/06/200619_sampo_07-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2020/06/200619_sampo_01-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2020/06/200619_sampo_02-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2020/06/200619_sampo_03-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2020/06/200619_sampo_04-150x150.jpg
/wp-content/uploads/2020/06/200619_sampo_05-150x150.jpg

おすすめ

New Article

新着記事

Weekly Ranking

ランキング

  • 知る!
    TOKYO
  • お出かけ
  • ライフ
  • オリジナル
    漫画