外出自粛で「ケーキ通販サイト」の売り上げを爆増させた消費者の根源的欲望

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外出自粛で「ケーキ通販サイト」の売り上げを爆増させた消費者の根源的欲望

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外出自粛中、ちょっとしたストレス解消の意味も込めてケーキなどの甘い物を食べる人が多かったよう。その影響でしょうか。ケーキ通販サイトが、前年同月比2.5倍の売り上げを記録しました。

コロナ禍に注目されたケーキ需要

 2020年5月、新型コロナウイルスによる外出期間中に「売れたもの」「売れなくなったもの」ランキングが東洋経済オンラインに掲載され、話題を呼びました(同8日配信)。

 前年比20~40%程度まで落ち込んだ下位30位中、12品目を口紅やファンデーションなどの「化粧品」が占めたことに女性たちから納得の声が上がった一方、うがい薬(同400%以上)を筆頭とした売り上げを伸ばした上位30位のうち、15品目を連ねたのが「食品」でした。

 プレミックス商品(ホットケーキミックスやお好み焼き粉など)のほかホイップクリームやシロップ類など、巣ごもり中の自宅でケーキ作りに挑戦する家庭が急増したことは、各メディアも報道していた通り。

コロナ禍の外出自粛中、あなたはケーキを食べましたか?(画像:写真AC)



 しかしそれだけではなく、洋菓子店で買うような完成品のケーキ需要も、コロナ禍で堅調を維持していたようです。

実店舗が相次ぎ休業、通販へ流れ

 文春オンラインが4月29日(水)に配信した食文化研究家の畑中三応子氏の記事は、東京の洋菓子店の3月売り上げが前月比でおよそ3割増、4月下旬時点でもお菓子需要の勢いが続いている、と報じました。畑中氏は「人はストレスがたまると、甘いお菓子が食べたくなる」と指摘しています。

 とはいえ4月上旬以降は、緊急事態宣言に伴い自主休業に入る店も増加。

 日本洋菓子協会連合会(世田谷区池尻)は宣言下の洋菓子店の営業について、農林水産省からの「食料品の安定供給のために事業の継続を要請」する通達を引用しウェブサイトで紹介しましたが、大型商業施設などに入居するケーキ店は施設の休業に併せて軒並みシャッターを下ろしていました。

 その反動で一気に売り上げを伸ばしたのが、ケーキの通信販売です。

クリスマス期を上回る需要が殺到

 フラッシュパーク(新宿区西新宿)が運営するケーキ通販サイト「Cake.jp(ケーキジェーピー)」は2020年5月、2017年1月のサイト開設以来、過去最高となる売り上げを記録。前年同月比は2.5倍で、毎年クリスマス需要などで最も注文が増える12月を大きく上回る成績を残しました。

ケーキ通販サイト「Cake.jp」の売り上げ推移(画像:FLASHPARK)



 その伸長ぶりはグラフを見れば一目瞭然。好調の背景をあらためて同社に聞いてみることにしました。

何でもない日にもプチぜいたくを

 答えてくれたのは、同社マーケティング部の佐藤さくらさん。

 取り扱っているのは全国300店舗以上の、いわゆる「町の洋菓子店」のケーキやスイーツ。巨大資本に押されがちな小さな個人経営店を応援しようと通販事業を開始して以来、年々加盟店やサイト利用者を増やしてきましたが、今回のコロナ禍需要の伸びは社内でも驚きをもって受け止められているようです。

 購入動機で最も多いのはやはり誕生日で、全体の8割ほどを占めるとか。また2020年は送別会や「母の日」なども自粛期間と重なったため、例年以上に注文数が増えたといいます。

見ているだけでも楽しくなってきそうな「Cake.jp」のウェブサイト(画像:フラッシュパーク)

 一方、注目したいのは、そうしたイベント・行事に限らない「何でもない日のプチぜいたく」用に家族で食べるケーキの注文も普段以上に増えたこと。

「遠出のレジャーや旅行ができず、また家族で過ごす時間が長くなった自粛中に『たまには皆でケーキを囲んでゆっくり過ごそう』と考える人が増えたようです。やはり甘い物はストレスを和らげてくれるのか、ケーキはもちろん、そのほかのスイーツ商品もおおむね好調でした」

と佐藤さんは話します。

サプライズ演出は通販ならでは?

 有名店の有名ケーキ以外にも、例えば希望する写真を送信すればケーキの表面にその画像をプリントしてくれる「写真ケーキ」など、オンライン特性を生かしたサービスも評判。利用者からは、

「2019年の誕生日祝いは旅行先の旅館でケーキを食べましたが、2020年はコロナ自粛のため自宅でパーティー。旅館のケーキはオーソドックスで割高だったけど、今回注文したものは見た目も味も値段もとても気に入りました。最高のお誕生日パーティーになりました」

といった感想が同サイトに寄せられています。

好みの写真をプリントできる「写真ケーキ」も人気(画像:フラッシュパーク)



「巣ごもり需要」によって通販事業はさまざまな分野で売り上げを伸ばしていますが、こうした通販ならではの、届いた箱を開けるときのワクワク感、利用者にとってプラスアルファの驚きや喜びを織り込む工夫も、人気を集める背景にあるように感じました。

街でお目に掛かれない商品を追求

 ちなみに同サイトが扱うのは通販専用商品のため、加盟各店が作った「冷凍」状態のケーキがほとんど。品質と味を保つために、生クリームなどの配合を調整して味を調えているそう。それにより通常のケーキよりも甘さが控えめなものが多く、年齢や性別を問わずに食べやすい味に仕上がっているといいます。

 さて、驚異的な売り上げ伸長を“後押し”したコロナ禍が徐々に収束し、それによってお出掛けをする人が増え、街のケーキ店も営業を再開し始めている今、同社は今後の売り上げの維持・拡大をどのように考えているのでしょうか。

「今回のコロナ禍で初めて当社サイトを知ったというお客さまたちに再び利用していただけるよう、引き続き加盟店や取扱商品の拡大に努めていきます。特に、ベーシックなラインアップが多い街のケーキ店ではなかなかお目に掛かれないような、サプライズ感のある商品やSNS映えを意識した商品など、さまざまなニーズをすくい上げていかれたらと考えています」(佐藤さん)

 全国にある洋菓子の名店から、好きなお店・商品を選んで注文できるというのも、通販ならではのお楽しみ。自粛明けの今後も引き続き、選択肢のひとつとして取っておいてもよいかもしれません。

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