女性アイドルの夏ソングに「恋愛もの」が少なくなった理由

2020年も夏はすぐそこ。これまで夏を歌った多くありますが、今回は女性アイドルに絞って、その変遷を取り上げます。解説は社会学者で著述家の太田省一さんです。


都心のシティーホテルを彷彿とさせる曲

 1980(昭和55)年にデビューし、今年デビュー40周年を迎えた松田聖子はヒット曲も数多く、歌の季節も問いません。

 ただ、抜群の伸びのある彼女の歌声は、夏が舞台の曲をより印象的にしてくれました。2曲目のシングル「青い珊瑚礁」(1980年発売)は、そんな1曲。このストレートなラブソングは大ヒットし、初出場の「NHK紅白歌合戦」でも披露されました。

 また松田聖子と言えば、作詞家・松本隆とのコンビが有名です。代表曲となると「赤いスイートピー」(1982年発売)になると思いますが、夏ソングにも佳曲があります。

「小麦色のマーメイド」(1982年発売)は、しっとりとしたバラード。

1982年発売の松田聖子「小麦色のマーメイド」(画像:ソニー・ミュージックレコーズ)

 歌詞の女性がいるのはどこかのおしゃれなプール。具体的な地名は出てきませんが、呉田軽穂(松任谷由実)作曲ということもあり、東京都心にでもありそうなシティーホテルのイメージです。

 デッキチェアに座り、りんご酒をひとくち飲む彼女のすぐそばには彼がいるのですが、「嘘よ 本気よ」「好きよ きらいよ」と内心はちょっと揺れているようです。

 このとき松田聖子は20歳になったばかり。大人びた世界が似合う年齢にもなっていました。それまでの常識を壊し、アイドルを職業として確立した彼女ならではの1曲と言えます。

東京でひとり暮らしをする女性の歌

 1990年代後半、一時あまり目立たなくなっていた女性アイドル歌手を復活させたのがモーニング娘。でした。

 こちらもキャリアの長さに比例して、夏ソング曲には事欠きません。「サマーナイトタウン」(1998年発売)や「ハッピーサマーウェディング」(2000年発売)も捨てがたいのですが、ここでは「ふるさと」(1999年発売)にふれたいと思います。

1999年発売のモーニング娘。「ふるさと」(画像:アップフロントワークス)

 歌詞の内容は、東京でひとり暮らしをする女性が失恋してしまい、田舎に住む母親に向けて自分の気持ちを語りかける、というもの。メインボーカルの安倍なつみが切々と歌っています。

 PVは彼女の故郷である北海道で撮影され、夏に帰省した設定。メンバーの母親(ただ顔は映っていません)や幼少期の写真が登場するのも見どころです。

 望郷歌は歌謡曲伝統のもの。どちらかというと演歌のイメージが強いですが、それをアイドルに歌わせるところがいかにもつんくらしいテイストです。

 この「ふるさと」は代表曲となった「LOVEマシーン」(1999年発売)のひとつ前のシングルということもあって目立ちませんが、いま聞くと味わい深い1曲です。

東京の地名を持つグループが歌う夏の歌


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