歌舞伎座でなんと毒殺事件がーー現代によみがえる横溝正史の世界、『仮名手本殺人事件』を読む

『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『江戸川乱歩と横溝正史』(集英社)など、歌舞伎とミステリに詳しい作家の中川右介さんが、2020年2月発売の『仮名手本殺人事件』の魅力について解説します。


気鋭の作家による歌舞伎ミステリ

 さて、今回紹介するのは、歌舞伎界を舞台にしたミステリ小説『仮名手本殺人事件』(原書房)です。

2020年2月発売の『仮名手本殺人事件』(画像:原書房)

 作者の稲羽白菟(はくと)氏は、2018年に『合邦の密室』(同)で、第9回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞(準優秀作)してデビューした、気鋭の作家です。

『合邦の密室』は文楽の世界を舞台にしたミステリでしたが、今回は歌舞伎の世界が舞台となります。なんと、歌舞伎座で『仮名手本忠臣蔵』が上演されている最中に殺人事件が起きるのです。

 しかも、舞台の上で主役の役者が毒殺されてしまいます。そして同時に客席でも殺人事件が起きます。書かれたのは2020年ですが、物語の設定は歌舞伎座のさよなら公演の時期になっています。

 歌舞伎座は前述のように1945年5月に空襲で焼失しましたが、1951年に再建されました。しかし、60年近くたち、耐震の面からも建て替えることになり、2009(平成21)年1月から2010年4月までの16か月も「さよなら公演」をして、いったん閉場しました。

 その「さよなら公演」のなかの顔見世(みせ)、11月22日に事件が起きた、という設定です。

 しかし、作者はあえて「2009年」とは作中に示していません。それは現実の2009年11月の顔見世で上演された演目や出演俳優と、一致しないからです。

 あくまでフィクションであり、現実にある歌舞伎座が登場しますが、現実にあった出来事ではないとするための、曖昧な設定なのでしょう。

仁左衛門家を意識した設定


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