遠くに行くだけが「旅」じゃない――外出自粛で感じた、散歩という身近な「旅」の愛おしさ
2020年4月28日
ライフ外出自粛のコロナ禍で、何気ない散歩や街歩きの良さを改めて感じた人は多いでしょう。紀行ライターのカベルナリア吉田さんが自らの「散歩哲学」を通して、それらの魅力について解説します。
醍醐味は「異邦人感」
さて、汗を流して外に出れば、ほどよく夕暮れ。おもむろに散歩の「夜の部」に繰り出し、居酒屋に突入します。
僕の散歩記事では、ほぼ必ずラスト近くで居酒屋に突入する場面があります。なぜかというと、東京散歩でこの夜の居酒屋突入ほど「旅」を感じる場面はないからです。

駅前でのれんを出し、赤ちょうちんがポワンとともる、小さな居酒屋がいいです。中から地元の人同士でにぎわっている声が聞こえると、入り口の戸や扉を開けるのも一瞬ためらいますが、思いきって開けます。
「こんばんはー!」……シーン。
見たことがない僕の乱入に、それまでしゃべっていた地元の客たちが一瞬静まり返ったりします。「コイツは誰?」と怪しそうに、僕を見る人も。この「異邦人感」をマックスに感じる瞬間こそ、「旅」なんです。
旅先で出会った店での作法
ここでひるんではいけません。店に「営業中」の札が下がっていれば、誰が入ったっていいんです。
とはいうものの最初からずうずうしく振る舞うと、その後のコミュニケーションに支障をきたすので、入り口に近いカウンターの端っこの席などにオズオズと座ります。「ひとりですが、いいですか?」の一言も忘れずに。

いきなり自分から無理して話す必要はありません。まずは飲みたいお酒と、食べたいツマミを軽く(ここ大事)注文。チビチビやっていると、怪しげに僕を見ていたひとりが、ついに話しかけてきます。
「地元の人?」「こちらは仕事で?」
きたー!
いきなり「取材で来ています」とか余計なことは言いません。「ちょっと仕事で」とか「初めて降りました、この駅」とか。
そのあとは会話が弾めば徐々に、街のことや店のことを聞けばいいし、弾まなければ1杯でおしまい。勘定して2軒目に移動します。最初の注文を「軽く」しておくのは、このため。初めからガブガブ飲んでドバドバ食べて、酔いが回り満腹になってしまっては、2軒目に移動できませんからね。
というわけでほどよく飲んで、酔いに任せて地元の人も口が滑らかになり、いろいろな話を聞ければ散歩終了。いつもそんな感じで、楽しみながら東京の散歩をしています。
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