有名人も相次いで参入 外出自粛で注目「ゲーム実況」の歴史を振り返る

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有名人も相次いで参入 外出自粛で注目「ゲーム実況」の歴史を振り返る

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中村圭

文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナー

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近年、芸人やタレントなどの有名人の参入が目立つようになったゲーム実況。そんなゲーム実況の歴史について、文殊リサーチワークス・リサーチャー&プランナーの中村圭さんが解説します。

外出自粛ムードで改めて注目

 ネット動画で人気のあるカテゴリーに、ゲームの実況プレイがあります。

 現在、新型コロナウイルスによる外出自粛・経済活動の制限によって、自宅で手軽に楽しめ、また自宅から情報発信が可能な動画配信が拡大しています。そんななか、タレントや有名人によるゲームの実況プレイが増えてきており、改めて関心を持たれています。

本田翼さんとYouTubeチャンネル「ほんだのばいく」での実況の様子(画像:スターダストプロモーション)



 ゲームの実況プレイを「観賞型ゲームエンターテインメント」とすると、その起源はファミリーコンピュータ全盛期であった1980年代のテレビのゲームバラエティー番組や、ゲーム大会での実況と言えます。

 しかし現在のゲーム実況スタイルの元となっているものは、2003(平成15)年からフジテレビが運営する有料チャンネル「フジテレビ ONE TWO NEXT」で放映されているバラエティー番組「ゲームセンターCX」(現在隔週木曜日24時~放映)とされています。

 お笑い芸人「よゐこ」の有野晋哉さんがファミリーコンピュータなどのゲームをクリアするまで何時間もプレイしている様子を放映するもので、この番組に感銘を受けてゲーム実況を始めた実況者も少なくありません。

一般人の実況者は2000年代半ばごろから

 一般のゲームユーザーがネットでゲーム実況を配信するようになったのは2000年代半ばごろからで、当初はニコニコ動画での配信が多く見られました。

ニコニコ動画のウェブサイト(画像:ドワンゴ)

 家庭・個人向けのコンピューターゲームが主な対象ですが、購入を予定しているゲームの内容を確認したり、攻略のヒントを得たり、ゲームユーザーの実用的な面のほか、単純にゲームの世界を体感したり、実況者のトークを楽しんだり、超絶技巧に驚いたり、ゲームを知らない人でも楽しめる面があります。

 リアルタイムで配信して視聴者とチャットでやり取りするゲーム実況もあり、実況者の挙動に一喜一憂し、一緒にゲームをプレイしているような感覚を持つ人も多いでしょう。この時期に人気実況者が多数輩出され、

・レトルトさん
・ガッチマンさん
・牛沢さん
・もこうさん
・キリンさん

などに加え、

・M.S.S Project
・最終兵器俺達
・いい大人達

などのゲーム実況ユニットも登場しました。実況者には固定ファンがつき、アイドル並みの人気を博す人もいます。

メーカーは当初黙認、その後推奨へ

 当初のゲーム実況は著作権に抵触する違法行為で、メーカーに黙認されている状況でした。

 しかしこのような活況を受けて、大手ゲームメーカーでもそれに乗っかる動きが見られました。メーカー各社で新作のプロモーションの一環として、実況者に新作を提供してプレイしてもらったり、イベントステージに実況者を招いたりしています。

 また、三国志大戦や戦国大戦など当時全盛期だったアーケードトレーディングカードゲームにおいては、それまでは利用者が違法にプレイ動画をアップロードしていたものをむしろ推奨するようになり、アーケードでのゲームプレイを録画してネットにアップロードできるサービスを提供しました。

トレーディングカードゲーム・オンライン対戦ゲームのイメージ(画像:セガ・インタラクティブ)



 そのほかにも、ゲームによってガイドラインを作成して公的に容認するメーカーも出てきました。

さいたまスーパーアリーナを満員にするイベントも

 2000年代後半に入り、状況に変化が訪れます。

 人気実況者が組織化したり、プロ化を目指したりする動きが出始めたのです。これには賛否両論があり、実況者の中には趣味にとどめておきたいと言う意見も根強くありました。

 このあたりからゲーム実況を引退する人気実況者が出てきて、一時期の盛況期に比べればネット上でのゲーム実況はやや下火になっていきました。

 しかし、人気実況者の求心力は依然強く、例えば2020年2月に開催したキヨさん(最終兵器俺達)とレトルトさんを中心にしたゲーム実況イベント「LEVEL.5 -FINAL-」はさいたまスーパーアリーナ(埼玉県さいたま市)のスタジアムモード(収容人数3万7000人)を満員にするほどの盛況ぶりでした。

さいたまスーパーアリーナの外観(画像:写真AC)

 このような人気実況者には現在、スポンサーがつくようになっています。ゲーム実況のイベントをメインに行うプロモート企業も生まれ、ゲーム実況ビジネスへの期待がうかがわれます。

eスポーツ上陸以前からあった実況文化

 2010年代の中ごろに欧米で人気の「eスポーツ」が日本に上陸しましたが、eスポーツも観賞型ゲームエンターテインメントと言えます。

 当初、eスポーツが国内でなかなか普及しないことに対し、日本ではゲームを観賞する文化がないという指摘がありました。

 確かに大きなスタジアムでショーアップされたプロの大会と一概に同列には語れませんが、国内にもeスポーツ上陸以前からゲーム実況という観賞型ゲームエンターテインメントが存在していました。むしろ、ネット上で素人の超絶技巧のゲームプレイ動画がいくらでも見られる日本のゲーム文化は奥深いと言えるでしょう。

eスポーツ「ストリートファイターV チャンピオンエディション」の様子(画像:カプコン)



 現在はeスポーツを冠したゲーム大会に人気実況者が呼ばれるようになっていますが、ゲーム業界などがeスポーツを勢力的に振興している中で、国内のゲーム実況がどのように発展していくのか見守りたいところです。

加速する有名人の参入

 最近の動向としては、芸人やタレントなどの有名人のゲーム実況への参入が目立つようになってきています。

 近年では女優の本田翼さんのゲーム実況が大きな話題となり、告知の段階でチャンネル登録の勢いが止まらず、初回ライブ配信時も約15万人が同時視聴するほどの人気となりました。

 お笑い芸人のゴー☆ジャスさんやハリウッドザコ師匠さんもゲーム実況を配信しています。また、YouTuberがビジネスとして確立されてきたため、そのひとつのコンテンツとしてゲーム実況を行う人気YouTuberも多くいます。

お笑い芸人のゴー☆ジャスのYouTubeチャンネル「ゴージャス動画」(画像:サンミュージックプロダクション)

 現在、新型コロナウイルスの外出自粛によってタレントも活動が制限されているため、自粛中にYouTubeで活動を始める人が増えています。

 伊集院光さんは4月から「あつまれ どうぶつの森」などのゲーム実況を開始。また、狩野英孝さんも配信を始め、沼プレイのゲーム実況が話題となりました。チャンネル登録者数が200万人を超えた江頭2:50さんは「ファイナルファンタジーⅦ リメイク」の実況を予定しています。

F1すらバーチャルで行う時代に

 更に、東京オリンピックをはじめさまざまなスポーツの試合が中止や延期されている状況下、ゲームを活用してファンに発信するさまざまな取り組みが見られます。

 いくつか紹介しますと、F1では2019年のF1公式ゲーム「F1 2019」を使用した「F1 eスポーツ バーチャルグランプリ」を、延期や中止となった全てのレーススケジュールで開催。フェラーリのシャルル・ルクレールさんなど現役ドライバーや2009年チャンピオンのジェンソン・バトンさんも参戦し、ファンを楽しませました。

F1すらバーチャルで行う時代に。写真はイメージ(画像:写真AC)



 また、プロサッカー界ではレアル・マドリードに所属するギャレス・ベイルさんが他の選手と一緒にサッカーゲーム「FIFA20」を使用したチャリティーゲーム大会をライブ配信することを発表しました。

 こんな時こそ楽しめるゲームの実況プレイ。興味のある人はぜひ視聴してみてください。

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