新型コロナ拡大で浮き彫りに 子どもの「オンライン学習」を阻むものは何か

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新型コロナ拡大で浮き彫りに 子どもの「オンライン学習」を阻むものは何か

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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新型コロナウイルスの感染拡大で注目が集まるICT教育。その必要性について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

コロナ禍で問題点が浮き彫りに

 新型コロナウイルスの感染拡大は各方面に多大な影響を与えていますが、特に翻弄(ほんろう)されているのは学校に通う子どもたちです。

 一斉休校が始まった3月初頭以降、緊急事態宣言が出された都内の多くの公立学校では新年度の授業再開が見送られています。

オンライン学習を受ける子どものイメージ(画像:写真AC)



 長引く休校措置の中、子どもたちは勉強する機会を奪われています。諸外国と比べて日本では、オンライン学習などの在宅で受けられるICT(情報通信技術)教育の整備が進んでおらず、その問題点が今回のコロナ禍で浮き彫りとなりました。

ネット環境は整っているのに……

 政府が4月7日(火)に発表した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の事業規模は108.2兆円。その中には、ICT環境の早急な整備への経費も含まれています。

 総務省が発表している情報通信白書内の「2019年度インターネット利用状況」から個人利用のインターネット普及率をみると、全国平均は約80%、東京は88.4%と高く、ICT教育を押し進めることに対して支障は少ないように感じられます。

オンライン学習を受ける子どものイメージ(画像:写真AC)

 近隣の諸外国では、2002(平成14)年冬から2003年まで発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)、2009年の新型インフルエンザ、そして2015年に韓国を襲ったMERS(中東呼吸器症候群)などを契機に、ICT教育の整備が進められてきました。

 ICT教育が整備されていない日本で今回のような状態が長引くと、子どもたちの学習機会を奪うだけでなく、学力維持が各家庭任せとなってしまいます。政府はいい加減重い腰を上げ、本格的にICT教育を導入しなければならないのです。

黒板授業ありきできた日本の教育

 日本の教育は長年、「黒板」と「壇上に立つ教員」のセットで行われてきました。

 ここ数年は、生徒間の対話を重視するアクティブラーニングやグループ活動が盛んに行われていますが、基本的には、明治維新以前からの「寺子屋スタイル」を踏襲し続けています。

オンライン学習を受ける子どものイメージ(画像:写真AC)



 日本の高いインターネット普及率を考えても、このような旧態依然のスタイルが学校教育として行われてきたのは、ある意味「奇跡」と言ってよいでしょう。

 残念ながら、このような教育スタイルは緊急事態の前で極めてもろいことが露呈しました。生徒同士の距離感が近く、感染の危険性が高まる状況では、登校すること自体が危険であり、子どもたちが平等に教育を受ける場がなくなってしまうためです。

 そのためにも、生徒の通学が「大前提」の教育スタイルは、即刻変える必要があります。

ICT教育にはデメリットも

 しかし昔ながらの教育スタイルがデメリットばかりかと言えば、そうも決めつけられません。

 板書(黒板に白墨で書くこと)スタイルの授業では、子どもの表情やリアクションから「授業内容をどれだけ理解しているか」ということが瞬時に教員へ伝わります。しかし、ICT教育はそうした微妙な心理はなかなか伝わりません。

オンライン学習を受ける子どものイメージ(画像:写真AC)

 また板書スタイルは、教員が教室の空気を読み、すべての子どもが苦手そうな問題を宿題として出すといった臨機応変な対応を行えますが、ICT教育は実際の授業と異なり、瞬時の判断で細かい指導を行うことが難しいというデメリットがあります。

「新しいから優れている」ではない

 ICT教育は、双方向のやり取りができるライブ配信や、録画した映像を流す方式などさまざまなパターンがあります。

 普段通りの授業スタイルに近づけるためにはライブ配信が理想ですが、通信費の負担やスマートフォンよりも画面の大きいタブレット端末やパソコンが必須であるため、家庭によるインターネット環境の差が出てしまうといった課題もあります。

オンライン学習を受ける子どものイメージ(画像:写真AC)



 特に低学年の子どもはタブレット端末をひとりで操作したり、授業に集中したりするのは難しく、大人がそばでサポートする必要があります。

 そうなると共働き世帯の子どもたちは思うように授業が受けられず、理解が定着しないまま単元が進んでしまう恐れもあります。ICT教育は「新しい技術だから優れている」とは一概に言えないのです。

休校は今後も起こりうる

 ICT教育の整備には膨大な予算がかかるため、政府が長年及び腰だった印象は拭えません。しかし、緊急時にも公教育を維持するためには導入が避けられません。

 日本では毎年のように地震や豪雨などが発生しており、その度に臨時休校となる学校が出ます。こうした現実を踏まえると、もはや導入しない理由はないのです。

オンライン学習を受ける子どものイメージ(画像:写真AC)

 平時は通常の板書スタイルを採用し、宿題や復習教材などでICTを使うなど、臨機応変に両方のメリットをフル活用しなければなりません。

 誰もが一度は学校で教育を受けています。学校教育へのまっとうな投資を非難するような人は、誰もいないはずです。

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