決して人ごとではない新型コロナ禍の「経済的損失」 東京都は立ち向かえるか?

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決して人ごとではない新型コロナ禍の「経済的損失」 東京都は立ち向かえるか?

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小川裕夫

フリーランスライター

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新型コロナウイルス禍で感染者数とともに大きな議論の的となるのが、経済的な影響です。フリーランスライターの小川裕夫さんが解説します。

閑古鳥が鳴く繁華街

 政府は2020年4月8日(水)0時、緊急事態宣言を発令しました。指定された対象地域は、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・兵庫県・福岡県の7都府県です。

 緊急事態宣言の発令後も、通勤時間帯の電車は依然として多くのビジネスマンであふれていましたが、通常時より混雑率は低下。なにより、都内の繁華街から人の気配がなくなり、緊急事態宣言による影響が出ている状況です。

 繁華街にある多くのレストランや居酒屋などはシャッターを下ろし、営業している店でも客の姿は見当たりません。街全体で閑古鳥が鳴いています。



 新型コロナウイルス禍による経済的な影響は計り知れませんが、いつ終息するのかが見通せないため、このままだと繁華街の店がことごとく廃業に追い込まれます。また、企業活動も停滞しているため、多くの労働者が職を失うことも危惧されます。

広がらないテレワーク

 そうした経済的損失が心配される一方、食べるために新型コロナウイルスに感染する危険を顧みず、通勤電車に揺られ、危険な場所で働かなければならない人たちも多くいます。期せずして、そうした人たちが新型コロナウイルスに感染し、まん延させてしまうこともあります。

 新型コロナウイルスの拡大を食い止めるためには、とにかく極限まで不要不急の外出を減らすしかありません。

テレワークを行うビジネスマンのイメージ(画像:写真AC)

 当然、仕事に出掛けることも控えることが要求されます。そのため、政府は自宅でも作業のできるテレワークを推奨していますが、これまでオフィスでこなしていた作業を急に自宅でこなせるように切り替えることは困難です。

 結局、テレワークは社会全体に広がっておらず、出勤しなければならない状態になっています。

金銭的救済は“施し”ではない

 諸外国では外出を禁じ、仕事へ出掛けることも制限しています。そうした政策によって収入が激減する人も出てきていますが、そうした人たちの生活を救済するために給付金や減税といった政策を次々と打ち出しています。

 これらは金銭的な救済ですが、新型コロナウイルスの拡大を防ぐためにも有効的な手段であり、決して“施し”や“恵み”ではありません。

「施し」のイメージ(画像:写真AC)



 諸外国の政府が金銭的な支援を打ち出す中、日本政府は現在まで給付金や減税といった金銭的な支援に消極的です。

 政府は一世帯あたり30万円の給付金支給を打ち出していますが、その受給条件が厳しいために多くの世帯は受給することがかないません。絵に描いた餅なのです。

静岡県御殿場市の英断

 政府が給付金・減税といった金銭的な支援を渋る一方、私たちの生活に近い地方自治体は金銭的な支援をいち早く表明しています。

 静岡県御殿場市は緊急事態宣言で対象からはずれている地域ですが、市内のバー・ナイトクラブ・キャバレーなどに休業を要請。休業時の損失補填(ほてん)として、最大100万円まで補償するとしました。

静岡県御殿場市の位置(画像:(C)Google)

 同じく、対象地域ではない山梨県富士吉田市は観光客が激減したことに伴う経済的措置として、全市民に1万円の給付を表明しています。これら補償や給付金の財源は、財政調整基金から捻出するとしています。
緊急事態宣言で対象地域となった埼玉県川口市は、小規模事業者への緊急支援策として一律10万円の支給を表明。

東京都と政府の対応の違い

 1日の感染者が連日100人を突破している東京都は、小池百合子都知事が4月10日(金)に記者会見を実施。

 その場で「都民のみなさんの命を守ることを最優先とする」とし、その対策として不要不急の外出をしないことや人が多く集まる遊興施設・集会施設などの休業・休館を強く要請しました。

感染拡大防止協力金の創設を発表する小池百合子都知事(画像:小川裕夫)



 そして、休業・休館に協力する中小の事業者に対しては、最大で100万円の感染拡大防止協力金を支給することを発表しています。

 こうした地方自治体が打ち出した金銭的な補償・給付金は、決して大きな金額とはいえません。しかし、一方的に休業を要請しながら、政府はその損失分については口を閉ざしたままです。明らかに、東京都の方が新型コロナウイルスに苦しむ困窮者に寄り添っているといえます。

 金銭的な補償を渋っている政府に比べれば、微々たる力ながら地方自治体は経済的に苦しむ人たちと真剣に向き合い、対応しています。

 政府にとって、コロナウイルス禍による経済的損失は人ごとではありません。そのため、金銭的な支援は欠かせません。しかし政府に比べると、地方自治体は人々の暮らしが身近です。政府以上に、新型コロナウイルス禍は地方自治体をむしばみ、存亡の危機とも言える事態に追い込んでいるのです。

地方自治体の動きが刺激となるか

 東京都をはじめ、各地の地方自治体が金銭的支援策を次々と打ち出したことで、さらに多くの地方自治体から金銭的支援を表明する声が出てくるでしょう。

感染拡大を防止するために外出を控えることを要請し、キャッチコピー「STAY HOME」を発表。その支援策も発表した(画像:小川裕夫)

 そうした動きが活発化すれば、給付金額や適用範囲の拡充、条件の緩和などがされていくこともあり得る話です。

 こうした地方自治体の動きに刺激されて、政府が重い腰をあげることも十分に考えられる話なのです。新型コロナウイルスによる支援は、今のところ地方自治体がリードしています。

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