どうしても添い遂げたい男がいる――身分違いの純愛を描く『紺屋高尾』【連載】東京すたこら落語マップ(9)

落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことないんです。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる噺を毎回やさしく解説します。


3年間も、私を思い続けてくれたのですか

 蘭石先生の提案で「流山のお大尽(財産を多く持っている者)」という体にして吉原にやってきた。

 蘭石先生が茶屋のおかみに頼んでみると、ちょうど高尾太夫は空いているという。部屋に上がると、恋い焦がれた高尾太夫。初回とは思えぬもてなしに、久蔵は思い残すことはない。

 後朝の別れの朝。高尾の「ぬし、今度はいつ来てくんなます」の問いに、久蔵は「三年たったら、また来ます」と答えるしかない。

 その様子を不思議に思った高尾に「他の人は明日来る、明後日来るというところを、ぬしさまはなぜに三年なんざます?」と聞くと、うそがつけない久蔵はついに思いを打ち明ける。

「自分は、流山のお大尽でもなんでもない、ただの紺屋の職人です。花魁(おいらん)に会いたくて会いたくて、三年働いてお金をためて来ました。この着物だって草履だって、親方が貸してくれたものです。また三年お金をためなくちゃ、ここには来られないんです」

 久蔵の真の言葉を聞いた高尾は「四姓と枕をかわす身を、三年も思い続けてくれたのか」と涙をほろり。

「わちきは来年三月十五日に年季が明けんすによってぬしの元に参りんすが、ぬし、わちきを女房にしてくんなますか?」

 夫婦になる約束のしるしと香箱のふたを受け取り、夢見心地で神田へ戻ってきた久蔵。高尾が嫁になるといっても、当然のことながら誰も信じてくれない。しかし久蔵は高尾の言葉を信じて、「来年三月十五日に高尾が来る」と一生懸命に働いた。

 そうして年が開けた三月十五日。久蔵の店の前にかごがつき、中から現れたのは髪を島田に結い歯を黒く染めた高尾太夫。迎えた親方の声に飛んできた久蔵と、手を取り合い涙を流して喜んだ。

傾城に誠の恋なしとは誰がいうなり、
傾城に誠の恋あり、紺屋高尾の物語。

※ ※ ※

今も地名に残る「神田紺屋町」


【クイズ】かつての純愛の舞台「千代田区・紺屋町」交差点には今、何料理のレストランがある?

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