聴くだけでおしゃれさん? 90年代の若者が夢中になった「渋谷系」サウンドの淡き思い出

一世を風靡した「渋谷系」と赤いフタが目印だったポータブル・レコードプレーヤーについて、ルポライターの昼間たかしさんがその軌跡をたどります。


「渋谷系」サウンドの定義とは

 その軸となったのが「渋谷系」と呼ばれる音楽ジャンルです。これを誰が最初に言い始めたのかは、諸説がありますが、フリッパーズ・ギターやオリジナル・ラヴ、ピチカートファイヴ、小沢健二、小山田圭吾、ラヴ・タンバリンズなどが渋谷系と呼ばれます。

オリジナル盤は1990年6月に発売されたフリッパーズ・ギター通算2作目のアルバム『CAMERA TALK(カメラ・トーク)』(画像:(P)2006 POLYSTAR CO.,LTD.(C)POLYSTAR CO.,LTD.)

 それぞれ音楽性はまったく違います。では、どこが共通項だったのか。『AERA』1994(平成6)年7月11日号では、次のように分析しています。

1.古今東西のポップスを聴き込んできた音楽的な素養、アイデアの豊富さ
2.過去の作品からも自由に「引用」する、DJ的発想
3.ポップなメロディー、分かりやすさ、大衆性

 そんな風にふんわりと概念はあるものの、それぞれ音楽性の違うアーティストをひとくくりにする「渋谷系」という言葉は、当初はとても不評でした。アーティストの側としては確かに当然でしょう。

 ところが、次第に「渋谷系」という言葉はポジティブな意味に変化していきます。というのも、テレビや雑誌で宣伝を打たれるヒモ付きの音楽ではないということに次第に注目が集まっていったのです。

ブームをけん引したレコードショップ

 渋谷系を盛り上げたのはレコード会社ではなくショップでした。

 それまで、音楽というものはレコード会社が大がかりな宣伝をして全国津々浦々で売れているようなのが常識。ところがここで生まれたのは、全国的には知名度は低くとも「渋谷じゃ、けっこう売れている」という新たな価値観だったわけです。

さまざまな文化の発信源となったタワーレコード渋谷店(画像:(C)Google)

 そこで人気を獲得したアーティストたちは、テレビや新聞、雑誌ではなくレコードショップにおいてあるチラシやミニコミ誌を通じて、口コミでファンを獲得していったのです。

 渋谷系が広く認知され始めた時期の『宝島』1994(平成6)年2月9日号では、こんな風に解説をしています。

「これらのアーティストたちは最近、CMやTV番組の主題歌等で広く話題になってきているが、そうなる以前からHMV渋谷では確実に売れ続けてきた。独自のディスプレーや、フリーペーパーの発行、インディペンデント・まあジンの販売等を通して、現場(店頭)からいち早く情報を提供し、イイ音楽や新しいモノを求めている街の子のアンテナを刺激する」

レコードを再びスターの座に押し上げた名機


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