「どこにも居場所がない」と感じる、ひとりぼっちさんに伝えたいこと【連載】東京・居場所さがし(3)

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「どこにも居場所がない」と感じる、ひとりぼっちさんに伝えたいこと【連載】東京・居場所さがし(3)

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いしいまき

漫画家、イラストレーター

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約1400万人もの人が住んでいるのに、ほとんど交わることのない東京は「孤独」を感じやすい街といえるでしょう。たったひとり暮らす大都会で、どうすれば自分の居場所を見つけられるのか。漫画家でイラストレーターのいしいまきさんが「脱ひとりぼっち」の方法を模索します。

「居場所」をつくる方法、あります。

 たくさんの人が住まう東京。

 人の数が多いだけあり、どうやら面白いグループやコミュニティーがあるらしい。それはなんとなく知っている。でも自分にしっくりくる居場所なんてあるのかな……そう思って動くのがおっくうな人も多いのではないでしょうか。

 そんな人におすすめなのは、思い切って自分で「居場所を作ってみる」という方法です。

 ……いやいやいや「居場所がない」と孤独を感じて動けずにいる人間にそんなことできるわけないだろ!!

 そうおっしゃらずに、ちょっと聞いてはくれませんか。

 私(いしいまき。漫画家、イラストレーター)はもともと引っ込み思案で内気な性格。それでも、これまで居場所を求めてさまざまな集まりやイベントに参加しているうちに、「私だったらこうしたいな」とか「私が集まりを開いたらどんな人が来てくれるかな」という気持ちが芽生えてきました。

 初めての人たちと知り合うことに徐々に慣れて「東京・居場所さがし」の第2ステージに入ったという感じです。

 2020年4月現在、東京は新型コロナウイルス感染拡大防止のため外出自粛が求められています。でもこの混乱が落ち着いたとき、一歩踏み出すきっかけにしてもらえたらうれしいです。

幹事の役割は、実は楽しい。その理由とは?(いしいまきさん制作)



 実は私は、もともと幹事をすることが好きなのです。

 なぜかというと、幹事をすることは意外や意外、メリットがたくさんあるということに気づいたから。まだ上京する前、ときどき東京に遊びに来たとき漫画家ランチ会という会を開いていました。

 そこで主催をしたときに感じたメリットは以下の通りです。

幹事を買って出ることのメリット四つ

1.参加場所、時間を自分の好きな時間に決められる

 もし決まった何人かのメンバーを呼びたい場合は「来られない日」を聞いてそこを外して企画すれば問題ありません。

2.好きなお店を選べる

 これも同様に主催者特権で好きなお店を選べばいいのです。禁煙、駅近、ドリンクバーがあるカフェを選んでいました。

3.好きな人が呼べる

 私の場合、気になっていた漫画家さんに会ってみたいけどTwitter上でしかやりとりがない……いきなりふたりで会うのはハードルが高いし無理だよね……そんなときに「同業者で集まってランチをするのですがいかがですか」と声をかけると、その人も参加してくれる確率が上りました。相手にもメリットを提供できることは大事ですね。

4.なんだか感謝される

 好きな場所、時間、お店を選んだにもかかわらず、参加者の皆さまには「企画してくれてありがとう」「こんな会があったらいいなって思ってたんだ」と喜んでもらえます。あらかじめ日時や店、会のコンセプトが決めてあるということは、参加できるかできないかだけ考えればいいので参加者にとっても返事がしやすいのです。

 ここで大事なのは、全部決めてから参加者を募ることです。たくさんの人に意見を求めながら日時やお店を決めていくと疲弊して地獄……。主催者(幹事)なんてやるんじゃなかった……となります。

 そんなわけで会を主催する楽しさにハマっていたのですが、漫画家友達はだいたい結婚し、子育てが忙しそうになったためいったんお休みすることとなりました。

 そこで挑戦したのが、「イベントの開催」です。

目指したのは、「深夜食堂」の世界観

『0円で生きる』などの著書があるライターの鶴見済さんが主催している「不適応者の居場所」という集まりに参加したときに、たくさんの人がいらっしゃっていて「こんなに居場所を求めてる人がいるんだ!」と驚き、きっかけを与えていただきました。

 もちろん、鶴見さんにカリスマ性があるからファンが多く来ているというのはあるとは思うのですが。私は私の漫画家のネットワークで「居場所を探している人の交流の場を設けたい」と思ったのでした。

 初回は決まった人に声をかけるのではなく、不特定多数の人にお会いしたいと思いました。

 コンセプトは「東京に住んでいるが、人との交流関係が希薄、でも人としゃべりたいという人が集まって話す」という感じです。ドラマ「深夜食堂」の世界観に憧れていたので、私はスナックのママという設定で、お酒と焼きそばとポテトサラダを提供することにしました。

初めてのイベントバー開催に奔走した思い出(いしいまきさん制作)



 私が会場に選んだのは、自宅がある小金井市からそう離れていないイベントができるバーです。自分自身何度も足を運んでおり、少し慣れた感じもあります。

 都心から離れており、来ていただくにはなかなか遠い場所かもしれません。しかしここは強気で、自分にとって居心地のいい場所に設定したほうがいいと思いました。無理して自分の家から遠い都心などで行うと、疲れて居心地が悪くなり本末転倒になってしまいます。

 初めてのイベントで、私自身に知名度はなし、都心からも離れているということでしたので、人が集まってくれるかはかなり微妙でした。でも、どうしてもたくさんの人に来ていただきたかったので、告知をがんばることにしました。

ひたすら焼きそばを焼き、それでも満たされた初開催

 店までの写真入りの地図、当日のメニュー、どなたでも参加できることを描いた漫画をTwitterに載せたところ、たくさんの人に見てもらえ17人に来ていただくことができました。

 しかし17人もの人に来ていただくとなると、ひとりでは接客が難しく、ずっとその日のメニューの焼きそばを作り続け、あまり会話がままならないことになってしまいました。

 しかし、集まった人同士は楽しそうに会話しており、それを眺めるだけでも満たされた気持ちになりました。今となってはいい思い出です。

 その後も場所を変えて何度かイベントを開催しました。はじめのようにたくさんの人に来ていただくことはできなくなりましたが、毎回フードを考えたり、告知漫画を描いたりするのは大人の文化祭のようで楽しかったです。

 その後、特定のバーで定期的にイベントをするようになり、参加者だけでなく、ほかのイベントをやる人たちとも仲良くなることができました。合同でイベントをやったりもしました。

 会を主催するのはかなり勇気がいることでしたが、やってよかったなと思っています。あまり難しく考えず、まずは動いてみる、やってみることが大事だと思いました。その後何か違うなと思ったら調整すればいいのかな、と。

自分に合った会が、だんだんわかってくる

 実際、私も今では少しイベント疲れが出てきて、ゆるくiPadでお絵かきする会などにシフトしました。提供はドリンクのみとし、お話もスナックのママのように頑張らず、ゆるゆるとおしゃべりする会。参加者も4~7人くらいに落ち着きました。こっちのほうが性に合っているようです。

 でもそれもやってみて初めてわかったことなので、「あの時イベント開催に挑戦した自分、グッジョブ!」という感じなのです。

 めちゃくちゃ告知をがんばらないかぎり、意外と「たくさん人が来て困る」ということはありません。なので「ひとりでも来てくれたらラッキー」くらいの気持ちで、皆さんもゆるい居場所の会を主催してみるのはいかがでしょうか。

 今は、新型コロナウイルスの感染拡大によって外出そのものがしづらいと思いますが、状況が落ち着いてきたときには、ぜひ。きっと新しい出会いが待っているはずです。

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