新型コロナ禍で乱れる「新学習指導要領」 都内公立小中学校は今後どうなる?

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新型コロナ禍で乱れる「新学習指導要領」 都内公立小中学校は今後どうなる?

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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コロナ感染拡大でGW明けまで延期された、都立高校・都立中高一貫高の休校措置。その余波について、教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

5月6日まで延期

 2020年度がスタートしました。しかし、入社式や大学の入学式が軒並み中止や規模縮小になるなど、新型コロナウイルス感染拡大の影響は各方面に及んでいます。

 感染者が増加するなか、東京都教育委員会(新宿区西新宿)は4月1日(水)、臨時の会議を開き、都立高校や都立中高一貫高の休校措置を5月6日(水)の連休明けまで延期する方針を決定しました。

東京都教育委員会の入る東京都庁第二本庁舎(画像:(C)Google)



 始業式や入学式については、各学校が時差登校や簡略化して実施するものの、今回の決定が都内の公立小中学校の判断に影響を与えることは間違いありません。

全地域と足並みをそろえるか否か

 都立西高校(杉並区宮前)は4月6日(月)の始業式を、学年ごとに登校時間をずらして実施することを決定しました。翌7日の入学式は保護者の出席を見送り、教職員と新入生で簡略的に実施します。そして都の方針通り、4月8日から5月6日を臨時休校としました。

杉並区宮前にある都立西高校の外観(画像:(C)Google)

 小中学校を通常通りに再開するのは、危険と隣り合わせです。都立高校の取り組みと同様のことが、都内の公立小中学校で起きると今後予想されます。

 しかし、同じ東京都でも感染者数に大きな隔たりがあります。東京都が4月1日に公表した3月31(火)日時点の23区・市町村別の感染者数によると、世田谷区や港区などの都心に偏っていることが明らかになりました。

 感染者の多い地域で新学期のスタートを待つ保護者は、不安を感じていることでしょう。公立小中学校は義務教育のため、地域によって授業再開の時期が異なるのは避けたいはずです。

 全ての地域と足並みをそろえることが理想的ですが、感染者が少ない市町村でも都心と同じような措置を取るのか、難しい判断が迫られます。

教職員の努力にも限界が

 学校生活は、「集団生活」です。

 感染拡大が続くなか、学年によって登校時間を変えて昇降口の混雑を防ぐ程度のことはできます。しかし、テレビ番組で出演者同士が間隔をあけているようなことを、教室内で再現するのはほぼ不可能です。

 また給食の配膳や食事をとる際の机の配置など、問題は山積しています。休み時間の過ごし方もクラスメートと距離を置いて話をしたり、至近距離で遊んだりしないよう、教職員たちが指導をすることも考えられます。

学校生活は「集団生活」(画像:写真AC)



 たとえマスクを付けても、低学年の生徒が常に正しく付けていられるのか、心配は尽きません。教職員たちがいくら神経をとがらせても、完全に防ぐことは極めて難しいと捉えるのが妥当です。

 一般的な認知度として、年配者や基礎疾患のある成人は重症化しやすい一方、子どもは重症化しにくいと言われています。しかしこの状況下で、保護者は安心して子どもを学校へ送り出す気にはなれないはずです。

新学習指導要領にどう対応するのか

 2020年度は小学5年生からの英語教科化やプログラミング教育など、新学習指導要領を全面実施する年です。

 その結果、小学3年生以上の学年で1回45分の授業が35回分も増えています。

プログラミング教育のイメージ(画像:写真AC)

 特にプログラミング教育は、単独の科目として習うのではなく、既存の科目の中でその思考を学ばせる必要があります。東京都教育委員会が研修を重ねて準備しているため、学校の休校延長措置が長引けば、練り直さなければならないのです。

臨時休校やむ無しも……

 子どもたちの安全を考えれば、臨時休校もやむ無しというところでしょう。

 しかし、一斉休校となった年度末とは異なります。2020年度からの授業数増加で教えること、習うことが2019年度以上に多くなった事実を踏まえると、休校措置による教育現場の混乱は避けられません。

一斉休校のイメージ(画像:写真AC)



 時間をかけて作成した年間予定をもう一度作り直し、運動会など練習時間を取られる大きな行事を取りやめ、授業数を確保せざるを得ない状況になるのです。

休校を繰り返す可能性も

 新型コロナウイルスは感染力が強いため、学校で万が一の事態が起きないとは断言できません。

 新学期がスタートしても教職員または児童や生徒に感染者が出た場合、学校が閉鎖され、2週間程度の休校措置となると予想されます。新たな感染者が出たら、「再度休校になり、そして再開する」の繰り返しが続くでしょう。

 終息が見えない場合、臨時休校と常に隣り合わせのため、教職員や子どもそして保護者にとって心休まらない状態が続きます。

収束までのイメージ(画像:写真AC)

 感染拡大とはいえど、必ず終わりは来ます。しかし、それがいつになるのか現段階では見通しがつきません。

 子どもの健康と学習の遅れ、どちらが重要なのかは言うまでありません。

 しかし2020年度の学習進度が思うように進まない前提で夏休みの短縮化を実施したり、民間企業の力を借りてICT教育を進めたりするなど、あらゆる角度からこの難局を乗り越えるため、柔軟な対応力が求められています。

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