2年前の「反則タックル問題」で志願者大幅減 日本大学は今年復活を果たしたのか?

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2年前の「反則タックル問題」で志願者大幅減 日本大学は今年復活を果たしたのか?

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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2018年5月の「反則タックル問題」で志願者数が激減した日本大学。問題からもうすぐ2年。2020年入試の志願者数はどうなったのでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

「反則タックル問題」からもうすぐ2年

 年明けから本格化した大学入試も終わり、あとは新年度を待つばかりとなりました。2020年度からはセンター試験の代わりとなる新しい「大学入学共通テスト」が実施されるなど、大学入試への注目度は高くなりそうです。

 さて、都内の私立大学に目を向けると定員厳格化やセンター試験最終年ということもあり、受験生の安全志向がささやかれました。

 その中でも世間の目を集めたのが、日本大学(千代田区九段南)です。

千代田区神田三崎町にある日本大学法学部の外観(画像:(C)Google)



 2018年5月に起きたアメリカンフットボール部の「反則タックル問題」で、志願者数を落としてから果たして復活するのか――だったのではないでしょうか。日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)の中でも群を抜く知名度を誇る日本大学の志願者数の変化を探っていきます。

順調に増加したAO組と一般入試組

 日本大学の第一部(昼間部)全学部の2017年度入学試験で、センター試験利用を含む一般入試での志願者数は11万2003人でした。AO志願者数は1856人に上り、公募推薦の応募者も合わせて日本大学の志願者は約11万5000人と、日本トップクラスの規模になっています。

 この傾向は2018年度入学試験でも受け継がれ、一般入試とセンター試験利用者の志願者は11万4000人を超し、AO志願者数も2000人を突破するなど、受験生の日本大学人気が高まっていました。

 16学部87学科と国内有数の大規模総合大学であり、大学で所有する書籍は早稲田大学や慶応大学よりも多く、国内の私立大学では1位です。

 キャンパスは都内を中心に広範囲に存在し、充実した施設を誇っています。受験生にとっては多種多様な専攻を選択できる上、知名度も高く魅力的に映ります。

千葉県船橋市にある工学部船橋キャンパスの外観(画像:(C)Google)

 都内の私立大学の定員厳格化を背景に、一般入試を避けて日本大学へ手堅く入学したい受験生が増加したのは当然の結果です。

騒動の影響が直撃した2019年度入試

 しかし2018年度が始まってすぐの5月、アメリカンフットボール部に関わる「反則タックル問題」の報道がマスメディアで連日取り上げられる事態に。何度も問題映像が流され、日本大学のイメージ低下は避けられないものとなりました。

アメリカンフットボールのイメージ(画像:写真AC)



 時期的にもAO入試のエントリー提出前に起きた事件で、進路選択を考える受験生への影響は当初から危惧されていました。不安は的中、余波は受験にも及びました。

 2018年度まで順調に伸びていた流れから一転、2019年度の入学試験の志願者数は激減しました。一般入試は10万人を割り込み、AO入試の志願者数も1735人伸び悩んだのです。

 いずれの入試も2018年より減少したことを考えると、一連の騒動のインパクトは相当なものでした。日本大学の知名度をもってしても、受験生やその保護者を引きつけることができなかったのです。

 騒動の影響はすさまじく、受験生の「日大離れ」がささやかれました。大学の学部内や教育現場で起きた問題ではないものの、一度落ちたイメージを回復するにはかなりの時間がかかります。

2020年度の一般入試から見えること

 そんな日本大学ですが、2020年度入学試験は復活を果たしたのでしょうか。

 結論から言うと、一般入試での志願者数は2019年を大きく上回る11万3184人となりました。

 多くの学部で大幅に志願者数を増やしていますが、最難関である医学部は減らしています。しかし、定員厳格化や2021年度の「大学入学共通テスト」への不安から難関大学・学部を避ける傾向が強まったと考えられるため、医学部に関しては2021年度の動向を注視する必要があります。

日本大学法学部の所在地(画像:(C)Google)

 一部の学部では減少したものの、看板学部である法学部の一般入試志願者数は2019年より約2000人増加と、復活を印象付けています。

不祥事が志願者数を左右する時代に

 2020年3月19日(木)現在、AO入試の結果はまだ公表されていませんが、一般入試での志願者数が増加したことを踏まえると、AO入試でも2019年より増えていると予想されます。

 2019年は騒動の影響がそのまま入試の志願者数に出てしまいましたが、事が沈静化すると1年で人気は復活しました。

 繰り返しになりますが、志願者数が減ったのは教育機関としての日本大学の評価が落ちたからではありません。2020年の入試で受験生が戻ってきたのは、そうした点が何よりも大きかったと考えられます。

不祥事での記者会見のイメージ(画像:写真AC)



 その一方、大学に関する大きな不祥事は志願者数を左右するほど影響力があると世の中に知らしめた面もあります。

他の大学も油断できない

 2020年度の入試は不人気から脱した流れですが、また何か起きれば風向きは変わってしまいます。少子化に直面する大学は、そうした状況でも優秀な学生を集めたいのが本音です。

「反則タックル問題」を見てわかったのは、何かが起きれば優秀な学生はクモの子を散らすように他の大学へ志願変更するということです。

油断するべからず(画像:写真AC)

 この問題は日本大学に限らず、他の大学にとっても現実を突き付けられる契機となったのではないでしょうか。

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