実施or中止? 都内有名大学は新型コロナで「卒業式」をどう乗り切るのか

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実施or中止? 都内有名大学は新型コロナで「卒業式」をどう乗り切るのか

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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新型コロナウイルスの影響で、都内イベントの中止が相次いでいます。そんななか、都内有名大学の卒業式はどうなるのでしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

イベントも中止せざるを得ない状況に

 出会いと別れの春――。3月は卒業式が行われ、仲間たちと学び過ごした校舎から巣立つシーズンです。しかし2020年の3月、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、都内の大学は卒業式を軒並み中止とするなど、例年とは異なる別れの季節を迎えています。

 どの大学も苦渋の決断の末、中止の決定を下していますが、東京都内の有名大学のうち東京大学(文京区本郷)など数校では形を変えて式を行い、卒業生を送り出す予定です。

東京大学の外観(画像:(C)Google)



 MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)の中でも、明治大学(千代田区神田駿河台)と法政大学(同区富士見)は例年武道館で卒業式を行ってきましたが、オリンピックとパラリンピックに向けた改修工事のため、本年度は両国国技館(墨田区横網)で行う予定でした。しかし、こちらも昨今の情勢から式の中止を決定しています。

 会場を借りて式を行うことは、短期間で大勢の人たちが出入りすることを意味しています。運営側が掃除や除菌を十分に行ったとしても、目に見えないウイルスを完全に除去することは極めて難しいでしょう。

 また卒業式に参加する学生や保護者が予防を行ったとしても、感染を防げるとは言い切れません。大学側のこうした決断は致し方ないと言えます。

大学や会場の規模に無関係

 しかし、都内の全ての大学が大きな会場で卒業式を行っているわけではありません。

 東京外国語大学(府中市朝日町)や東京芸術大学(台東区上野公園)のように、敷地内のホールや講堂で式を例年実施する大学もあります。

 しかしこちらも軒並み中止になっており、学生の規模やホールの大きさに関係なく見送られています。

東京外国語大学の外観(画像:(C)Google)



 慶応義塾大学(港区三田)とともに私立大学の双璧をなす早稲田大学(新宿区戸塚町)でも、2018年12月に完成した大学敷地内の早稲田アリーナで2日間かけて卒業式を行う予定でしたが、両日ともに式の中止を決定しています。

 敷地内の施設を使う場合でも、大勢の人が参加する場には変わりはありません。無症状者や軽症者から集団感染が発生する可能性もあり、大学としても起こりうる最悪の事態を想定して見送る判断を下しています。

 もちろん、試行錯誤の末に卒業式を行う大学もあります。

母校を去る学生にできることとは

 東京大学など都内の六つの有名大学は規模を縮小したり、インターネット配信による卒業式を行ったりすることを決めました。

 もちろん、例年のように卒業生や保護者、後輩が集まる華やかなものではありませんが、母校から巣立つ学生への少しばかりのはなむけを贈ろうとしています。

 慶応大学は卒業式の中止を決定したものの、インターネット配信で塾長の式辞など予定されていた式の一部を配信します。

東京工業大学の外観(画像:(C)Google)

 東京工業大学(目黒区大岡山)も卒業生が一堂に集まる式を見送った代わりに、大学の公式YouTubeチャンネルから学長の祝辞をインターネット配信することになりました。

出席は代表者限定の大学も

 安田講堂での卒業式が毎年ニュースで取り上げられる東京大学は、卒業生の出席について各学部の代表者限定とし、式の様子はインターネット配信することを決めました。他の卒業生は講堂内こそ入れないものの、マスクを着用して感染防止を徹底した上でキャンパスに来ることは可能となっています。

 中央大学(八王子市東中野)でも、多摩キャンパス(同)と後楽園キャンパス(文京区春日)それぞれの卒業式は東京大学と同様、各学部代表者のみの出席とし、式をオンデマンド配信を行います。

 代表者への授与式が行われるため、出席していないものの卒業式の雰囲気をネットから感じることができる取り組みといえるでしょう。

 その一方で、通常の卒業式のように学生が参加をする式を行う大学もあります。

一橋大学の外観(画像:(C)Google)



 一橋大学(国立市中)は大学のシンボルでもある兼松講堂で、各学部20分程度の入れ替え制による式を行います。保護者や親類縁者は大学構内に入れず、卒業生のみに限定。時間を大幅に短縮し、なるべく通常の式に近い形で行います。

 また電気通信大学(調布市調布ケ丘)は式を短縮し、卒業生や教職員のみで実施します。

 このように完全に中止とせず、感染を遠ざける措置を取りつつ式を行う大学もあるのです。

「人生何が起こるか分からない」を教訓に

 新しいステージへと進む学生にとって、卒業式は一生の思い出になるイベントです。本年度の都内の卒業生の多くは、残念ながら例年のような華やかな式に恵まれませんでした。

電気通信大学の外観(画像:(C)Google)

 緊急事態は誰も望みませんが、「こういう出来事があったからこそ」大学生活の終わりを忘れないという学生も多いでしょう。

 卒業生には大学生活を一緒に過ごしてきた仲間や思い出、人生は何が起こるか分からないという教訓を胸に、新しい道を歩んでもらいたいと願っています。

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