もはや「焼き鳥」はおしゃれなデートアイテム? 鍵はカウンターと希少部位、都内最新事情に迫る

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もはや「焼き鳥」はおしゃれなデートアイテム? 鍵はカウンターと希少部位、都内最新事情に迫る

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有木真理

ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員

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もくもくした煙の中で食べるイメージがいまだ強い焼き鳥。そんな焼き鳥ですが近年、そのようなイメージを覆すような、デートにぴったりの店が増えているといいます。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員の有木真理さんが解説します。

老若男女問わず愛されるメニュー

 焼き鳥と聞くと「赤ちょうちんで煙もくもく」のイメージがあり、居酒屋でも定番中の定番メニューです。

 2000~5000円程度の居酒屋使いでは、焼き鳥は「ゴールデンライン」。安い、うまい、気軽に行けるので、会社帰りの男性がネクタイを緩めて、ビールをぐびぐび飲みながら楽しむシーンが真っ先に思い浮かびますね。

「おしゃれカウンター焼き鳥」で出される素材イメージ(画像:プレコフーズ)



 そのほかにも、宴会やお友達同士のワイワイした飲み会、「おやじ」のカウンターひとり飲みなど、普段使いの飲食シーンに、焼き鳥は今も昔も欠かせない存在。また、子どもから年配者まで老若男女問わず、愛されるメニューです。

ハレの飲食シーンにも使える店が増えている

「国民食」と言っても過言ではないこの焼き鳥が今、大きく変化しているのです。

 焼き鳥はコンビニなどで気軽に購入可能ですし、レシピ動画サイトなどを見れば、自宅で簡単に楽しむこともできます。そのような中食(市販の弁当や総菜を自宅などで食べること)・内食との差別化が求められる外食の焼き鳥が、今、進化しているのです。

 外食は前述のようなシーンのほかにも、女子会やデート、接待などがありますが、このような「ハレ」の飲食シーンに普段使いの焼き鳥店はちょっと不向きかも知れません。

カップルで食事するイメージ(画像:写真AC)

 ところが今、ハレの飲食シーンにも使える、ひいてはわざわざ行きたい、ちょっと襟を正していきたいお店が増えているのです。

 筆者(有木真理。ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員)は、焼き鳥店を「デート使いに最適な業態」と考えます。その理由とともに、昨今の焼き鳥事情も解説していきたいと思います。

おしゃれなカウンター焼き鳥がデートに最適

 昨今の焼き鳥事情にはふたつの特徴があります。

 ひとつ目は、スタイル(業態)の変化。昨今は、前述のような焼き鳥店の定番とも言える煙もくもく系の「ザ・居酒屋」ではなく、スタイリッシュでおしゃれなカウンターの焼き鳥店が増えているのです。

 その空間はもちろんのこと、ロケーションも六本木や恵比寿の路地奥、小さなビルの地下など隠れ家的なお店が多く、そのお店に向かうプロセスさえもがデートを盛り上げてくれるのです。

シャンパンに合う焼き鳥店が増えている(画像:写真AC)



 またお店に入れば、大衆店で定番の「取りあえず、生(ビール)」ではなく、シャンパングラスでしゅわしゅわとした泡と一緒に軽いおつまみを頂きながら、焼き鳥が焼けるのを待ちます。

 具材は1本1本丁寧に焼かれ、まるですし店のように部位の特徴や食べ方を丁寧に説明しながら提供するため、そのおいしさは増します。筆者はこれを「おしゃれカウンター焼き鳥」と名付けました。

「おしゃれカウンター焼き鳥」の魅力とは

「おしゃれカウンター焼き鳥」の火付け役ともいえる「鳥幸」では、ソムリエが厳選したワインを提案してくれ、焼き鳥とワインのペアリングを楽しめます。

 ペアリングはお酒を選ぶ手間が省け、会話も中断されないため、ふたりでおいしい焼き鳥と会話に集中できるのではないでしょうか。

「鳥幸」のメニューと店内(画像:東京レストランツファクトリー)

 この「おしゃれカウンター焼き鳥」は、お店を選ぶ男性もうれしいはず。

 なぜなら、高級なフレンチやすしのように堅苦しくなく、マナーなども気にしなくていいため、気軽に「こなれ感」が出せるからです。さらに価格帯は7000~1万円が主流で、比較的リーズナブル。

 フレンチやすしの高級店であれば3万円以上の店もざらに存在しますが、焼き鳥に関しては、高級店といえども1万5000~2万円程度で、安価に特別感・高級感を味わえる業態と言えるのです(例外もあります)。

 また、カウンターでの食事はまさに黄金のパーソナルスペース。ふたりの距離を縮める上でも、最適な席配置と言えるのではないでしょうか。

外食でしか楽しめない希少部位に注目

 ふたつ目の特徴は、希少部位を扱うお店が増えていることです。

 前述の通り、外食は中食・内食との差別化が求められています。モモやネギマ、砂ズリなどの定番部位は今や気軽にどこでも楽しめますが、入手困難な上に、調理方法や食べ方が難しい希少部位を味わうのは、外食ならではないでしょうか。

 筆者が上席研究員を務める「ホットペッパーグルメ外食総研」のアンケートにおいて、「希少部位」についての興味関心をヒアリングすると、老若男女問わず、半分以上の人が興味を示しています。中でも20代は79.8%、30代は73.3%と、より若い層の興味関心が高いことが分かりました。

「ホットペッパーグルメ外食総研」が行ったアンケート調査「『希少部位』と聞くと食べたくなりますか?」の結果(画像:リクルートライフスタイル)



 希少部位は見た目も、その希少性というストーリーも、感度の高い若者に支持されやすいのかもしれません。またそれを会員制交流サイト(SNS)に投稿することでも希少部位のブームが加速しているのかも知れません。

素材の「うんちく」を聞きながら食べる

 ところで、希少部位とはそもそも何でしょうか。

 その名の通り、希少(珍しい、ごく少ないこと)な部位ですが、鳥は牛や豚と異なり個体が小さいため、食すことのできる分量がそもそも少なく、結果、その価値が高まるのです。

腰骨の付け根の筋肉「ソリレス」(画像:本家あべや)

 最近人気急上昇の「ソリレス」(腰骨の付け根の筋肉)は、ピンポン玉くらいのサイズですが鶏は2本足であるため、1羽からふたつしか取れません。

 串1本に三つ指せば、1.5羽分必要となります。ここは最も使う筋肉であるため、程よい歯ごたえがたまらなくおいしいのです。「ソリレス」の語源はフランス語。「愚か者はそれを残す」という意味で、こんなにおいしいものを食べないなんて本当に愚かだとわれているのです。

 また、「こころのこり」。こちらはハツ(心臓)につながる血管の部分です。関西では「ハツモト」と言われて昔から食べられていますが、東京では比較的珍しい部位です。味はあっさりしていますが、かめばかむほどうまみが増します。ピノノワール(赤ワイン)とのペアリングもおすすめですーーと先日、カウンター焼き鳥のソムリエに教えてもらいました。

 ほかにも、たくさんの希少部位がありますが、このような「うんちく」ともいえるストーリーを聞きながら食べる焼き鳥は格別です。デートにおいても、一緒に「へ~」と驚きや発見を共有できるので、会話も盛り上がるのではないでしょうか。

しかも低カロリー・高たんぱくで女性にOK

 このような希少部位は、ぜひこだわりの強いお店で食べてほしいと思います。

 希少部位を取り扱うカウンター焼き鳥の草分け的存在である「酉(とり)玉」は、常時20種類程度の希少部位が楽しめます。食事を終え、お店を出る頃には、「焼き鳥博士」になっているかも知れません。

さまざまな部位が並べられた「酉玉」のウェブサイト(画像:ビータス)



 また鶏は低カロリー・高たんぱくと言われ、ダイエット中の女性でも安心してたくさん食べられるため、女性に喜ばれること間違いなし。初デートはかしこまりすぎないけど、特別感がある「おしゃれカウンター焼き鳥」がおすすめです。ぜひ「こなれ感」を演出してほしいと思います。皆さんの成功を祈ります(笑)。

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