岩崎宏美『思秋期』――深川の歌姫による物憂げかつ朗々とした歌声 江東区【連載】ベストヒット23区(13)
2020年3月1日
知る!TOKYO人にはみな、記憶に残る思い出の曲がそれぞれあるというもの。そんな曲の中で、東京23区にまつわるヒット曲を音楽評論家のスージー鈴木さんが紹介します。
岩崎宏美が見た青春とはどのようなものだったか
が、今回「ベストヒット江東区」に推したいのは、筒美京平ディスコ系ではなく、三木たかしが作曲した名曲 = 『思秋期』(1977年)です。作詞は変わらず阿久悠。王貞治が「ホームラン世界新記録」の通算756号を打った日の2日後 = 1977年の9月5日の発売。

高校卒業から半年ほどたって、もうすぐ19歳になる女の子の、青春時代を振り返るモノローグが、同じく19歳ちょっと手前の岩崎宏美の、物憂げかつ朗々(奇妙な表現だけれどそういう感じ)とした歌声と相まって、見事に美しい世界を生み出します。
最強のパンチラインは――「青春はこわれもの 青春は忘れもの」。
深川出身のチャキチャキした女の子が東京湾を見ながら、青春を振り返っている間に、目の前に広がる海は埋め立てられ、いくつもの公園が広がり、いくつものライブハウスが作られ、壊されました。
そして、その女の子は、ひとりの女性になり、時が過ぎて還暦を超えても、まだ物憂げかつ朗々とした歌声を響かせているのです。
おすすめ

New Article
新着記事
Weekly Ranking
ランキング
- 知る!
TOKYO - お出かけ
- ライフ
- オリジナル
漫画