深夜に外食する人が1年間で「2割以上」も減っている本質的理由

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深夜に外食する人が1年間で「2割以上」も減っている本質的理由

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稲垣昌宏

ホットペッパーグルメ外食総研・上席研究員

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外食市場に関する調査を行う「ホットペッパーグルメ外食総研」の上席研究員 稲垣昌宏さんが飲食店の深夜営業の利用実態や、深夜営業への考えについて解説します。

24時間営業廃止が進むファミレス業界

 外食大手のすかいらーくホールディングス(武蔵野市西久保)は2020年1月、「ガスト」「ジョナサン」をはじめとする国内全店舗で24時間営業を廃止すると発表しました。

 今後は、顧客ニーズが高いランチやディナーの時間帯に人的資源を集中させ、ITデジタルを活用したサービスの抜本的改革を図ることで、顧客満足度の向上につなげるとしています。

ファミリーレストランのイメージ(画像:写真AC)



 2017年にはすでに「ロイヤルホスト」を運営するロイヤルホールディングス(世田谷区桜新町)が24時間営業を全廃しており、今後も24時間営業廃止に追随するファミレスチェーンは増えると想定されています。

月間で深夜外食した人は10.5%

 筆者が上席研究員を務める、リクルートライフスタイルの外食市場に関する調査・研究機関「ホットペッパーグルメ外食総研」は2019年10月、飲食店の深夜営業の利用実態や、深夜営業への考えについて独自に消費者調査を行いました。

 まず、飲食店での深夜営業(本調査では0~5時の利用と定義)について、利用率を調べたところ、2019年9月の外食において、深夜営業を利用したことがある人の割合は10.5%、利用した人の平均深夜利用回数は2.9回という結果でした。

深夜営業の時間帯の外食有無に関する調査結果(画像:リクルートライフスタイル)

 性年代別で見ると最も利用者の割合が多かったのは、20代男性で17.9%。次いで、30代男性が16.6%、さらに20代女性で14.8%となっています。

 年代が若いほど深夜飲食の利用者の割合が多い傾向にありますが、利用した人の平均深夜利用回数では、40代男性が3.4回と最も多い結果でした。

 圏域別で、深夜営業を利用したことのある人の割合が最も多かったのは関西圏で11.4%。ただし、利用した人の平均深夜利用回数は、首都圏が3.1回と最も多いことがわかりました。

一定ニーズがある「残業後の深夜飲食」

 深夜飲食を行った人にその理由やシーンについて聞くと、最も多かった回答は「飲み会後の2次会や締めの食事等で」で28.0%。また、2位は「残業で仕事の終了が遅くなった」が17.6%、3位は「仕事以外の所用・用事で遅くなった」が12.2%という結果でした。

深夜営業の時間帯に外食した理由・シチュエーションに関する調査結果(画像:リクルートライフスタイル)



 性年代別で見ると、20代男性では「飲み会後の2次会や締めの食事等で」が37.3%と多い他、「残業で仕事の終了が遅くなった」が20代男性で32.2%、30代男性で32.5%と多い傾向でした。

 冒頭のすかいらーくホールディングスが、深夜営業縮小の理由のひとつに「働き方改革」をあげていましたが、いまだ残業による深夜飲食も一定割合いる実態が明らかになっています。

「働き方改革」の浸透も背景に

 一方、1年前と比べた深夜外食の利用機会の増減については、「とても増えたと思う」「やや増えたと思う」の合計である「増えた・計」は4.7%に対し、「とても減ったと思う」「やや減ったと思う」の合計である「減った・計」は23.3%と、深夜の外食が減少傾向であることがわかりました。

1年前と比べた深夜営業の時間帯を利用する機会の変化に関する調査結果(画像:リクルートライフスタイル)

「増えた・計」が最も多かったのは20代男性で11.3%、「減った・計」 が最も多いのは60代男性で29.1%でした。

 また圏域別には、東京を中心とする首都圏で「減った・計」が23.8%と他の圏域よりも多くなっており、「働き方改革」の浸透が東京でいち早く進んでいる可能性が考えられます。

深夜営業の必要性を感じる人は13.5%

 続けて、飲食店の深夜営業について必要性を感じるかどうかを聞くと、「非常にそう思う」「まあそう思う」の合計の「そう思う・計」は13.5%。「まったくそう思わない」「あまりそう思わない」の合計の「そう思わない・計」は68.3%と、必要性を感じない人が多数派である一方で、一定の市場はあることがわかります。

飲食店の深夜営業に対する考え/飲食店の深夜営業は、自分に必要かどうかに関する調査結果(画像:リクルートライフスタイル)



 性年代別では、20代男性で「そう思う・計」が最も多く27.7%。逆に60代女性で「そう思わない・計」が最も多く89.6%。年代別には男女とも年代が若いほど自分にとっての必要性を感じる人が多く、前出の1か月間の深夜外食の利用者層と同じ傾向となっています。

 圏域別では、首都圏は「そう思う・計」が3圏域中最も多い13.9%。単身世帯が多いことと、深夜飲食の必要性にはなんらかの相関がありそうだと見ています。

深夜料金、アリかナシか

 ファミリーレストランではこのところ、いくつかのブランドが深夜料金を設定したことについて、インターネット上などで賛否両論が上がりました。この調査でも深夜外食の際に追加で深夜料金が発生することについて、仕方ないと思うかを聞きました。

飲食店の深夜営業に対する考え/飲食店で深夜料金(追加料金)が発生しても仕方ないと思うかどうかに関する調査結果(画像:リクルートライフスタイル)

 結果は、深夜料金の発生が仕方ないという考えについて「非常にそう思う」「まあそう思う」の合計の「そう思う・計」が57.6%、「まったくそう思わない」「あまりそう思わない」の合計の「そう思わない・計」が17.4%と、「仕方ないと思う」人が多数派となりました。

 ただし、2019年9月に一度も深夜外食をしていない人が9割近くいることを考えると、「そう思わない・計」の17.4%が少ないと言い切ることもできなく、利用者にはより切実な問題と捉えられているかもしれません。

 実際に、利用度の高い20~30代男性では「そう思う・計」が平均より少ない結果となっており、タクシーのように一律で深夜料金がとられる場合とは違って、消費者側がお店を選ぶ際、深夜料金がかからないお店を選べるため、飲食店側はより導入に慎重にならざるを得ない実態があると考えられます。

●調査概要
調査方法:インターネットによる調査
調査対象:20~69歳の男女、首都圏は東京都(一部除外)、神奈川県(一部除外)、埼玉県(県西の一部除外)、千葉県(県東、県南の一部除外)、茨城県の一部に在住(おおむね90分通勤圏)者が対象
調査期間:2019年10月1日(火)~2019年10月8日(火)
有効回答数:1万0029件(首都圏5740件、東海圏1532件、関西圏2757件、各ウエィトバック後件数)

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