【2020年大学受験】安全志向で「日東駒専」の志願者数が増えたーーは本当か?

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【2020年大学受験】安全志向で「日東駒専」の志願者数が増えたーーは本当か?

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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日本大、東洋大、駒澤大、専修大を意味する「日東駒専」。そんな日東駒専へMARCHから志願者が流れているといううわさが流れています。本当でしょうか。教育ジャーナリストの中山まち子さんが解説します。

志願者数は大学によって増減がわかれた

 2月上旬から中旬にかけて、私立大学の入試はピークを迎えます。2020年は全体的に安全志向が強まったため、受験生は

「早慶上智(早稲田大、慶応大、上智大)から、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)、日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)に流れている」

といううわさは本当なのでしょうか。

 今回は日東駒専のセンター試験利用入試や、2月上旬から中旬に行われる入試の志願者数に大きな変化が見られたかどうかをを検証していきます。

志願者数減から回復した日本大

 浪人回避の動きや私立大学の定員厳格化の影響で、受験生の安全志向が年々強まっています。

 そのような傾向は有名私立大学にも大きな影響を与え、早慶上智からMARCH、MARCHから日東駒専へと志願者が流れているといううわさもあります。しかし、実際の志願者数を見ると一概に言い切れません。

 日東駒専は中堅大学として人気が高く、志願者も元々多いことで知られています。

 ここ数年の大学受験の風潮を踏まえれば、2020年の志願者数は増加していると考えるのが妥当ですが、日東駒専それぞれの志願者数を見ると、大学によって明暗がわかれていることがわかります。

 日東駒専の中でも最大規模の学生数を誇る日本大は、2018年5月のアメフト部の問題もあり、2019年の第1部(昼間部)における一般入試は志願者数が10万人を割り込むなど減少しました。しかし、一連の騒動も収まった2020年、受験生が再び日本大に戻ってきています。

 後期試験に当たる二期と短期大学や夜間部である第2部を除いた志願者数を2019年と比べると、商学部と医学部、歯学部以外の全ての学部で増加しています。

千代田区神田駿河台にある日本大理工学部(画像:(C)Google)



 特に理工学部や工学部では飛躍的に伸び、日本大への回帰が鮮明になった格好です。文系・理系の学部数が多く、総合大学として人気の高い日本大は落ち込んだ志願者数が回復し、従来通りの入試シーズンを迎えたことになります。

専修大はどうだったか

 4年間の授業料や施設費などが免除となるスカラシップ入試を実施する専修大は、センター試験利用入試が約6000人減少したものの、2019年と比べて大学独自の前期入学試験の志願者は増えました。

 結果としてセンター試験利用入試を含むと、前期入試は約2000人減りました。しかし専修大が行う入試の志願者は4000人ほど増えたことになり、受験生から支持されていることが伺えます。

千代田区神田神保町にある専修大 神田キャンパス(画像:(C)Google)



 専修大のふたつのキャンパス(千代田区神田神保町、川崎市)と、北は札幌から南は那覇まで15の地方都市で受験できる制度、スカラシップ入試という、受験生にとって魅力的な入試制度を導入することで、志願者数を伸ばしてきたと考えられます。

 日東駒専のひとつだからといってあぐらをかかず、独自の制度を織り込んだ入試を実施することで地方在住の学生に受けてもらう取り組みは他の大学も見習う点があるといえます。

志願者数が減った東洋大

 東洋大の中期と後期日程、2020年から導入された新方式を除いた志願者数を比べてみると、2019年より約2万人減少しています。

文京区白山にある東洋大学 白山キャンパス(画像:(C)Google)

 特に経営学部と法学部、2021年度よりキャンパスを都内に移転するライフデザイン学部(埼玉県朝霞市)の落ち込みが顕著です。

 学部学科を増やすなどの学校改革や箱根駅伝での活躍、著名スポーツ選手の在学などもあり、受験生から人気が高まってきた東洋大ですが、定員厳格化と相まって難化が進んだことも今回の減少へとつながったと考えられます。

地方入試の実施回数が少ない駒澤大

 一方、駒澤大も前期入試を比較すると2019年より志願者数が減少しています。特にセンター試験利用者は約1万3000人少ない8816人と伸び悩みました。

世田谷区駒沢にある駒澤大学(画像:(C)Google)

 確実に合格したい層が上位層の流れ込みを警戒し、さらに安全志向に走ったと読み取れます。

 また、駒澤大は日東駒専の中でも地方入試の実施都市や回数が少なく、大学側の戦略も志願者数の減少に影響している可能性も否定できません。

日東駒専だから増加という訳ではない

 日東駒専の中でも抜群の知名度を誇るマンモス大学の日本大でも、2020年の志願者数が増加したとはいえ、アメフト部の騒動以前の水準に戻ったに過ぎません。

 上位からスライド受験する学生と日東駒専が第1志望という学生がぶつかり合えば、どこの大学も志願者数が増加するでしょう。

終わらない受験戦争(画像:写真AC)



 しかし日東駒専であっても、現実には志願者が減少している大学や学部・学科が出てきています。

 まことしやかに「安全志向が強まっている」といううわさが広まると、その大学を狙っていた受験生がくもの子を散らすように逃げ去っていくでしょう。

 大学受験は、人生における大きな岐路です。情報に惑わされず志望校へ全力疾走することが何よりも必要なのではないでしょうか。

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