「自宅でラッキー」は大間違い 東京五輪で注目「テレワーク」に十分過ぎるほどの下準備が必要なワケ(後編)

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「自宅でラッキー」は大間違い 東京五輪で注目「テレワーク」に十分過ぎるほどの下準備が必要なワケ(後編)

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冨田格

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2020年東京五輪・パラリンピックの開催を機に注目を集めている、会社以外の場所で業務に当たる「テレワーク」。ライターの冨田格さんがお薦めするコワーキングスペースの特徴とは? 図書館やカフェの上手な活用法とは? 前編に続いて、今回は後編をお届けします。

コワーキングスペース探しの注意点

 2020年東京五輪・パラリンピックの開幕まで半年を切り、にわかに注目を集めている「テレワーク」。でも自宅にWi-Fi(ワイファイ)環境がない、ひとりでいるとついだらけてしまう……と自宅での作業に不安がある人にお薦めしたいのが、東京都内で急激に数を増やしつつある「コワーキングスペース」です。

 ひと口にコワーキングスペースと言っても、デスク・電源・Wi-Fiの「テレワーク3種の神器」がそろっただけのシンプルな店舗もあれば、シェアオフィスやミーティング用の個室が整備されている店舗、雑誌やドリンク類が充実しているカフェのような店舗など、さまざまな形態のものがあります。

パセラのコワーク東神田店2F「クロックカフェエリア」(画像:パセラのコワーク)



 自宅から行きやすい距離の中で、自分にとって1番集中できそうな場所はどこなのか、こればかりは試しに利用してみないとわからないものです。また、ドロップイン(単発利用)や月会費などの料金・営業時間、フリードリンクやレンタル品などのサービスも店舗によってさまざまです。

 まずは、自宅の近くのコワーキングスペースを検索して探すところから始めてみてはいかがでしょうか。何軒か目星をつけたら、なるべく早い週末に1時間単位のドロップインで試用してみてください。

 東京都と国がテレワークの普及推進のために設置した東京テレワーク推進センターが制作した、テレワークのためのアプリ「TOKYOテレワーク」でも、コワーキングスペースを検索することができます。このアプリはテレワーク時の勤怠の管理や、テレワークに関する情報収集もできるので、興味ある人はダウンロードしてみてください。

安くて便利なコスパ・テレワークなら図書館

 テレワークできる場所として考えられるのは、コワーキングスペースだけではありません。コスパを重視するならば、無料で利用できる公共の施設・図書館を活用するのが1番です。

 館内は本を読むためのスペースと位置付けているために、ノートパソコンを持ち込んでの作業はできない図書館もあるものの、調べていくと都心周辺部でテレワークに使える図書館もありました。

 そのなかからお薦めの3館+1館をご紹介します。

1.北区中央図書館(北区十条台)
 赤レンガ倉庫を生かした造りが印象的。館内は天井が高く、パティオ(中庭)から自然光が差し込む明るく居心地のいい空間です。

北区中央図書館の日差しが差し込むパティオ(画像:冨田格)

 パティオを囲むように配置されたカウンターが主にテレワークできるスペースになっています。ここには電源が設置されていて、館内で使えるWi-Fiのパスワードは総合カウンターでもらえます。ほかにも電源のあるデスクがあり、パティオ周囲と合わせて約35席でテレワークが可能です。

多摩地区や豊洲にもお薦めの図書館

2.多摩市立図書館(本館)(多摩市落合)
 多摩丘陵地帯にある、中学校の旧校舎をリノベーションした図書館。館内の教室1室がノートパソコン持ち込み可能な学習室となっています。

 テーブルに電源が設置されている学習室の座席数は、約45席。書架が並ぶスペースから離れた場所にあり、学習室は非常に静かで集中しやすい空間です。ただし、誰でも使えるフリーWi-Fiは用意されていないので、キャリアと契約しているWi-Fiか、もしくはスマホのテザリングを利用する必要があります。

3.豊洲図書館(江東区清澄) 
 2015年にオープンしたばかり、駅直結の江東区豊洲シビックセンター内にある新しい図書館です。

豊洲図書館の開放的なテラス(画像:冨田格)



 9階と10階に電源のあるテーブルが約40席用意されています。ほかにもテーブルやテラス席も多くあるので、充電済みのパソコン作業で使えるスペースが多いのが特長。館内では行政による「Koto City free wi-fi」が使えます。

 同じ江東区で、歴史ある建造物の深川図書館(清澄白河駅)も電源の使えるPC席が約10席用意されています。こちらもフリーWi-Fiが使えます。

 無料の図書館はコスパ的には最高ですが、夏休み期間中なので学生の利用も多く、席を確保するための争奪戦が激化することは確実です。

 そこでお薦めしたいもう1館がこちらです。

●武蔵野プレイス(武蔵野市立図書館、武蔵野市境南町)
 JR武蔵境駅前に建つ印象的な建物の武蔵野プレイスは、図書館機能もある市民センター的な位置付けの施設です。学生向けの自習室とは別に、大人向けの「ワーキングデスク」という有料のスペースがあります。

 1日を4時間で三つのコマに分けて、1コマ400円で利用できます。電源付きのPC持ち込み可能席は32席、フリーWi-Fiが使えます。使用したいコマの60分前から館内の端末で席を予約するシステムですが、現状でも週末は混雑していて満席になることも珍しくありません。

 毎年年度末に募集する年間会員(月8コマまで利用、前日までにネット予約可能)になる方が、混雑する期間に利用できる可能性が高そうです。

カフェを使うときに配慮したい点は

 なお、公共施設のフリーWi-Fiは同時に利用する人数が多いこともあり不安定になる時間帯もあります。仕事の支障になることを避けたいならば、ポケットWi-Fiやスマホでのテザリングなども検討されることをお勧めします。

 コワーキングスペースや図書館などのように腰を据えて、というのではなく、移動の合間になど1~2時間の短い時間テレワークをしたいならば、カフェやファストフードも使えます。

 実際に私がテレワークに使ったことがある店の中からチェーン店を列挙してみます。

・マクドナルド
・スターバックス
・コメダ珈琲
・上島珈琲店
・タリーズ
・ドトール
・イートインスペースのあるコンビニ、スーパー

電源コンセントを利用できるカフェのイメージ(画像:写真AC)



 Wi-Fiに加えて、電源設置のテーブルがある店舗は続々と増えています。特に新規オープンや、リニューアルオープンの店舗は、向かい合わせの人が見えないよう仕切り板を入れるなど、テレワークする人をターゲットにしているとしか思えないコーナーが作られることが多いです。

 そこまでお店側が用意してくれているのですから、使う側もコーヒー1杯で長時間居座ったりしないよう、追加注文をするなり、混んできたら待っている人に席を譲るなりするといった配慮はしたいものです。

 ほかにも短時間利用に向いているものとして、JR東日本がスタートした「STATION WORK」があります。デスクと椅子、電源、Wi-Fi、照明、空調、モニターなどテレワークのための必要最小限の機能を備えた個室型ワークスペースが、東京・新宿・池袋・立川の4駅に全20台設置されています。2020年度中に30拠点の展開を目標としているそうなので、今後ますます利用しやすくなっていくのは確実です。

 またJR東日本は、東京駅に個室型ワークスペースとは別にさまざまなタイプのデスクを用意したコワーキングスペース「STATION DESK」も2019年秋オープンさせました。

 東京メトロも2月20日(木)より同じく個室型ワークスペース「Coco Desk」を、溜池山王駅・明治神宮前駅・池袋駅・六本木一丁目駅の4駅7台でサービスを開始します。3月末までには10駅まで設置駅を拡大するとのこと。駅での短時間テレワークが可能な場所は、どんどん増えていきそうです。

カプセルホテルもコワーキングスペースに??

 東神田と東新宿で「パセラのコワーク」を展開するパセラグループは、グループのレストラン2店舗と男性専用カプセルホテル「安心お宿」5店舗を午前中から夕方の時間限定で「パセラのコワーク・サテライト」として活用しています。

 日中の短時間利用ならサテライトが便利ですし、同日に限り「パセラのコワーク」全店を利用できる「1DAYマルチ」という料金プランもあるので、用途に応じた使い分けが可能です。

 夏に向けて、テレワークをますます推奨する機運が強まっていきます。新たなコワーキングスペースの参入や、短時間利用できる店舗も増えていくでしょう。TOKYO2020大会が開幕するまで、すでに半年を切っています。生活スタイルに合わせた最善のテレワークの方法を、なるべく早めに調べて準備しておきましょう。

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