息子もパパも困ったちゃん 今でも変わらぬ親子のドタバタ劇『初天神』【連載】東京すたこら落語マップ(6)

落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことないんです。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる話を毎回やさしく解説します。


吉宗公も訪れた江戸の行楽地

 亀戸天神がある亀戸(現在の江東区・北部エリア)は、江戸名所として栄えたまちです。もともとは農村でしたが、寺院や神社の移転により門前町となり、さらに、亀戸天神社の藤、梅屋敷の梅、龍眼寺の萩など花の名所としても知られ、多くの参詣者が訪れるようになりました。

 江東区文化観光ガイドにある亀戸七福神コースでは、龍眼寺の他に勝負の神様として有名な香取神社もめぐります。香取神社は、特にスポーツの勝利にご利益があるとされ、オリンピック選手も訪れるパワースポットです。

鷽替神事と初天神でにぎわう亀戸天神社(画像:櫻庭由紀子)

●亀戸天神社
 日本三大天神、関東三大天神、江戸三大天神、東都七天神のひとつ。菅原道真公をお祭りしている天満宮です。

 天満宮の特殊神事といえば、毎年1月24日、25日の「鷽替(うそかえ)神事」。鷽が嘘(うそ)に通じることから、前年にあった災厄・凶事などをうそにして、本年は吉となることを祈念して行われるものです。

 ヒノキで作られたお守り「うそ鳥」は手作り。前年のうそ鳥を納めて新しいうそ鳥と交換することで、開運や出世、幸運を得られるとされています。さらに、2月の「梅まつり」、ゴールデンウィークの「藤まつり」、10月下旬の「菊まつり」なども見どころです。

 境内には、触ることにより病気を治し、知恵を得るといわれている「神牛坐像」も。道真公と牛の縁は深く、落語「牛ほめ」では「この牛は、『天角地眼一黒直頭耳小歯違(てんかく・ちがん・いっこく・ろくとう・にしょう・はちごう)』でございます」と道真公にちなんだ牛の褒め方が説明されています。

●船橋屋
 くず餅で有名な老舗。本店は亀戸天神社の鳥居と天神橋の中間にあり、多くの観光客でにぎやかです。

 くず餅は亀戸の名物だったそうで、清水晴風著『東京名物百人一首』1907(明治40)年8月「亀戸神社の藤と葛(くず)餅」によると、「文化2年(1805)に天神社参道にて創業した船橋屋が人気を集め、そのくず餅は亀戸餅とも呼ばれた」とあります。

 当代の柳家小三治は、枕で名古屋の名物・ういろうと比較する対象としてくず餅をあげており、現在ではすっかり東京名物となっています(小三治はその枕で、ういろうは好きではないと語っています)。

●亀戸梅屋敷
 亀戸梅屋敷は、呉服商・伊勢屋彦右衛門(いせや・ひこうえもん)の別荘「清香庵(せいきょうあん)」をいいます。この屋敷の庭の梅が大変に見事なためその名が付いたといわれます。八代将軍徳川吉宗は鷹狩りの帰りにこの地を訪れ、梅の美しさを絶賛していたといいます。

 当時の場所は亀戸3-40、50~53付近、亀戸天神の裏手。梅の時期は亀戸天神の参詣者もあり、相当なにぎわいだったのではないでしょうか。

 現在は、亀戸駅から香取神社方面へ徒歩5分ほどの場所に、複合商業施設として復活。観光案内所や物産店、江戸切子ギャラリーがあり、各種イベントのほか、五代目円楽一門会による寄席や落語会が行われています。

父と子、現在にも通じる親子像


【地図】荒川と墨田川に挟まれた「亀戸天神社」の所在地

画像ギャラリー

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