静かな高齢者の多い銭湯から、さらに人情身のあるゆったりした居酒屋へ 西早稲田【連載】新!東京湯巡り、徘徊酒(6)

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静かな高齢者の多い銭湯から、さらに人情身のあるゆったりした居酒屋へ 西早稲田【連載】新!東京湯巡り、徘徊酒(6)

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島本慶

コラムニスト、ミュージシャン

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昔ながらの銭湯でひとっ風呂浴びたら、歩いてなじみの居酒屋へ――。銭湯巡りと飲み屋歩きをこよなく愛するコラムニストの島本慶さんが、東京の魅力的な銭湯と居酒屋のハシゴ歩きへお連れします。第6回は、新宿区の西早稲田からスタートです。

湯殿はため息まじりのジッチャンばっか

 高田馬場から早稲田通りを散歩がてら歩いて、明治通りを越えてズズッと歩くと、右側に子育て地蔵尊・西早稲田源兵衛と書かれたのぼりが目に入ります。そこん所を右に曲がると、二股の道があり、その右を入ると「金泉湯」(新宿区西早稲田)っつう銭湯が。

 サクッと入ると、ちっちゃくて昔から有る銭湯ってのがよおく分かりますな。実は私、若い頃この近くに下宿していて、よく通ったんですよここ。でも今はキレイにリニューアルされて月日の流れを感じます。そう、50年前のことですから、まるでタイムマシンに乗って入りに来た気分。

 まぁそれはそれはとして、いやぁ天井は高いし、洗い場は正面のタイルがおしゃれだし、最近塗り変えたらしい壁の淡いブルーが清潔感タップシ!

 浴槽はどこもジェットで、こりゃいいやってんでサクサクとシモを洗い頭をぬらして湯船にザンブリコ。あ~温かい。ジェットも腰を刺激していい気持ち。

 それにしても4~5人いる入浴客はジッツァンぶぁっか。あっ私も含めてね。みんな独りで来てるらしく静かです。シーンとしていていい感じ。若い人って友達と来るからガヤガヤしてっけど、そういう若者たちは少ないみたい。いいねぇ。でもみんなため息をついてるのが気になります。

 それが心地よさのなせる技か。それとも景気が悪いせいか? まぁいいや。私、こういう銭湯大好き。しんみりしてるのか、のんびりしてるのか、湯につかりつつ若い頃のことを思い出します。

 そもそもこの近くに下宿したのは、新宿にあった「風月堂」というヒッピーのたまり場で出会った油絵を書く画家さんがきっかけでした。彼がアトリエにしていた下宿を、そのまま引き継いで住むことになったからです。

 あの方、今はどうされてるのか、確かカトーさんっていう人だった。生きてるかなぁ?

西早稲田の居酒屋「桃太郎」の店構え(画像:島本慶さん制作)



 というわけで、銭湯を出て何となくウロウロしてみたくなります。古本屋街だったのに、今はあまり見かけません。あぁビール飲みたいと早稲田に向かって歩いてっと、ん? 何々「桃太郎」? 良さげな居酒屋さんを見つけましたよ。ええいままよと入っちゃいます。

オヤジさんとママさん、いいコンビですなぁ!

 へーえ、わりと広いのね。おやおや忙しそうにお酒を運んでるオヤジさん、私と同じような帽子をかぶってますよ。いいキャラだなぁと思いつつ入り口手前左側のテーブルに腰を降ろします。

 チャキチャキと動くオヤジさんに生ビール(500円)を注文して、まずはグビグビ。ッカーウメェ! 生きる喜び! なんつってタバコを一服。右のカウンターには年配の常連客がいて、みんな焼酎の4合瓶を置いて飲んでます。カウンターの向こうで調理していたママさんもときどき出て来て接客したりして。

 またこのママさんがすてきなキャラで、オヤジさんとどうやら夫婦みたいでいいコンビですなぁ!

 さて私、自家製餃子(670円)ってのを頂きましょう。それと、桃太郎サラダ(680円)も。キムチは苦手だけど、常連さんたちがおいしそうに食べてるのでこの際もらいましょう。(白菜キムチ500円)

 そうか、サラダと一緒に食べれば大丈夫だな。あ~ウマイ! でまぁ生ビールをおかわりしてと、それにしてもこのあたりって、街並みやお店は変わってても雰囲気は昔のままだなぁ。おぉっ! ドカドカと年配の常連さんが入ってきちゃいました。

居酒屋「桃太郎」の人気メニュー(画像:島本慶さん制作)



 じゃあまぁ出ましょとお勘定を済ませて店を出ます。帰りは早稲田から帰ろうってんで来た道を逆に歩きます。ん? アラアラ、途中に「松の湯」ってのがあるじゃん! こっちの方が近かったか? まぁいいや。しかも何だよ、早稲田駅の方が近いし。何のこっちゃ! とはいえ久しぶりに歩いた早稲田通り。何年も来てなかったなぁ。死が近いのか?

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