ゴーン被告逃亡で想起? 61年前の杉並区「スチュワーデス事件」とは

2020年の年明けから世間を騒がせている、日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告のレバノンへの「脱出劇」。今回の事案を受けて、ノンフィクション作家の合田一道さんは、かつて東京で発生したひとつの事件を想起したと語ります。


重要参考人となった、あるベルギー人の神父

 被害者はイギリス海外航空(略称BOAC)に勤める27歳の日本人女性で、渋谷区に下宿していました。

 といっても同社の採用試験に合格し、1959(昭和34)年1月からロンドンでの講習に出掛け、同年2月27日に帰国して、初搭乗を控えていたのです。

 当初は自殺か他殺か判断できずにいたのですが、事件発生から2日後に死因は絞殺(こうさつ)と断定。捜査の結果、都内の宗教出版社に勤務するベルギー人神父(38歳)が線上に浮かび上がったのです。

 神父は被害者の女性と親しい関係にあり、事件当日のアリバイがはっきりしなかったのです。

 捜査本部は事件から2か月近くたった同年5月5日、勤務先の出版社を通じて神父に重要参考人として出頭するよう求めました。

 神父は同月11日になってようやく出頭し、事情聴取に応じました。事情聴取は翌日、翌々日、さらに20、21日と計5回にわたって続きましたが、神父は「私は神に仕える身です」と繰り返すだけで、核心に迫ることはできませんでした。

 この間に神父自身が「非難を恨まず」とする英文の感想文を毎日新聞社に寄せ、ローマ法王の使節がカトリック系新聞を通じて、神父の潔白を声明するなど波紋を呼びました。

神父の感想文を掲載した1959年の毎日新聞(画像:合田一道)

 捜査本部は6回目の事情聴取をするとして、6月13日に任意出頭を求めましたが、神父は「体調が悪い」と言い、11日夜、羽田発のフランス機で祖国ベルギーへ向け飛び立ったのです。まさに脱出でした。

 ところが偶然、神父の乗った飛行機に読売新聞のロンドン特派員として赴任する記者が同乗していたのです。記者は30時間に及ぶ長い機中で神父と一問一答をし、その記事が 13日夕刊に掲載されたのです。このなかで神父はこう述べました。

「帰国は私の意思というより、所属しているサレジオ会の命令です。私の体のこともあるが、老衰した両親の見舞いを兼ねたものです。(日本の警察から)要請があったら、いつ、どこにいても受けるつもりです」

「逃げ得」に対して抱く危機感


【当時の現場】「スチュワーデス事件」とは? 東京・杉並の現場写真を見る

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