名シリーズ『男はつらいよ』を思わせる兄妹の人情劇『放蕩一代息子』【連載】東京すたこら落語マップ(4)

落語と聞くと、なんとなく敷居が高いイメージがありませんか? いやいや、そんなことないんです。落語は笑えて、泣けて、感動できる庶民の文化。落語・伝統話芸ライターの櫻庭由紀子さんが江戸にまつわる話を毎回やさしく解説します。


渥美・倍賞演じる、寅さんアナザーストーリー

 今回は、そんな山田洋次監督が書いたドラマを中心に、『男はつらいよ』の世界を垣間見る舞台を歩いてみましょう。

※ ※ ※

 江戸・日本橋付近の両替商、近江屋。ここの若旦那・徳三郎(渥美清)はとんだ放蕩(ほうとう)息子。お店の旦那であり親である清兵衛の気も知らずに遊んでばかり。今日も集金した金を吉原で使い込んできたことを、悪びれもせず報告している。清兵衛は徳三郎に蔵住まいを言い渡すが、当の本人はどこ吹く風。妹のおせつ(倍賞千恵子)が心配して「おうちはどうするの」と見にきても、からかってけむに巻いてしまう。

 そうこうしているうちにときがたち、38歳になった徳三郎。ついに清兵衛は放蕩ざんまいの徳三郎を勘当する。徳三郎はあちこちで奉公人するも転々とし、番頭が探し歩くもいよいよ消息不明。病気がちだった清兵衛が寝たきりとなってしまった。

 そんなとき、おせつが「極楽橋」を通りかかると、橋の下で物乞い同然となってほかの物乞いの仲間と談笑している姿を見つける。気楽に楽しそうに生きている兄と話しながら、おせつは涙を流し金を渡して走り去ってしまう。

 おせつから徳三郎の消息を聞かされた清兵衛は、徳三郎に施しをしてくれと番頭に言いつける。番頭が行ってみると、徳三郎は面倒を見ている知的障害のある女物乞い・おしんにも花ござをあつらえてくれという。涙ながらに言う通りにする番頭。

 徳三郎は、新しい花ござをかぶったおしんに「姿がいいね、とってもきれいだよ」と言い、おしんは意味がわかっているのか幸せそうににっこりと笑い返す。夕日が暖かくふたりを包んでいた。

「くるまや」のモデルとなった高木屋老舗がある帝釈天(たいしゃくてん)参道(画像:櫻庭由紀子)

 清兵衛の余命がいくばくとなり、番頭は徳三郎を探しに行った。おせつが徳三郎を心配しながらせきこむ清兵衛を励ましている。番頭が徳三郎の仲間に行方を聞くと、おしんが死んでしまってから姿をみていないという。

 清兵衛が危篤となった日、親の魂に引き寄せられたように徳三郎が家の勝手口へと戻ってきた。ふらふらと倒れ込んで「腹が減って死にそうだ」という徳三郎に、おせつが握り飯をやると「うまい、うまいよ!」と食らいつく。つかの間、徳三郎は目を白黒させばったりと倒れた。「死んでる…」おせつはその場に座り込んだ。その瞬間、清兵衛も息絶えた。

 そうして、とある春の日。徳三郎と清兵衛の墓の前でおせつがつぶやく。「おとっつぁんの一生と兄ちゃんの一生、どちらが幸せだったのかしら」

 もつれ合う線香の煙が青空に上って行く、梅香漂う早春の昼下がり。

※ ※ ※

 この「放蕩(ほうとう)一代息子」は1973(昭和48)年、TBSテレビ系「東芝日曜劇場」で放送されたドラマです。

 放蕩息子・徳三郎を渥美清、兄思いでしっかり者の妹・おせつを倍賞千恵子が演じるという、『男はつらいよ』をほうふつとさせる設定となっています。

駅前から続く、作中そのままの風景


【地図】寅さん心のふるさと「くるまや」のモデルとなった草団子店

画像ギャラリー

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