今年で終了 都内9万人が昨年受験「センター試験」を振り返る

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今年で終了 都内9万人が昨年受験「センター試験」を振り返る

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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2020年でその役目を終える大学入試センター試験について、教育ジャーナリストの中山まち子さんがその変遷について解説します。

平成を駆け抜けたセンター試験

 2020年1月18日(土)と19日(日)の実施を最後に、大学入試センター試験は30年の歴史に幕を閉じます。毎年約50万人を超す受験生が志願し、臨んできたセンター試験は大学受験という学生の人生を左右する重大な試験です。2019年の東京都での受験を希望した志願者数は8万9千人を超え、全国最多となりました。

 今回は30年に及ぶ大学入試センター試験の歴史を振り返り、日本の大学受験がどのような変化を辿ってきたのか考えていきます。

センター試験のイメージ(画像:写真AC)



 センター試験の前に行われていた共通一次試験は、1979(昭和54)年の1月からスタートしました。マークシート形式の一次試験や高校での学習内容をベースにして出題される形式を確立し、その流れは現在も受け継がれています。しかし、この入試制度の対象は国公立大学と産業医科大学(北九州市)である上、出願できるのは1校1学科のみという問題点もありました。

 共通一次試験の晩年では、最大3校の受験も可能になるなど受験生を考慮した変更もありましたが、産業医科大を除けば国公立大のみに絞られた入試制度ということもあり、大学試験を複数回受けるなど受験生の負担も馬鹿にできなくなりました。そのため、私立大学も含めてより多くの学生が活用できる試験をと、1990(平成2)年1月からセンター試験が始まったのです。

 厚生労働省の人口動態調査を見ると、第1回目のセンター試験に臨んだ高校3年生の大半が生まれた1972(昭和47)年の出生数は200万人を超えていました。それに比べて、現在の高校3年生の大半が生まれた2001年の出生数は約117万人。1回目の受験生と比べて90万人近く減っていますが、志願者数の推移は落ち込んでいません。

私大のセンター試験利用は拡大の一途

 第1回目のセンター試験の志願者は約43万人だったものの、4回目となる1993(平成5)年1月の試験への志願者は50万人を超え、それ以降50万人を下回る年はありませんでした。60万人以上の志願者を記録する年もあり、大学進学を目指す学生にとって、センター試験は欠かすことができなくなったのです。大学進学率の上昇を伴い、少子化が進む中でも常に50万人の志願者を維持したことは特筆すべきことといえます。

 センター試験は国公立大学だけでなく、私立大学の入試にも利用可能という大義名分でスタートしましたが、第1回目の利用を表明した私立大学は慶応大学を含む16大学にとどまりました。しかし、その後は1999(平成11)年に200校の壁を突破するなど順調に参加する私立大学は増え続け、2020年1月の試験ではセンター試験利用入試を実施する私立大学は533大学になっています。

センター試験のイメージ(画像:写真AC)



 全国規模で一斉に行われるセンター試験は、国公立大学と私立大学の垣根を超え、学生と大学側の負担を減らすなどのメリットがありました。地方在住の優等生が私立大学の入試のために首都圏などに出向く回数は減り、都会と地方の入試機会の是正に一役買ったのは間違いありません。

時代に沿う対応を行ってきたセンター試験

 机の上だけの英語勉強ではなく、生きた英語を身に着けさせるべく、2006(平成18)年1月実施のセンター試験から英語でのリスニングが導入されました。ICプレイヤーの不具合などがトップニュースで報じられるなど、毎年高い関心が寄せられています。

センター試験のイメージ(画像:写真AC)



 時代の流れに柔軟に対応し、受験生の基礎学力を測ることのできる大規模な試験はほかに見当たらず、センター試験がこれまで果たしてきた役割の大きさを否定する人はいないはずです。

 2021年から新たに始まる大学入試共通テストは民間英語試験や記述式問題導入が見送られたこともあり、受験生を取り巻く状況の変化は明確に見えずじまいです。センター試験同様、問題の漏洩といった重大過失が起きず、受験生が安心して臨める試験になればと思わずにはいられません。

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