「スター・ウォーズ」の先見性に、ゲイの私があらためて気づいたこと

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「スター・ウォーズ」の先見性に、ゲイの私があらためて気づいたこと

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冨田格

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この年末年始、最も注目を集めている映画作品といえば『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』もそのひとつ。単なるSF作品に留まらず人種や性の多様性を描いている点も魅力だと、ゲイ当事者でライターの冨田格さんは語ります。

42年前に受けた衝撃は、今でも忘れない。

 2019年12月20日(金)、いよいよ公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を初日に鑑賞してきました。

 55歳になった私にとって「スター・ウォーズ」とのファーストコンタクトは1977(昭和52)年、中学1年生の梅雨時でした。毎月読んでいた映画雑誌「月刊ロードショー」に、ヒト型のロボット(C-3PO)と、ずんぐりしたロボット(R2-D2)が砂漠に立っている1枚のモノクロ写真が妙に気になったのです。映画のタイトルは「惑星大戦争(仮)」と表記されていました。

 当初、「スター・ウォーズ」がヒットするとは期待されていなかったため、日本公開は決まっていなかったのです。ところがアメリカで予想を超える大ヒット。当時は今と違ってヒットを見込める大作が公開されるのは、正月か夏休み時期と決まっていました。全米でのヒットを受けて慌てて劇場を押さえようにも、次の正月映画はすでにフィックスされている状態。結局、日本公開は1年後の1978(昭和53)年まで待たなければなりませんでした。

スター・ウォーズ上映館のビルボード、新宿バルト9(画像:冨田格)



 公開を待つ1年間も、雑誌を読み、サウンドトラックを聴き、映画館でかかる予告編に興奮して、ルーク・スカイウォーカーは中坊だった私のヒーローになっていきました。

 公開当初から、生みの親であるジョージ・ルーカス監督は9部作のサーガ(年代記)と構想していると言われていました。第1作であるエピソード「新たなる希望」を見終わって興奮しまくっていた頭で、9部作を見終わるまでは死ねない、と誓ったものでした。

「スター・ウォーズ」もそれから紆余(うよ)曲折があり、42年間かけてスカイウォーカー家の物語が完結することになったのです。「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」を見終わった時に抱いたのは感想ではなく、感慨でした。「よくぞ生きて最後まで見られた」という気持ちが強かったのです。

 そして、これだけ世界中にたくさんのファンがいて、それぞれが期待するものが大き過ぎることを分かった上で、完結編の監督を引き受けたJ.J.エイブラムスの男気に感服しました。ファンの思いが強ければ強いほど、称賛よりも辛辣(しんらつ)な言葉をぶつけられるのは仕方のないこと。しかもライアン・ジョンソン監督による前作エピソード8「最後のジェダイ」が、いろいろな意味で世界観を破壊しまくった後を引き継いだのです。

 どう考えても圧倒的に不利な状況のなか、広げまくった上に世界観を破壊された大風呂敷をきちんと畳んでみせたのですから、J.J.エイブラムズ監督には感服するしかありません。気になる点は多々あれど、今は監督の偉業をたたえることが先かと、個人的には思っている次第です。

 公開初日から3日間の興行収入は、前作より微減と報じられていますが、都内のシネコンを見ても正月までは圧倒的な数のスクリーンで上映されることが決まっています。Dolby-ATMOS、IMAXレーザー、IMAX3D、MX4DX・3D、字幕2D、吹き替え、極音爆音(立川シネマシティ)、ULTIMA(イオンシネマ)など、劇場・シネコンによってさまざまな形態で上映されています。公開から時間がたつほどに上映形態の選択肢の幅は狭まっていきます。せっかくのイベントムービーですから、ご覧になりたいと考えている人は、なるべく早く見に行くことをお勧めします。

都内ではイベントや関連ストアが続々開催中

「スター・ウォーズ」の世界を楽しめるのは映画館だけではありません。ポップアップ・ストアや展覧会などさまざまなイベントが都内では開催されています。

 関連グッズを購入したい方はポップアップ・ストアに注目です。「新宿マルイ アネックス」(~2020年1月19日)、「ラフォーレ原宿」(~1月31日)、「エンタバアキバbySHINSEIDO」(~1月13日)、池袋「サンシャインシティ アルパ」(~2月2日)で期間限定で営業されています。

 スター・ウォーズの世界観をファッションに取り込みたい方は、メンズブランド「TAKEO KIKUCHI (タケオキクチ)」渋谷明治通り本店に注目です。「タケオキクチ」でしか買えない限定グッズが並ぶ、スター・ウォーズを全身で楽しむことができるポップアップストアを開催中です(~1月13日)。

 汐留の日本テレビ2階の日テレホールでは、2019年12月29日(日)まで本作の公開記念「最後のスター・ウォーズ展」が開催されています。「スカイウォーカーの夜明け」の撮影道具や、人気漫画家・寺田克也氏描き下ろしのスカイウォーカー・サーガ・アートなど、ほかでは見られない展示を入場無料で楽しめます。

ポップアップ・ストア開催中の新宿マルイ アネックス(画像:冨田格)



 さらに1月13日まで品川区東品川・天王洲の寺田倉庫で「スター・ウォーズ アイデンティティーズ:ザ・エキシビション」が開催されています。これは体験型の展覧会で、来場者がスター・ウォーズの世界を追体験しながら10のテーマでそれぞれの選択を行い、アイデンティティーをひもといていく、という興味深い内容です。

 館内には、スター・ウォーズのエピソード1~6までを中心に、キャラクターや宇宙船、衣装やラフデッサンなど、おなじみのものから見たことのないレアなものまで満載。スター・ウォーズが好きなら、体験して損はない展覧会です。

 その展示の中に、エピソード4に登場するカンティーナの酒場にたむろするさまざまな造形の宇宙人のミニチュアを展示して「スター・ウォーズ世界の多様性」を解説するコーナーがありました。それを見ていると「スター・ウォーズの多様性」について思いが巡りっていったのです。

 最初に公開されたエピソード4では人間のキャラは白人に限定されていましたが、続くエピソード5で非白人キャラのランド・カルリジアンが登場。2016年公開の外伝「ローグワン/スター・ウォーズ・ストーリー」ではアジア系キャストが登場するなど、人種の多様性は達成されてきました。体の機能に障がいを持つキャラクターは当初から何人も登場しています。

 多様性といえば、ゲイである私としては「性的マイノリティーのキャラクターもいてほしいな」と以前から思っていました。最新作「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」では女性同士でキスを交わす場面があり、初めてレズビアンのキャラクターが登場したと一部で話題になっています。

 しかし、よくよく考えてみればもっと以前に、主要なキャラの中で「ゲイ」キャラだとしか思えない人が存在していたことに思いが至りました。

SWには「ゲイ」キャラがすでに存在していた?

ここから先は、邪(よこしま)なゲイ目線でスター・ウォーズを分析していきます。純粋なファンの人は少々ムカつくかもしれません。またエピソード1~3の一部ネタバレもしています。あらかじめご了承いただいた上で読み進めてください。

※ ※ ※

 さて、私が「ゲイ」キャラクターだと思い至った人、それは、オビワン・ケノービです。

 最初に作られたエピソード4「新たなる希望」(公開当時のタイトル:スター・ウォーズ)を見たときは田舎の中学生だったので、さすがにそんなことは想像もしていませんでした。

 それから長い時を経て2002(平成14)年、37歳になった年にエピソード2「クローンの攻撃」が公開されました。前作から一気に成長したアナキン・スカイウォーカーに驚くとともに、ちょっとした違和感を覚えたのです。冒頭でアミダラ女王ことパドメと再会して以降、アナキンのオビワン・ケノービに対するぶしつけさが、とても師匠に対するものとは思えなかったのです。さらに、そんなアナキンに対して叱りつけるでもないオビワンの煮え切らない態度が違和感を強調します。

 物語は進み、きれいなお姉さんパドメのセクシードレス(背中全開!)にクラクラきたアナキンが欲情を抑えられずキスをしてしまいます。それ自体は物語の展開的にスムーズなのですが、田舎の中学生ではなく都会暮らしが長くなったスレたゲイの中年になった僕は、描かれていない裏側をついつい邪推してしまうのでした。

ポップアップストア開催中のラフォーレ原宿(画像:冨田格)

 どう邪推したかというと。

「女王から元老院議員として社会経験も豊富なお姉さんパドメからすれば、もともと辺境の出身な上ジェダイの修行をさらに辺境で続けてきたアナキンを誘惑するのなんてお手のものだよな。あれ、待てよ。成長したアナキンは男性フェロモン丸出しの野生的な雰囲気。思春期の性的目覚めはなかったのか? 辺境での修行で一緒にいる人間はオビワンだけ。これはもしや、日本で言う『衆道(しゅどう)』のような契りが結ばれていたのではなかろうか? とすると、オビワンとその師匠クワイ・ガンジンにも同じような契りがあったのかもしれない……」

 そこでクワイ・ガンジンが登場するエピソード1を、邪な目で見直したのです。

 クワイ・ガンジンが辺境の星タトゥーインで、天賦の才能を持ったアナキン少年と出会いほれ込んで弟子にしようとするのですが、オビワンはアナキンに対して素っ気ない態度。それどころかパドメに対してもえらく素っ気ない態度です。誰に対しても素っ気ない人なのかと思いきや、強敵のダースモールの手によってクワイ・ガンジンが斬り殺された時は一変します。倒れたクワイ・ガンジンを抱きしめるオビワンからも、涙を流すオビワンの頬をそっとなでるクワイ・ガンジンの態度からも感じられるのは「愛」です。

 ジェダイの師弟関係は、親子や兄弟のように深くなるもの。純粋な目で見れば、この別離の場面は師弟の別離の悲しみしか感じられないのですが、邪な目で見るとそうではありません。親子というより、もはや恋人か夫婦の別離のようにしか思えなくて仕方ないのです。

 邪な目線での邪な分析はさらに進みます。

リーアム・ニーソン演じるクワイ・ガンジンも、成長したアナキンも野性的で男性フェロモンが濃厚そうで押しの強いタイプ。対するユアン・マクレガー演じるオビワンは穏やかで押しが強くないタイプ。もしかして、いや、確実に、オビワンはBL用語でいうところの「受」であり、クワイ・ガンジンもアナキンも「攻」で、【クワイ・ガンジン×オビワン】【アナキン×オビワン】という関係性なのでしょう。それを前提に見れば、エピソード2の冒頭からオビワンがアナキンに対して妙に気弱な態度であるのも、合点が行きました。

 そんな邪目線でエピソード2「クローンの攻撃」とエピソード3「シスの復讐」を見直すと、気になるせりふが頻出します。

例えば、

アナキン「みんなオビワンが悪い、僕を離さない。やいているんだ!」

アナキン「彼は師であり、友であり、父でもある」

アナキン「生きるも死ぬも一緒です」

アナキン「あんたが憎い」

オビワン「弟だと思っていた、愛していた」

 愛していたアナキンを、シス(ジェダイが戦う悪の勢力)とパドメに二重に奪われたオビワンの恨みと怒りが「シスの復讐」のラストで爆発するのです。アナキンとの壮絶な一騎打ちはともかく、妊娠して不安の渦中にいるパドメに対するオビワンのあまりにひどい仕打ちの理由も、くすぶり続けていた嫉妬心が爆発した故のことと思えば、納得できなくもないかと思いました。

幅広い多様性を扱ったSWという作品の厚み

 そんな邪な目線で見る楽しみ方もできるのは、「スター・ウォーズ」の世界があまりにも壮大であり、かつ完璧ではないところだと思います。細かいほころびを探そうと思えば、いくらでも数えられます。しかし、そんなほころびも含めて「スター・ウォーズ」は世界中の多くの人に愛されています。それだけの魅力が詰まっているからこそ、私も42年間にわたり完結編を楽しみに待つことができたのです。

 もし「スター・ウォーズ」に触れたことがない人でも、長い年末年始を利用してエピソード1~8までを配信で一気見して、映画館で最新作「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」をご覧になってはいかがでしょうか? スピンオフのアニメや新作シリーズもディズニー・デラックスで配信されています。「スター・ウォーズ」沼にはまる年末年始も、けっこう楽しいものになりそうですよ。

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