「外国人労働者 = コンビニ店員」という考えは、もはや時代遅れだ

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「外国人労働者 = コンビニ店員」という考えは、もはや時代遅れだ

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室橋裕和

アジア専門ライター

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2019年1月時点で55万人を超えた東京都の外国人。これから増え続ける彼らとのコミュニケーションを避けることは今後できません。いったいどのようにしたらよいのでしょうか。アジア専門ライターの室橋裕和さんが解説します。

地域の人々と仲良くなりたいのはみな同じ

 東京都総務局によると、東京都に暮らす外国人は55万人を超えました(2019年1月1日現在)。同時期の統計で日本全国には273万人の外国人が在留しているので、このうち20%が東京に集中してることになります。

 その理由は、企業が抜きんでて多いことによる仕事の多様さと待遇の良さ、外国人を受け入れている専門学校や日本語学校、大学といった教育機関の充実度でしょう。日本人とあまり変わらない理由で、外国人も都内に集まってくるのです。

コンビニで働く外国人のイメージ(画像:写真AC)



 いまや隣人といってもいいほどに、東京人の生活の風景に溶け込んでいる外国人ですが、お互いにあまり接点がないのもまた事実。「外国人といえば、コンビニや居酒屋の店員」といったイメージしか持てない日本人もたくさんいることと思います。

 しかし外国人は、日本人ともっと親しくなりたい、友人を作りたい、日本の文化を知りたいと考えています。来日の理由は留学や出稼ぎ、結婚などさまざまですが、縁あってやってきた国を知りたい、地域の人々と仲良くなりたいと思うのは人間みな同じです。

 そんな外国人の増加に伴って、交流の場をつくる動きが広がっています。

自治体でも民間でも、交流の輪は広がっている

 新宿区や江戸川区、豊島区、足立区、大田区といった、外国人の人口が3万人を超える自治体であれば、区役所や地域センターに行ってみましょう。在住外国人と交流するための催しが開かれていたり、チラシが置かれています。もちろん各自治体のウェブサイトでもチェックできます。

自治体の窓口でも交流イベントの情報が手に入る(画像:室橋裕和)



 その内容は多岐にわたりますが、目立つのは日本語の学習支援でしょうか。まだ日本語が不慣れな外国人に、ボランティアの日本人が雑談を楽しみながら言葉を教えるというもの。専門的な教育の知識はいらず、誰でも参加できるクラスもたくさんあります。授業というより、雑談を通じて「会話に慣れ、日本人に慣れてもらう」ことが目的なのです。

 まったく日本語が話せないという外国人は少なく、学校などである程度の基礎知識は学んでいるので、意思の疎通にも問題はないはず。こうした場が友達作りに役立っているのです。

 参加者を見ていると、外国人は20代の若者ばかりですが、日本人は大半が年配の方。リタイアして時間が取れるということが大きいのでしょうが、もっと若い人に来てもらいたい、興味を持ってほしいと思うのです。

都内では毎日のように国際交流の催しが

 新宿区などでは、図書館も国際交流の場となっています。

 例えば外国人人口が日本でもとりわけ多い大久保の図書館では、外国ルーツの子供たちを対象に、多言語による絵本の読み聞かせの会や、やさしい日本語の本を読んでみる取り組みなどが開かれています。日本に長年住んでいて、会話には不自由ないけれど、読み書きをちゃんと勉強し直したいという大人がやってきたりもするそうです。

新宿区では多言語の広報誌が発行されていて、外国人の暮らしや交流に関するさまざまな情報が満載(画像:室橋裕和)

 そして、自治体に頼らず草の根で交流を広げようとする人々もたくさんいます。インターネットを使って、「自分の住んでいる街の名前 + 外国人 + 交流」といった感じで検索すれば、いろいろな集まりが見つかるでしょう。

 お互いに料理や文化を教えあうもの、多国籍飲み会、合コン……Facebookでも見つかるし、とくにローカルコミュニティ交流プラットフォームのMeetupでは、都内各地で毎日のようになにか国際交流関係の催しが開かれています。

都内にいくつもある外国人タウンに出かけてみる

 都内にはいまや、外国人コミュニティがたくさん形成されています。ミャンマー人の多い高田馬場、インド人IT技術者が住む西葛西、いまや多国籍混在タウンとなった新大久保、それに板橋、十条、小岩といった街も、アジア系の人々が混じりあうようになってきました。

 そこには、外国人が暮らす機能が満ちています。レストランに始まり、エスニックな食材やスパイスやハーブや、現地の日用品に雑貨などが所狭しと並ぶ小さなスーパーマーケット、スマホなどの販売店、外国人向け不動産屋、送金屋……まるで異国にいるかのようです。

外国人街の食堂はちょっと入りづらい店もあるかもしれないけれど、きっと歓迎してくれる(画像:室橋裕和)



 日本にいながらにして海外旅行気分を体感できるのですが、どの店もたたずまいは愛想やおしゃれさもなく、よく言えば「質実剛健」という感じでちょっと入りづらいかもしれません。このあたりも異国っぽいのですが、思い切って踏み込んでみれば、きっと誰もが歓迎してくれるでしょう。

 日本人がほとんど来ないような店でも、メニューや食材について親切に解説してくれたり、母国について教えてくれたりするはず。こうした店はなんだか、日本の懐かしい商店街のような匂いと、距離の近さが感じられます。

 そしてまた、情報の宝庫でもあります。それぞれの民族のお祭りだって日本で開かれているのですが、その開催日時だとか、パーティーについてのチラシなどが置かれていることがあるのです。地震や水害の被災地で行う炊き出しについての案内を見たこともありました。バンドを組んでいる外国人もいて、ライブの告知が貼られていたりもします。

 外国人コミュニティでは、そんな生活の有り様に触れることができるのです。

まずは会って話すこと

 外国人の急増は、文化や価値観の多様性をもたらしますが、いいことばかりでないのは昨今の報道の通り。外国人と日本人との間でたくさんの軋轢を生んでいます。トラブルも多発しています。

 しかし私たちは、その外国人の手を借りないと、もう社会を回せなくなっているのです。圧倒的に不足している日本の労働力をなんとか埋めているのは、彼ら外国人です。

外国食材を扱う店はコミュニティの中心のひとつになっている(画像:室橋裕和)



 で、あれば、お互いに歩みよるべきでしょう。交流の場をつくっている人々は、日本人も外国人も、誰もが口をそろえて言います。

「まずは知ることです。接してみれば、民族や肌の色も関係なく、同じ生活者、同じ都民だということがよくわかるはず。交流とか共生の前に、まず会って話してみる。そんな機会は、いまの東京にたくさんあります」

 せっかく異文化をバックボーンに持つ人たちが東京にはたくさんいるのです。彼らの食事や音楽を楽しみ、考えを知り、人となりを感じることは、きっと自分自身にもプラスになるはずです。それが偏見や差別から、自らを解放する方法でもあると思うのです。

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