なんと格差4倍 一般家庭と「年収1500万超」の間に立ちはだかる、教育費という名の「越えられない壁」

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なんと格差4倍 一般家庭と「年収1500万超」の間に立ちはだかる、教育費という名の「越えられない壁」

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中山まち子

教育ジャーナリスト

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皆さんは「年収1500万以上の世帯」が子どもにかける教育費をご存知ですか? 教育ジャーナリストの中山まち子さんが彼らの教育費の変動と全国平均値を比較、その背景を解説します。

関東大都市圏・年収1500万以上の教育費は全国平均の2倍以上

 家庭の年収によって子どもの教育費に大きく差が出る、高所得者層ほど教育にお金をかける――という話をテレビやインターネットで目にする人は多いでしょう。一般的にもそのようなイメージがあるのではないでしょうか。

 総務省が毎月行っている家計調査では、地域ごとの年収別データを公表しています。今回は、「年収1500万以上の世帯」の教育費の変動や、他の世帯と異なる点をお伝えします。

多額の教育費を掛ける関東大都市圏の高所得者層のイメージ(画像:写真AC)



 前述の家計調査における教育費とは、授業料等、教科書や学習参考教材、塾などの補習教育の費用を指しています。今回対象とするデータは、世帯主ふたり以上の勤労世帯です。総務省が使用している関東大都市圏とは、

・東京23区
・横浜市
・川崎市
・相模原市
・千葉市
・さいたま市

の一帯で、一般的に「首都圏」と呼ばれている地域です。

 関東大都市圏における教育費の平均値は統計のある2000(平成12)年以降、常に全国平均より少なく推移しています。しかし同圏の「年収1500万以上の世帯」に限定してみると、教育費は毎年全国平均より2倍以上高く推移し、2017年度では全国平均の毎月1万9080円に対し、7万1458円(3.8倍)となっていることがわかります。

 これは全国の中でも群を抜いて教育費を支出している「東京23区の平均値」よりも高い金額なのです。

教育費の額は高所得帯でも景気や増税に左右されやすい

 しかし1500万以上の年収があっても、経済情勢によって教育費の額は大きく変動しています。統計のある2000年からのデータをみると、教育費は年によって月額1万円以上の増減が起きています。一例を出すと、ITバブル崩壊が起こった2001(平成13)年の翌年となる2002年はm前年比で約8000円落ち込んでいます。その後上昇に転じ、2008(平成20)年は6万円台に到達しました。

 しかし2009年には1万3000円近く減少しました。増税が行われた2014年の翌年も同様の現象は起き、2015年は前年比約2万円減で2000年以降最小の3万円台を記録。2017年には一転、7万円台にまで急激に上昇しています。

多額の教育費を掛ける関東大都市圏の高所得者層のイメージ(画像:写真AC)



 このように、不景気や消費税増税が行われた翌年に影響を受けて一度は落ち込むものの、その後上昇に転じるパターンも共通しています。年収1500万以上の勤労世帯の教育費は景気悪化に影響を受けて大きく左右されるも、下がり続けることはありません。景気が落ち着くと、一気に盛り返すなど消費行動が一貫しています。その振り幅は全国平均のような「微増微減」とは異なっているといえます。

高所得者層の教育費は高水準を維持するのか

 関東大都市圏の高所得者層の教育費に対する考えは、うかがい知れないほどの「別次元なもの」といってよいでしょう。前述のように景気に左右されるものの、余裕があれば惜しみなく出すという考えが根底にあるのです。中学受験者数もリーマンショック後に減少し、教育費の底と同じ2015年に最小を記録。以降は再び増加しています。

多額の教育費を掛ける関東大都市圏の高所得者層のイメージ(画像:写真AC)

 有名私立大学の定員厳格化や文部科学省が推し進める教育改革、そして新たに始まる「大学入試制度に対する不安」という要素が絡み、首都圏の中学受験は加熱しています。現在の経済状況が大きく変わらない限り、高所得世帯が子どもの教育への投資を減らそうすることはないでしょう。

 富める者は惜しみなく出し、そのほかは家計をやりくりして捻出しています。このような現実は無情にも続き、格差が縮まるのは夢物語なのかもしれません。

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